第2話 手巻きサンドイッチ
「シンジ、お弁当持ってきたよ」
「おー、さんきゅー」
公園の昼下がり、キラキラと降ってくる木漏れ日のベンチで、エリは大きな手提げ袋から弁当箱を取り出した。
巨大だ。
「ちょっとでかくね?」
「そうかなぁ。でもシンジってたくさん食べるから」
「そうね……いやでも、それはでかい」
「何よ。じゃあ食べさせないんだからぁ」
「あー、いや……」
「開けてもいないのに文句ばっかり。いっつもそうなんだからぁ」
エリは手提げ袋に乱暴に弁当箱を押し込み、横を向いてしまった。後ろからでも涙がこぼれているのがわかった。
「エリ……エリちゃん。何も泣かなくても……」
「泣いてないもん!」
こうなると奥の手を使うしかない。
「エリちゃん。ここの公園の入り口に、めっちゃ有名なクレープ屋さんがあるんだってさ。お弁当食べたらデザート行こうよ」
エリは泣き顔のままクルッと振り向いた。キラキラと潤んだ目が光っている。
「ほんとっ!?」
「ほんとほんと。おごるからさ」
「やったー」
「じゃあさ、お弁当食べよう?美味しいよー」
「へー、どんなのかな。楽しみだよ」
「へへへ。サンドイッチ」
ハムサンドかな。卵とマヨネーズぐちゃぐちゃかき混ぜたやつかな。カツサンドもいいな。
「じゃじゃーん。手巻きサンドイッチ〜」
手巻き?寿司じゃなくて?
エリが弁当箱を開けると、ビニールに包装された十二枚切りの食パンが現れた。食パンの横には苺ジャムとブルーベリージャムの瓶。そしてスーパーの売り場に並んでたの同じ状態と思われる包装されたハム。マヨネーズとカラシのチューブ。そしてタッパーの中にはゆで卵が四つ入っていた。
「これ、自分で作るんだよ。楽しいでしょう。卵はマヨネーズとかき混ぜてね。あ、コーヒーもあるよ」
”お前、これ弁当じゃねーじゃん!サンドイッチでもねーよ!!”
と言いたいのを必死でこらえた。
これ言ったら絶対泣く。俺は冷静になろうと、具材を見て何ができるかを前向きに考えようとしていた。そうだ、野菜がない。
「エリちゃん、野菜は?」
「じゃじゃーん。あるよー」
エリは手提げ袋からレタスまるまる一個を取り出した。
「お前、そんなに食えねーよ!」
「でもシンジってたくさん食べるから……」
あーーー
「そうだな。でもそんなには食べないかな。レタスは三枚くらいじゃないか?」
「三枚?じゃあ私は二枚ね」
やっぱ、余るんじゃん……