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第六話~不安定な旅人1~

 リーン、リーンと言う虫の声で目が覚めた。あたりは完全に闇に包まれている。時間にして、深夜三時ぐらいだろうか。

 私は、凝った肩をくるくると回したあと、背筋をグッと伸ばす。


 私は疲れていたみたいだ。どうやら床で寝てしまったらしい。はは、私としたことが、やってしまったぜ!

 ってあれ? なんか違う。すごく違う。

 ……私、自殺しなかったっけ?

 あっれ~、なんで生きているんだろう。不思議だな~。はははは。

 って、現実逃避している場合じゃなかった。

 私は、すぐに自分のステータスを鑑定スキルで確認する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【西条小雪】


種族:人間という名の何か

性別:女


体力:すごぉい、タフだね

魔力:ひゃん、溢れちゃう

攻撃力:そ、それは、らっめぇぇぇぇ

防御力:すっごぉい、カッチカチだね

魔攻力:あうぅ、ひゃぁん

魔防力:うう、なんて硬さなの

素早さ:ひゃぁぁ、早い、早いよぉぉ

精神:表示できません(酷すぎて)

魅力:悪鬼

運:なにそれおいしいの?


【魔法】

『転移』


【固有魔法】

『世界創造』

『魔法創造』

『生物創造』

『拷問器具錬成』


【固有スキル】

『鑑定』

『神の目』

『神喰』

『魔眼』

『極』

『救済された心』

『ゲス召喚』

『滅び』

『救い』


【状態】

『時の牢獄』

『壊れた心』


【称号】

『勇者を捨てた者』

『魔王』

『神喰』

『滅ぼす者』

『救う者』

『天秤に判定者』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ちょぉっと待てっ! なんでこんなに、いかがわしい感じなのよっ! 何、種族が人間という名の何かって、ばっかじゃないのっ!

 もう何これ、ステータスまでぶっ壊れた……っ!」


 久しく見ていなかったステータスを確認したら、いろんなものがぶっ壊れ過ぎて、つい叫んでしまった。今がどんな時間なのかも忘れて……。


「うるせぇぞっ! 何時だと思ってやがるっ!」


「ひぃぃ、すいませーん」


 ドンドンっと壁を叩かれて、隣の部屋に泊まっている人に怒鳴られてしまた。

 でも、このステータスを見たらしょうがないよね。

 何、魔力で溢れちゃうとか、ふざけてんの。仕事してよ、世界樹さん。


 もう、私のステータスがどんだけのものなのか分からない。どうしよう。でも、カッチカチだったり、らっめぇぇぇぇぇ、なんて書かれているんだから、きっと高いんだろう。うう、自分で言っていて恥ずかしくなってくるのはなぜ?


 だけど、精神と運のところだけは、最悪っていうのはわかる。

 精神なんて、表示できませんだよ。しかも酷すぎて。

 ここが低いとかなり不安だな。

 精神攻撃系の技の抵抗力が全くないに等しいからね。やられたら、すぐに壊れちゃうかも知れない。やだ怖い。


 魔法とかスキルとか、なんかいろいろ変化しているように見えるけど、今は気にしないでおこう。それよりも気になるのは、【状態】と【称号】かな。

 『時の牢獄』は健在。つまり、私の役割は勇者であることではなかったんだ。


 だとすると、私はまだ死ねないということ。

 はぁ、生きるのが辛い若者にとって、この仕打ちはないだろう。ちくせう。世界はなんて理不尽なんだっ!


 だけどこの『壊れた心』ってなんだろう。

 鑑定しておこうかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『壊れた心』

 時の牢獄の影響により狂った化物になった状態。精神耐性がなくなり、理性を失う。ただ苦痛を与えるだけの悪魔のような状態に成る(固有スキル『救済された心』の影響かにより精神耐性以外の効力は無効中)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 これあれだ。私の中にいる化物の原因みたいなものだ。そりゃ仕方ないか。余りにも長い時間生き過ぎたわけだし、その間やったことと言えば、勇者として敵を殺したり仲間が殺されたり……。

 そりゃ心も壊れるわな。

 だけど、それが固有スキル『救済された心』によって無効中っと。もしかしたら、こいつを得られたおかげで、この世界で正気に戻れたのかも知れない。だけどなんでこんなスキルを手に入れられたんだろう。不思議だ。

