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無双系女騎士、なのでくっころは無い  作者: 赤木一広(和)
第四章 王都ジェヌルキ
53/212

053.そりゃ杭が出てたら打たなきゃ危ない



 スティナ・アルムグレーンが訪れたのは王都の中でもあまり治安のよろしくない地区で、面倒を避けるべくスティナは顔をフードで隠して歩いている。

 まだ昼間のうちに、スティナは酒場になっている店の扉をくぐる。

 店番らしき、ガラの悪そうな若い男が座っていた席を立つ。


「おい、なんだてめぇは」

「マルコに用があるの、スティナが来たと伝えなさい」


 そう言ってスティナは適当な席に勝手に座ってしまう。

 そのデカイ態度に、店番の男は舌打ちする。


「けっ、偉そうに。マルコさんの前でもその態度が取れるか見物だな」


 待つこと三十分ほど。

 おっそろしく焦った顔で、中年の男が店に駆け込んできた。


「うおっ! 本当に居やがる! アンタ今ヴァラームって話じゃなかったか!?」

「昨日の夜戻ったのよ」

「なんだよそりゃ。あっちじゃ今すげぇキナ臭ぇ事になってるって聞いてるぜ。アンタがこっち戻ってきちまっていいのかよ」

「少なくとも、私が関わったキナ臭い事はもう終わったわよ。聞きたい?」


 中年の男、マルコはスティナにぐいと身を寄せる。


「聞かせてくれんのか」

「もちろん。いつももらってばかりじゃ悪いわ」


 マルコは店番の男を店に残し、この酒場の奥へとスティナを誘う。

 密談に使う部屋に連れてきた後、マルコは棚から一番上等なワインを引っ張り出し、グラスを用意する。


「で、何があった?」


 スティナはかいつまんでヴァラームで起こった出来事を説明してやる。

 マルコは黙ってこれを聞いていたが、表情はそうはいかなかったようで、眉をしかめたり、大きく嘆息したり、怒鳴ろうとして思いとどまったり、笑い飛ばそうとして失敗したりと色々面白顔を見せてくれた。


「……あれだな。アンタん所がイカれてるのは知ってたが、こう何度も繰り返して強調されると、実はそれほど大した事じゃなくて、当たり前に起こる事なんだって気がしてきちまう」

