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無双系女騎士、なのでくっころは無い  作者: 赤木一広(和)
第十一章 カヤーニ牢獄
173/212

173.牢獄将シュルヴェステル


 カヤーニ牢獄。

 平民用の牢獄としてはイジョラ最大級のもので、平民の凶悪犯罪者は全てここに収監されると言われており、平民たちは皆さぞや恐ろしい牢獄であろうと畏れ怯えている。

 そして犯罪者たちとの接触の多い者、より正確には投獄され刑期を終え出所した者と遭遇する機会に恵まれた者は、カヤーニ牢獄から戻った犯罪者の話を全く聞けないことに気付く。

 そう、大多数の平民は知らないことであったが、カヤーニ牢獄は一度入ったが最後、決して生きて出ることのできぬ場所であった。


「おいいいいいい! なあああああんで俺様の言葉に逆らう馬鹿がここにいるんだああああああ!?」


 囚人が集まる広場にて、一際大きな体躯を持つ大男が倒れ伏す囚人を見下ろしている。

 豊かな食生活に支えられたふくよかな体型は、彼が他の囚人たちとは全く違う立場の人間であると教えてくれる。

 だが彼は、ただ太っているというだけではない。全身の肉付きをみればこれが鍛えた身体であると見抜くこともできよう。ただ、厭味ったらしいにやけ顔だけは鍛錬でも修正しようがなかったらしい。

 男の名は牢獄将シュルヴェステル。このカヤーニ牢獄において兵たちの最高責任者である男だ。


「俺が起きろって言ったら即座に直立不動だろうがこのボケがあああああああ!」


 シュルヴェステルの前で俯せに倒れた男は、呼吸も荒く目の焦点も合っていない。立ちたくても立てないのだ。

 シュルヴェステルが目配せすると、彼の背後に並んでいた五人の、シュルヴェステルより更に大柄な男たちの内の二人が倒れる男の両脇を掴んで引きずり起こす。

 囚人たちは広場で遠巻きにこれを見守っている。誰も声は出さない。牢獄将シュルヴェステルの狼藉は今に始まったことではない。彼の暴虐から逃れる術はなく、目を付けられないようにするのが唯一の手段であるのだ。

 両脇を抱えられ立ち上がった囚人は、虚ろな目でシュルヴェステルを見る。

 そして、自分はここで死ぬんだと悟った彼は、悲しそうな顔で目を伏せた。


「見よ! これぞ我が必死必殺必勝の拳! 魔法拳! 光玉破砕爆裂豪打!」


 その大きな身体からは想像もつかぬ素早い踏み込み、そしてまっすぐに突き出した拳は一直線に囚人へと。

 拳が囚人の腹部に打ち込まれると、囚人はその衝撃に全身を折り曲げ、そして、閃光と共に腹部から大きく破裂した。

 両脇を掴んでいた二人の男は飛び散った血飛沫をもろにもらっているが平然としたもので、殴りつけたシュルヴェステルは、これを不可視の盾で全て防いでいた。


「イカン! イカンぞこれ! 俺様今日は絶好調すぎるだろ! まったく、なんなのだ我が拳は? ちょっとこれ特級魔法扱いされてしまうだろうこのままじゃ。使用制限とか課せられたらたまったもんではないな、がっはっはっはっは!」


 機嫌よさげにそう笑うシュルヴェステルは、返り血を浴びた大男二人を見て更に大きく笑う。


「何だお前たちのザマは! 赤鬼! 紫鬼! お前らその程度避けんか! 平民の匂いがついても知らんぞ!」


 鬼の名を冠する二人は無感情にシュルヴェステルを見る。この二人と残る三人で、カヤーニ牢獄の看守隊と称する。牢獄将シュルヴェステルの護衛であり、この牢獄で開発された人間である。

