第5話 おしぼり
「れ、シンジはどうらの?」
始まった。
目が座ってる。焦点が合ってない。っつーか距離が近い。なんでこんなにも典型的な酔っ払いになるんだ。
「どうらのっ!?」
だめだ、これはだめだ。
「エリ……エリちゃん?ちょっとおとなしくしようか。周りの人に、ね?」
と言っても、周りも大騒ぎだから迷惑かかるわけじゃあないんだがな。大学の飲み会なんてこんなもんだ。だが、こんなの続けたら出入り禁止になるだろうが。
「えいっ!」
な、何か飛んだぞ。
「いえーい、あったりー」
きょ、教授のハゲ頭におしぼりが……
「きょーじゅ!きょーじゅはどうらのよ、ねぇええ」
わ、今度は教授の首を絞めているっ!教授のメガネが……おしぼりが……
「わたしっ!トイレー!」
エリは高速千鳥足で部屋を出て行った。
「アヤノちゃん、ちょっと見てきてくれる?」
「そうね。あれはやばいね。見てくるよ」
「悪いね」
エリも酒癖悪くなけりゃ、すげーいい子なんだけどな。あれはちょっと引くな。学生のときだけだといいな。ずっとだと困るな。
っつーか、帰ってこないじゃん。アヤノちゃん、ちゃんと見てくれてるのかな。
「アヤノちゃん、どうなの」
「ああ、だめね。いま便器とお友達だから」
「……あ、そう……」
「ごめんなさーい……」
「謝ってるよ」
「謝ってるね」
「写真、撮っとこうか」
「バカ、やめなよ」
「そうね」