「お願い、馬鹿にするんならもっとはっきりした言い方してちょうだい。殺していいのかどうかわからなくなるわ」

「おいごめん悪かった謝るからやめてくれ。……あー、そう、今度はこっちの情報だな。それでいいんだよな?」


 くすりと笑うスティナ。


「ええ、お願い。できれば良い話があるといいわね」

「無理だ。全部クソみたいな話だよ」


 マルコが話してくれたのは、現在王都では第十五騎士団が大いに注目を集めているという話だ。

 まず、王都にいる、剣で身を立てようと思ってる連中の大半が、第十五騎士団の騎士になろうと狙っていること。


「大半? それは言いすぎじゃない?」

「うん百人が狙ってんだ、言いすぎでもなんでもねえよ。何かしら対策立てといた方がいいだろうな」

「ウチなんて入ったって、ロクなもんじゃないわよ? レアでさえ遺書書いてから仕事するぐらいだし、それ以下じゃとてもじゃないけど生き残れないわね」

「俺はそれを知ってる。だが、どーやってアンタらが噂になるような武勲を立てたかってのを、他の大多数の奴は知らねえんだよ」

「めんどうよねぇ」

「面倒なのはそれだけじゃねえぞ。教会のガキ共がお前らの屋敷狙ってやがる。褒賞金山ほどもらったって、誰かが漏らしたみたいだな」

「盗人も来るの?」

「まだいるぜ。西区のゴロツキ連中はアンタらに絡んで金せしめようと狙ってる。金だけじゃなくて名前も上げようって腹だろうな」

「…………」

「他には、コイツははっきりした話じゃねえが、赤い刃もアンタらのこと調べてるって噂だ」


 机に肘をつき額に手を当てるスティナ。


「あー、ヘコむのはまだ待て。とびっきりのが残ってる」

「……元帥絡み?」

「それだそれ。元帥の孫、ヘルゲ・リエッキネンが腕利きを国中から集めてる。随分とまあ、金をかけてるようだぜ」


 マルコがそう言って挙げた名前の中には、スティナも聞いたことがあるようなビッグネームまで混ざっていた。

 首を上げ、うんざり顔で訊ねるスティナ。


「それで終わり?」

「これが俺の耳に入った全部だ。だが、元帥本人回りだのは俺にも手に負えねえぜ、さっき言った赤い刃もな。はっきりと言わせてもらえりゃな、ここまで下町連中が動いてるんだ、それ以外も当然動いてるだろうぜ。貴族、兵隊、ゴロツキ、色々だ。そいつらと出た所勝負で戦うつもりじゃねえんなら、調べとくのはアンタの仕事だろ?」

「ホント頭に来る話だけど、貴方の言う通りよ。あーもう、これじゃケネト殺してる暇無いじゃない」

「やめとけ、今はな。いいか、こういう一点に何もかも集中しときながら公に騒がれないって時ぁ、一番ヤベェ時なんだ。誰かが人知れずケリ付けようとしてやがる時、こういう形になりやすいんだよ」

「……ん、わかった。ありがとマルコ。最初に会った時はこんなに頼れる奴だとは思わなかったわ」

「最初に会った時は、死神と哀れな罪人だったじゃねえか。チクショウ、今でも時々夢に見るんだぞ」

「悪かったわよ、もうあんなことしないって。貴方が私たちを裏切らない限りは」

「おめーみてーなバケモノ裏切ってなんにつくってんだよ! わざわざ弱い方に付く馬鹿がどこに居る! いいか、アンタが死ぬ時ははっきりと死体が残る形で死んでくれよ。でないと俺ぁアンタが死んでからもビビり続けなきゃなんねえんだからな」

「何よ、私を殺せる奴に心当たりでもあるの?」

「もし赤い刃とアンタが揉めたら、どっちが勝つか俺には想像もつかねーんだよ。頼むから、アンタの方から俺の名前が漏れるなんてこと、無しにしてくれよな」

「はいはい。また何かあったら連絡ちょうだいな」

「断る。今の王都でアンタと繋がりがあるなんて万一バレたら、とてもじゃないが俺じゃ生きていけそうにない」


 面倒そうにじっとマルコを見るスティナだが、マルコはここは引けない勘弁してください、と目で言い、スティナは仕方なく納得してやった。


「じゃ、定期的に顔出す程度にするわ。アンタも早々に死んだりしないでよ? 一番にウチの情報流してやろうってぐらいには、頼りにしてるんだから」

「おうよ、意地でも生き残ってやらぁ」


 立ち去る前にスティナがぐいっと一息で呷ったワインは、びっくりするぐらいおいしいものだったので、もう一杯ぐらいもらえないかな、とも思ったが、今更戻ってワイン頂戴というのもかっこ悪い気がして、スティナは言い出せないまま立ち去った。

 去り際、スティナがワインを飲んで驚いた顔をしているのを見たマルコが、してやったりな顔をしていたのが、もう一杯を言い出せない理由の大半であったのだが。







 イェルケルの屋敷での晩餐は、第十五騎士団のメンバー皆が楽しみにしているものであった。

 単純に皆で食事しながらわいわいやるのが楽しいというのもあるが、この屋敷で出される素朴な食事がおいしいのだ。

 極端に味が際立っているというわけでもなく、驚くような何かがあるでもない。

 だが、時々思い出したように食べたくなるような、そんな味をしているのだ。

 ただ、今日の食事の味は皆あまり記憶には残らなかったようだ。

 スティナが延々してくれた話が原因である。

 いつもは強気のアイリも困惑しているようだ。


「どういうことだ? 幾らなんでもいきなり敵が増えすぎてはおらんか?」


 考え込むようにイェルケル。


「元帥の仕掛け、とか」


 これをレアが否定する。


「幾らなんでも、手広すぎる。ここまで色々いると、敵同士の間で争いが、起きかねない」


 スティナもこれに同意見らしい。


「そうね、連携も取れてないみたいだし。もしこっちに情報収集手段が無かったら、無警戒で一番危ない暗殺者の襲撃を受けてたってこと考えると、中途半端な敵はむしろ居ない方が警戒されない分良かったはず」