 シュルヴェステルが許すと、赤鬼と紫鬼は浴びた血潮をふき取りにこの場を去る。

 その二人とちょうど入れ違いに駆け込んできた男が一人。


「あちゃー、またやったんですか……シュルヴェステル様! またですか! 今月これで三人目ですよ!」


 男はシュルヴェステルに向かってそう抗議すると、シュルヴェステルはがははと笑いながら答える。


「まあそう固いことを言うな。こうして日々研鑽を重ねることで、我が拳は無双の境地へと至ったのであるからな」

「処刑用が欲しいんならカヤーニの街にでも行けばいいじゃないですか。こっちの囚人は全員、研究所の管理下にあるんですよ。もう何度言わせるんですか」

「そうは言うがな、囚人がこの俺に逆らったのだから仕方あるまい。それと……」


 シュルヴェステルは男に向かって一歩踏み出す。


「こちらも何度か言ったと思うがな。あまり俺の機嫌を損ねるなよ小僧。副所長程度なら、捻り潰してもどうとでもなるのだぞ」

「……所長に、報告はします。いいですね」

「ふん、勝手にしろ。まったく、貴様ら研究員はどうしてそうつまらん話しかせんのだ。聞いてて気が滅入ってくるわ」


 苦笑しつつ、研究所副所長である男は言った。


「では、アルト王子の軍五百をたった四人で倒したという殿下商会の続報はどうです?」

「む? あれは本当に四人であったのか?」

「ええ、その後、ヒト人形工房を潰し、ヒュヴィンカーの街を壊滅させた、という話は聞きましたか?」


 シュルヴェステルは目を大きく見開く。


「……お前でも冗談を言うのだな」

「手配書が中央からのお墨付きで回ってきてます。この四人のために新たに特級犯罪者という等級まで作られたそうですし、ちょっと信じられないですけど本当にこの連中存在するみたいですよ」


 シュルヴェステルは顎に手を当て考え込む。


「……ふむ、広域攻撃魔法か。いい加減あれの使い手は全員どこかに隔離すべきだな。確か二十年前にも一度あったろう、広域攻撃魔法の使い手が発狂した話が」

「いえ、どうもそういう話ではないようで。特級儀式魔法相手に、魔法戦士のように戦い張り合ったと聞きました」

「どれだ?」

「北極族の呪詛です」

「おいっ。北極族の呪詛で出てくる人狼の群に対抗できる者なぞ、それこそ近衛の者ぐらいだろう」

「手配書には、そのつもりで備えろ、とありましたね。所長が戻ったらウチでも警戒態勢の話出るんじゃないですか」


 ふん、と鼻で笑うシュルヴェステル。


「馬鹿馬鹿しい。ここは泣く子も怯え平伏すカヤーニ牢獄だぞ。この牢獄将シュルヴェステルある限り、たとえ近衛とて好きにはさせん」


 そして獣のように獰猛に口の端を上げる。


「だが、実に良い話であった。更なる続報あらばすぐに伝えろよ」


 頼りにしております、と副所長が一言添えるとシュルヴェステルは上機嫌にがははと笑いながら引き上げていった。

 するとすぐに研究所の所員が副所長に声を掛けてきた。彼は副所長に同行してこの場に来ていたが、シュルヴェステルが恐ろしくてこれまで隠れていたのである。


「さすが副所長ですね、シュルヴェステル様相手でも毅然としてらっしゃる」

「……お前……まあいいけどさ。気を付けろよ、私はなんやかやと付き合い長いからああやって大目に見てもらえてるけど、お前らが舐めた口きいたらその場で殺されるぞ」


 だから隠れてたんですよ、と言われると文句の言いづらい副所長である。

 副所長は自分の立場でできることは既に終えている。

 カヤーニの街の警戒態勢を確認するべく人をやり、向こうで問題が起こったならすぐにカヤーニ牢獄の方にも連絡が来るよう念を押しに行かせた。また同時に情報収集も行わせる。人の集まるカヤーニの街の方が様々な情報が集まりやすい。反乱軍の動向など、知っておくべきことは多いのだ。

 副所長は内心でぼやく。


『こういうの、所長もシュルヴェステル様も全く気に掛けないからなぁ。どちらもそれぞれに優れた方なんだが……』

 

 要約すると、面倒な処理は全部副所長がやるということである。

 同行していた男は、ふと思い出したように副所長に問う。


「そういえば、所長はいつ戻られるんです?」

「……一週間前の予定だったよ。三日前に遅れると連絡があった」


 どれだけ遅れるという話を一切しない辺り実に潔い。研究が満足行く所まで進まなければ、出先である山頂研究室から戻る気はないということである。

 やはり苦労の絶えない副所長であった。






 カヤーニの街。

 カヤーニ牢獄から徒歩で丸一日の場所にあるこの街にはイジョラで最も大きな裁判所があり、イジョラ各地より送られてきた平民犯罪者の裁判を行なっている。

 収監に値せぬと処刑を行なう処刑場も、法により奴隷化した者の売却を行なう奴隷市も、共にこの街を盛り上げる施設であり、またカヤーニ牢獄に併設されている魔法研究所の関係者が多数住んでいることもこの街が栄える一因となっている。

 この街でレア・マルヤーナは、天井裏に張り付いた姿勢のまま青ざめた顔で階下の商人の話に聞き入っていた。


「それ本当かよ。単騎で千の軍に突っ込んで、挙げ句王女様さらっただあ? しかもソイツ魔法使いじゃねえってんだろ? 幾らなんでもその話信じろってのは無理があんだろ」

「いやいやそれが本当なんだってよ。俺、戻ってきた兵士たち見たんだけどさ、ありゃホントひでえわ。みんな生気抜かれたみたいな顔してよ、それが平民だけだってんならわかるぜ。でもよ、その後取引で会った貴族様もぼやいてたんだよ。帰ってきた貴族たちがみんな魂抜かれたみたいになっちまってるって」


