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「必要ないかもしれませんが、一応説明しておきましょう。彼女は私のおばあさんのおばあさんのその又おばあさんにあたる人で、名を稲代と言います。想い人と添い遂げる筈だったのですが、なんとかわいそうなことに、婚式の前日に心の臓の病で死んでしまったのです。でもよほど結婚に未練があったのでしょう。死んで何十年も経ったある日、お墓の下から自力で這い出してきたのです。それ以来私たちは、代々長きにわたって何十人、何百人と男をあてがってきました。つまり花婿ですね。しかし稲代はどの男も気に入りませんでした。今までは。でも、あなたが来てくれました。私達が長い間待ちわびていた人です。稲代が花婿と認めた男は、あなたが初めてなのですよ」


糸居はめまいと吐き気を覚える中で老人の話を聞いていたが、気付けば両腕を抱えていた男も老人も、いつの間にか部屋の外に出ていた。


「まっ、待ってくれ」


糸井の声を無視するかのように扉が閉じられ、鍵が掛けられる音がした。


それでも糸居は扉に向かって走ろうとした。


しかしそれは叶わなかった。


強い力で肩を掴まれたのだ。


見ればしゃれこうべの花嫁が、右手で糸居の肩を掴んでいた。


骨の手を振りほどこうとしたが、その前に後方に引きずられ、布団の上に投げ倒された。


小柄な上に肉も無いというのに、その力はさきほどのいかつい男など比べ物にならないくらいに強かった。


花嫁は帯を解き、角隠しを外して全裸になった。


頭は骸骨だったが、言うまでもなく体もみな骨であった。


花嫁が倒れている糸居の上に覆いかぶさってきた。


そう、これから新婚初夜の神聖な儀式が始まるのだ。



       終

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