6/8
6
そして目の前には何十人という人が座っていた。
大広間には行灯が何個も置かれている。
どうやら寝ている間に夜になったようだ。
そしてなにより、糸居は自分の格好に驚いた。
羽織袴を着ていたのだ。
そういうものに詳しくない糸居の目にも、それはずいぶんと上等なものに見えた。
「目覚めましたか」
左で声がした。
先ほどの老人がそこに座っていた。
老親も羽織袴を着ている。
そして目の前にいる男達も羽織袴を着ていることに、糸居は今更ながら気付いた。
「これはいったい、何の集まりなのですか?」
「結婚式ですよ」
「誰の?」
「なにをおっしゃっているんですか。決まってるでしょう。あなたのですよ」
「えっ?」
「とは言ってもあなたが寝ている間に、式は滞りなく終了しました。つまりもう終わったんですよ」