 その後も疑う相手に対し、その信じられぬ話が真実である証拠を語り続ける男。

 さすがに無視しきれぬと思った彼は問い直す。


「おい、もっぺんソイツの名前教えてくれ。反乱軍じゃ有名なんだってな」

「ああ、天馬の騎士シルヴィっていうらしい。反乱軍が貴族に勝っちまってる意味の分からん現状も、大方コイツのせいって話だ」


 天井裏のレアは、流れる汗をぬぐうことができぬほど衝撃に狼狽えていた。


『シルヴィが来たってどういうこと!? っていうかシルヴィ反乱軍に参加したの!? それマズイ! ホントマズイって! 私たち反乱軍ヤっちゃってる! 百人も殺してたらさすがのシルヴィも怒るって! 私シルヴィと殺し合いなんて絶対したくないしっ!』


 大いに焦るレアを他所に、商人は反乱軍の話が終わると、そろそろ取引があるからと店を出る。レアはもっと詳しい話をとこの商人の後を追う。

 それはレアの焦りが選ばせたさして深い考えのある行動ではなかった。だがこの商人、次に向かったのはその身なりの良さにはあまり似つかわしくない安宿であった。

 そして宿に入る時の商人の挙動だ。


『あれ? 私、バレた?』


 そうと気付かれぬような細かな動きではあったが、周囲を警戒し尾行を撒くための動きを商人はしていたのだ。

 ただレアの居場所に気付いた様子もなく、そのまま商人は宿の中へ。

 商人が宿の中を勝手知ったる様子で歩き、内の一室に誰の案内もなく入る。

 屋内に入られると尾行している相手の表情を見るのが難しくなる。基本的に建物の屋根裏やらに潜んで音のみを聞いているためだ。尾行の延長で屋根裏に入り、これを伝って屋内での尾行を続行するだけでもう普通の諜報員には不可能な動きであるのだが。

 しばらく待たされたところで、商人の居る部屋に男が三人入ってきて四人での話し合いが始まった。

 それは、とても表には出せぬ話。カヤーニの街に潜伏する反乱軍と、その連絡役である商人との密談であった。

 商人の任務はこうして各地の反乱軍との繋ぎを取ることと、各地に反乱軍の活躍を伝え広めることであった。

 定期的な連絡事項の伝達を終えると商人は今回の目玉情報を彼らに提示する。


「急務がある。最近噂になっている殿下商会というのを知ってるか?」

「一応は。中央の貴族の間じゃ、反乱軍よりよほどこちらの方が話題になっているからな」

「アレと繋ぎを取りたい」

「……正気か?」

「とても困難な任務であることは百も承知だ。だが、何がなんでも彼らとの繋ぎを作らなければならない。北部反乱軍が彼らと揉めて百人が殺されたという話は聞いたか?」

「何!? 彼らはイジョラと戦っているのではないのか!?」

「イジョラ魔法王国を敵に回しながらも、我らともぶつかっているのだ。どうにか彼らと和解をしたい。いや、しなければならない。本部からは彼らとは絶対に敵対してはならないという話が来ている」

「味方につけようと?」

「この話は、伝える相手をよくよく選んでほしいのだが……天馬の騎士シルヴィの知り合いらしい」

「ほう、なるほど、強者は強者を知るということか」

「……そのシルヴィが言ったそうだ。殿下商会の四人組が相手では、シルヴィですら勝てぬと。彼らに義理もあるから彼らと刃を交えることだけは絶対にできぬと」

「馬鹿な! 我らの天馬の騎士が負けるなぞありえん!」

「そう言いたくなる気持ちはわかる。だが、殿下商会が敵に居るとわかった彼女は……反乱軍を抜けるとまで言ったそうだ」


 男が激昂し商人の胸倉を掴みあげる。


「嘘をつくな! 我らの! 我らの天馬の騎士がそのような事を口にするはずがない! 我ら反乱軍を見捨てるような言葉なぞ! 吐くわけがないだろう! 無償で農村を回り我らの困窮を救い! その剛勇で反乱軍を導く勝利の女神をなんだと思っている!」

「……すまん、こんなこと、俺だって言いたくはなかった。だが、事の重要性を理解してもらうためには、事実を伝える他ないのだ。どうか頼む。中央が躍起になって探している殿下商会を我ら反乱軍が見つけ出す至難は理解しているが、それでも、我々はなんとしてでも殿下商会を見つけ出し、彼らと和解せねばならんのだ。シルヴィ曰く、非常識なまでに強いが情の無い相手ではないそうだ。もし見つけ出してくれれば俺が命を懸けて説得してみせる。だからどうか頼む、彼らを探し出してくれ」