「ふむ、スティナは赤い刃がこちらに来ると思っておるのか?」

「ここまでそこら中から敵視されてるとなると、いずれどこかが依頼するでしょ。そのつもりで備えていた方が良いわ」

「いや、そうとも限らん。我々ははっきりしすぎているぐらいはっきりと王家閥であろう。赤い刃とやらが殿下に手を出せば、特に宰相閣下からの言及が無くともそれは王家に弓を引いたと看做されぬか?」

「今はまだ、その理屈は通らないんじゃない? 私たちの武勲、皆半信半疑のままよ? 今死ねば、あれはやっぱり嘘だったのかで終わるんじゃないかしら」

「……むしろ、今こそが暗殺の好機と言いたいのか」

「標的、王都に戻ってきてるしね。ウチって殿下が全ての要だから、殿下が殺されたら全部終わるわ」


 レアが話に割ってはいる。


「王子を狙う奴がいるなら、やることは一つ」


 苦笑するスティナ。


「殿下の一番の敵がそれで殺せないのよ。だから苦労してるんじゃない」

「なら、王子を殺せる奴を、全部殺せばいい」


 ははっ、と笑い出すアイリ。


「そうだな、物事は単純明快なのが良い。公に殿下を殺せぬというのであれば、公ならざる殺し方をする他無い。王都で最も強い公ならざる殺意を潰してやれば皆黙るか」


 王都育ちのイェルケルは、幼い頃より赤い刃の恐ろしい噂を聞いて育っている。

 なので皆ほど楽観する気にはなれない。


「王都で何十年も噂になってる連中だぞ。正直言って私は、気が重いなんてもんじゃないんだがなぁ」


 これに対し、アイリは明るく陽気に答えた。


「であるのなら尚のこと、我らが退治してやらねばなりますまいて」

「何十年も、貴族たちすら恐れさせてきた相手をか?」

「ならば怖くなくしてやればよろしい。今から、ここから、我らは赤い刃に戦を仕掛けてやればいい。そうなれば赤い刃だろうと青い大空だろうとただの敵でございます。殺して良い、敵にすぎませぬ」


 そこで一度言葉を切る。


「敵を恐れる殿下ではありますまい。赤い刃にしたところで、敵に対し面と向かった宣戦布告なぞしたことも無いでしょうから、こちらがそうしなくても責められる謂れはありませぬしな」


 無茶苦茶だ、とぼやくイェルケルに、うんうんと頷いてるレア。


「戦なら、殺していい。殺していいんなら、勝ち目はある」


 仏頂面のスティナを見たイェルケルはこちらに援軍を求める。


「なあスティナ。ウチの殺意余り過ぎてる連中に何か言ってやってくれ」

「ええ殿下。そこの二人、どーせ赤い刃の居場所探したり構成員の数調べたりどこと繋がってるのか確認するのは私の仕事なんでしょ。なのにどーして二人がそんなに偉そうにしてるのかしら?」