 『救済された心』については、後で考えよう。それよりもこの称号。

 『天秤の判定者』って、私の役割にかなり関係ありそうだよね。絶対にそうだよね。

 こいつも鑑定しておこうかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『天秤の判定者』

 $#2kwくぁvぢえw3アダあfんlじゃあdfだljvかじ。

 dsかj($”#kdかう”kjだええ(”えjld。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 …………何これ。完全に文字化けしているんだけど。説明が全くわからない。鑑定スキルをもってしても理解できないなんて。

 これはいったい何……。

 言葉の意味通りに考えれば、天秤の判定を下す者って感じなのかな。

 え、もしかして、これが本当の私の役割? 意味不明。こんなの、どうすることもできないじゃない。

 はぁ、こりゃ考えるだけ無駄だね。


 私はステータスを全て閉じて、ベッドの上にダイブした。ふわっとしたベッドに私の体が沈んでいく。なんて心地いい……。


「だからうっせぇって言ってんだろ!」


「ひゃぃぃぃぃ、すいませ~ん」


 ベッドにダイブはダメだった。これだけ柔らかいと衝撃をいい感じに吸収して、音なんて立てなさそうなのに。もしかして、聞き耳立てて、わざと言っているっ!

 なんて変態なんだ。


 いや、そんなことあるわけないか。私って自意識過剰なのかな。嫌だな、そんな女になるの……。


 ふわぁ、なんだか眠くなってきた。死ねないってことも分かっちゃったし、そろそろ寝ようかな。

 ベッドの上、ちょー気持い。


 ベッドの上でもぞもぞしていると、突然世界が止まった。


 いったい何が……っ!


 たゆたう青白い光。まるで魂が彷徨っているみたいだ。その光景が、ちょっとだけ幻想的に見える。

 世界がこの状態になったってことは……あいつが来たか。


「やあ、久しぶりだね、小雪」


 私の目の前に一人の少年が現れた。普通と違うところと言えば、ふわふわと宙を浮いているところかな。


 ベレー帽のようなものを被り、そこからひょろっと出ている髪の毛。だけど前髪が邪魔にならないように、髪留めで止めてある。

 どことなく中性的で、少年とも少女とも思える幼さを持っているが、こいつは男だ。黙られちゃいけねぇ。


 こいつの名はシン。世界樹を管理する唯一神だったりする。

 神様って、その世界を見守るような存在だと思われがちだけど、実際は誰も見守っていない。というか、神様の仕事は沢山の世界を内包する世界樹の管理であり、世界の管理ではない。そんなもの、下っ端の天使にでもやらせておけばいい。

 というわけで、世界樹を管理する神様はこいつしかいないわけ。

 やったね、一人だから唯一神だよ。


 それはそれとして、世界を管理している奴ら、そいつらは、シンが作った部下的存在の天使だ。

 世界樹のメインシステムを保守運営している神様だけど、一人だけじゃ、システムが適用されている各世界の管理ができない。だから天使が派遣されている。

 人からみれば、世界樹を管理しているやつも、世界を管理しているやつも、神様と何ら変わりない。

 この世界でも、神様として崇められているのは、世界管理者である天使だ。

 ちなみにそいつの銅像は不自然に胸が膨らんでいる。絶対パットが入っているなっ!


 私だって、絶壁と呼べるほど平らだけど、堂々としているのに、天使ときたら……。

 おっと、考えがそれちゃった。


 えっと……なんでこいつがいるの?

 私は不思議だなーと思いながら首を傾げて、シンを見つける。


「ふふ、どうしたの、小雪。そんな不思議そうな顔をして」


「いや、なんでいるのかな~って思って」


「ふふ、へへへ、来ちゃった」


 なんだろう、こいつがすごく気持ち悪く見えた。冗談じゃなくマジで。どうしよう、なんか怖い。


「なんか失礼なこと考えたでしょう。お友達が、久しぶりに遊びにきたんだから、もうちょっと嬉しそうにしてもいいんじゃない? ねぇ」


「…………うわぁ」


 ねっとりとした笑みを浮かべるシンを見て、寒気を感じたとか何というか……つい引いてしまった。

読んでいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします!

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