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「どうぞ」
――美味い。
そのお茶は、糸居が想像していたのよりもはるかに美味かった。
飲み終えるのを見届けると女が言った。
「代わりをお持ちしましょうか?」
「いえ、結構です。どうもありがとう」
「そうですか」
女は出て行った。
その後はだれもやって来なかった。
――早く家に帰りたいのだが。
でもまだ国道に出る道を聞いていない。
かといって知らない山道を闇雲に走るのは得策とは言えないし、もと来たあの道を帰るのも一苦労だ。
親切にしてくれた老人に何も言わずにいなくなるのも、気が引ける。
しかたなく待っていると、急に睡魔が襲ってきた。
それも強烈なやつが。
糸居は睡魔と戦ったが、あっさりと敗北した。
ふと目覚めた。
気付けば大広間の一番奥にいた。