 アイリとレアは、同時ににかっと笑う。


「「スティナ、よろしく」」

「……うわ、殴りたいわその笑顔」


 大きく嘆息するイェルケル。


「結局、ヤるのは変わらないんだな……」





 盗人対策として、アイリがイェルケルの屋敷に泊まることになった。

 アイリは要所要所での護衛を担いつつ、独自に調べ物をする。

 スティナは相変わらずの外回り。レアはイェルケルと一緒。訓練の日々である。

 朝一番に来た入団希望者をイェルケルが張り倒した後、イェルケルとレアは山に訓練に向かう。

 昼以降も入団希望者は訪れるのだが、使用人が朝以外は受け付けていないと突っぱねる。

 イェルケル曰く、ここ数日で使用人たちの精神耐久力が著しい上昇を見せている、だそうだ。

 後、給金を上げてやろうとも言っていた。

 アイリは使用人たちから客間を宛がわれ、ここに寝泊りすることになった。

 当然、アイリの屋敷の部屋よりずっと小さい。

 だが掃除も手入れも行き届いた部屋で、椅子に腰を落とすと、なんともいえぬ落ち着いた気分になれる。

 アイリはあまり贅沢なタチではないので、小奇麗な部屋であれば充分満足できてしまうのだ。

 荷物を置くと、使用人がアイリをとっておきの場所へと案内してくれると言う。

 少し自慢げな彼女の様子に、興を引かれて後をついていってみれば、そこはお風呂場であった。


「なんと……このように大きな風呂があろうとは」


 屋敷の規模にも全く合っていない、四人も五人も同時に入っても全く問題ないぐらい広い風呂場があったのだ。

 そもそも屋敷の中に風呂を作るのは、よほど財力のある家でもなくばしないことだ。

 にもかかわらずこの風呂は、広さだけではなく造りも見事で、各所に贅を凝らした工夫が見られる。

 かく言うアイリも、思わずわくわくしてくるような風呂だ。

 使用人に一言断った後、アイリは風呂場を隅から隅まで細かく見て回る。

 細工、色合い、全体の構成、何もかもが極上のものばかり。

 アイリはもうため息しか出てこない。

 使用人は苦笑しながら言った。

 元々王家の者の屋敷としてはこの屋敷はあまりにも小さすぎるのだが、その理由はこの風呂場にあるそうな。

 当時最も有名と言われた風呂職人を招き、最高の風呂を作ってもらったせいで、他に回す金が無くなったのだという。


「殿下はそんなにまでするほど風呂がお好きなのか?」

「ええ、毎日欠かさず入られますよ」


 イェルケルより漂う清潔感にはこうした理由もあったのか、とアイリは納得する。

 使用人がこの風呂の使用上の注意を始めると、アイリは少し慌ててしまう。


「い、いや待て。さすがにこの風呂を私が使うのは……殿下のお気に入りなのであろう?」

「いえいえ、我が家に泊まられるお客様には必ずお勧めするようにと殿下より仰せつかっております。特にアイリ様には、香油を流してやってくれとも言われておりますから。是非、ご堪能くださいませ」

「香油まであるのか……いや確かにあそこの仕掛けはそのためのものであろうが……うーむ、そこまで言われては断るのもなんだが、さすがに気後れするな、こうも豪華な風呂となると」

