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15せンチのおはよう  作者: 蔵樹 賢人
月曜日
2/11

第2話 手巻きサンドイッチ

「シンジ、お弁当持ってきたよ」

「おー、さんきゅー」


 公園の昼下がり、キラキラと降ってくる木漏れ日のベンチで、エリは大きな手提げ袋から弁当箱を取り出した。


 巨大だ。


「ちょっとでかくね?」

「そうかなぁ。でもシンジってたくさん食べるから」


「そうね……いやでも、それはでかい」


「何よ。じゃあ食べさせないんだからぁ」


「あー、いや……」


「開けてもいないのに文句ばっかり。いっつもそうなんだからぁ」


 エリは手提げ袋に乱暴に弁当箱を押し込み、横を向いてしまった。後ろからでも涙がこぼれているのがわかった。


「エリ……エリちゃん。何も泣かなくても……」

「泣いてないもん!」


 こうなると奥の手を使うしかない。


「エリちゃん。ここの公園の入り口に、めっちゃ有名なクレープ屋さんがあるんだってさ。お弁当食べたらデザート行こうよ」


 エリは泣き顔のままクルッと振り向いた。キラキラと潤んだ目が光っている。


「ほんとっ!?」

「ほんとほんと。おごるからさ」

「やったー」


「じゃあさ、お弁当食べよう?美味しいよー」

「へー、どんなのかな。楽しみだよ」

「へへへ。サンドイッチ」


 ハムサンドかな。卵とマヨネーズぐちゃぐちゃかき混ぜたやつかな。カツサンドもいいな。


「じゃじゃーん。手巻きサンドイッチ〜」


 手巻き?寿司じゃなくて?


 エリが弁当箱を開けると、ビニールに包装された十二枚切りの食パンが現れた。食パンの横には苺ジャムとブルーベリージャムの瓶。そしてスーパーの売り場に並んでたの同じ状態と思われる包装されたハム。マヨネーズとカラシのチューブ。そしてタッパーの中にはゆで卵が四つ入っていた。


「これ、自分で作るんだよ。楽しいでしょう。卵はマヨネーズとかき混ぜてね。あ、コーヒーもあるよ」


”お前、これ弁当じゃねーじゃん!サンドイッチでもねーよ!!”


 と言いたいのを必死でこらえた。


 これ言ったら絶対泣く。俺は冷静になろうと、具材を見て何ができるかを前向きに考えようとしていた。そうだ、野菜がない。


「エリちゃん、野菜は?」


「じゃじゃーん。あるよー」


 エリは手提げ袋からレタスまるまる一個を取り出した。


「お前、そんなに食えねーよ!」

「でもシンジってたくさん食べるから……」


 あーーー


「そうだな。でもそんなには食べないかな。レタスは三枚くらいじゃないか?」

「三枚?じゃあ私は二枚ね」


 やっぱ、余るんじゃん……

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