「それもまた、楽しみとなさるがよろしいでしょう」

「ははっ、なるほど。良しわかった、せっかくだから馳走になろう。入るのは、確か日が落ちてからだったか」

「はい、お風呂を終えたらすぐに寝るというのが一番よろしいかと。準備が整いましたらお呼びいたしますので」


 思わぬ楽しみができたアイリは、資料室で写しを作った資料を見ながら、自分で書類を作り始める。

 サルナーレ、アジルバ、ヴァラームと三つの土地を回って、アイリなりに思う所があった。

 ずっと頭の中だけにあったそれらをこうして文字にし記していくと、それまで頭の中だけでは整理が付かなかった様々な事柄がすんなりと一本の線の上に乗ってくれた。

 また、自分でも気付かなかった新たな発見もあった。

 雑多な思いつきを整理し、まとめ、記していくと、瞬く間に書類が増えていった。

 一度書いた書類を何度も見直し、再度まとめ直して新たな書類に仕上げていく。

 じっと机に向かっているだけで肩のこる仕事であったが、そうした作業はアイリにとって、とても楽しいものであった。

 そうしていてふと気が付くと、扉の前に人の気配が。


「アイリ様、お食事の時間でございます」


 外は夕暮れ時。

 もう夕食の時間であった。


「ああ、今行く」


 時間を忘れるほどに集中してしまったのは、資料室での作業に続いて二度目だ。

 今の自分たちの敵だらけの状況を考えればこれは反省せねばならないだろうが、次も同じ仕事をしたのなら、きっとまた時間を忘れてしまうだろうとも思う。


『接近を警戒する仕掛けでも作るとするか。気を張っておれば不要なものだ、などとスティナには偉そうに言ってしまったからなぁ。気が重いわ』


 夕食は、四人が揃うまでは応接間にて談笑して待つのがいつもの形だ。

 今日の一番乗りはスティナ。

 次にイェルケルとレアが来て、最後にアイリが。

 屋敷に居るアイリが最後なのは、逆に一番ぎりぎりまで作業していてもすぐ集まれるせいであろう。

 四人が揃うと食事をして、食後の一杯を各人が好みに合わせていただきながら、その日のことを話し合ったり、時に全然関係ない話題で盛り上がったりと賑やかに過ごした後解散である。

 その日はあまりに話題が盛り上がりすぎてしまったため、アイリはつい、イェルケルに風呂の話をするのを忘れてしまっていた。

 そしてすぐ、使用人の勧めるがままに風呂場へと。

 一方のイェルケルはというと、いつもの調子で寝床に入る前に風呂に行こうと考え、風呂場前を通る。

 風呂はこの時間ならばいつも使用人が用意してくれているので、イェルケルは今日もそうだと特に考えもせぬまま、訓練で疲れたしすぐ入るか、と使用人にも言わぬまま風呂場へ入ってしまった。

 浴槽に浸かり、ご満悦のアイリ。脱衣所に人の気配を感じるも、使用人が気を使って背中でも流しに来たかとこれをスルー。

 かくして、ラッキースケベの舞台が整ったわけだ。

 がらりと戸を開き中に入ったイェルケルは、要所を隠してくれるような素敵湯気なぞの存在しないお風呂場空間にて、すっぱだかのアイリと遭遇したわけだ。

 肌つやが凄い、と思った。

 小ぶりな胸も、全然悪くないむしろよろしい、と思った。

 水に濡れた髪がいつもと違って背中にかかる長さで肌に張り付くのも素晴らしい、と思った。

 体が女性らしく穏やかな丸みを帯びているのがかわいい、と思った。

 子供そのものな背丈と顔つきで、大人びた所作で風呂に入ろうとするのが綺麗だ、と思った。


「…………で、でんか?」

「え? ……お、おー、あい、り。か」


 開いた時とは逆で、おずおずと戸を閉めるイェルケル。

 とてもゆっくりとした速度で、イェルケルが脱衣所を離れていく足音が聞こえた。

 アイリは、ふう、と息を吐き出した後、湯船に浸かりなおす。


「むう」


 しばらくの間お湯の中で身じろぎもせずじっとしていた。

 頬といわず顔中が紅潮しているのは、風呂だけが理由であったものか。


「……裸如き見られたところで、と思っていたものだが……これは、恐ろしく、恥かしい、な……イカン。明日殿下にどんな顔して会えばいいかわからんっ」


 きっとその部分だけは、イェルケルも同感であろう。

 この事故は、幸い使用人たちにすらバレていなかったようなので、示し合わせたわけではないが、二人だけの秘密とすることになった。

 翌朝、朝食の席でイェルケルが「昨日はすまなかった」と謝り、アイリが「いえ、お気になさらず」と答えたことで以後この件に二人が触れることは無かった。

 この時どっちもが顔中真っ赤にしていたので、これを見た使用人たちが二人の発言をとても気にしたものだが、表立ってどうこう言う無礼な使用人は一人も居なかったのである。



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ちゃんと女の子してる、のに。どうしてああなのだ(2周目感)
[良い点] やっぱりヒロインじゃねぇか!!!!!!! [気になる点] やっぱりヒロインじゃねぇか!!!!!!! [一言] やっぱりヒロインじゃねぇか!!!!!!!
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