 商人は各地を回っている先々でこうした激しい反応を見てきたのだろう。怒りに震える彼らの姿にも冷静に落ち着いた対応をしていた。

 大きく息を吐き、男は商人の胸倉から手を離す。


「悪かった。そうだな、アンタも好きでこんな話してるわけじゃないだろう。わかった、我々もできるだけのことはしよう」

「あー、うん、その必要はないんじゃないかな。話、聞くよ」


 できるだけ自然な感じで話に交じってみたレアであったが、当然密談をしていた四人の反応はそれはそれは大きなものであった。

 そりゃ見つかったら極刑間違いなしな反乱軍的密談の最中、見知らぬ人間がいつの間にか部屋の中にいたら誰だって驚く。


「なっ!? 何者!」

「貴様どこから!」

「人を呼べ! 絶対に逃がすなよ!」

「任せろ! すぐに……」


 即座に駆けだそうとした男は、レアが足を払って蹴倒した。


「私、殿下商会。話、あるんでしょ? 聞くよ。シルヴィからの話とか、もうすっごい聞く気満々だしっ」


 男たちの動きがぴたりと止まる。この話を持ってきた商人に向かってレアは続ける。


「いちおー確認。シルヴィに会ってるんなら、私の名前とか聞いてる?」

「いや、何故ここに来ているのか、何故イジョラで暴れているのかの理由がわからないから、名前が伝わってきていないのなら自分から言うことはできない、だそうだ。代わりに全員の外見的特徴を教わっている。……アンタは、その、こちらに悪意はないから誤解しないでほしいんだが、一番わかりやすい一人に見える、な」


 子供みたいなチビのくせにやたら胸のデカイ美少女。そんな相手がそうそういるはずもない。

 ソコでわかったというのは気に食わないが、シルヴィ絡みだというのなら我慢はしてやる、とレアは睨むだけで許してやる。

 交渉事だから、とレアは商人との一対一の会話を望み、これを叶え反乱軍の三人は席を外す。


「というか、そっちにシルヴィが居るんなら話は聞くし、腹が立ってもいきなり殺したりしない。何か希望があるんなら言ってくれれば、一応持ち帰りはする。返事は明日にはするよ」


 反乱軍側に和解の用意があることと、そのために反乱軍側に要望があるのなら交渉するつもりがあるという話をした後で、商人はとても気になっていることを聞いた。


「何故我らの居場所がバレたのだ?」

「ほら、店でシルヴィが反乱軍にいるって話してたから。びっくりして後つけたら私たちの話してたからつい」

「そんな意味の分からん理由で我々のアジトを見つけられたのか……」

「貴方、結構用心深かった。あれはいい。あれならそう簡単にはバレないと思うし、変な動きしてる人がいたらすぐ見つけられる。反乱軍も思ってたよりしっかりしてるね。北の反乱軍はそりゃもうヒドイもんだったのに」

「これは言い訳になるが……シルヴィのいる東部反乱軍と北部反乱軍とは完全に別の組織だ。その、いったいどうして連中と揉めたのか、聞いてもいいか? あちらから伝わってくる話は、当たり前だがアイツらから見た事件のあらましだけなんでな」

「んー、友達に手を出そうとしたから、かな。イジョラの貴族は基本敵だけど、だからって全部が全部敵ってわけじゃない。良い人は貴族でも良い人だよ」

「手を出してはいけない人物を、聞くわけにはいかんか」

「さすがに。そこまで不用心には、なれない。でもまあ、殿下商会を調べれば出てくる人はいると思うし、そこに手を出したら、うん、反乱軍だろうとイジョラ魔法兵団だろうと四大貴族だろうとおーさまだろうと、許す気にはなれないかな、うん」

「それを全部一緒くたにするアンタの神経を疑うよ……」

「ああ、でもそういえば反乱軍、四大貴族仕留めたんだって。あのアルトって王子、私たちも揉めてたからちょっと気分が良かった」

「我々が戦う前にコウヴォラで半殺しにしたって話、本当なのかあれ?」

「うん。ウチのタチとガラと性格と根性が悪いのが、道端でケンカ売られたとかいってた。普通、王族がふらふらと街中歩かないよね」

「普通売られたからと王族とケンカなぞせんものだがな……もし良ければ、残る三人とも話し合う場を設けてはもらえないか?」

「いいけど、あまりお勧めはしない」

「どうしてだ?」

「殿下商会、私以外はみーんな冷酷非情だから。一応、交渉事ならでんかは大丈夫だけど、残る二人は止めた方がいい。シルヴィ以外皆殺しとか平気で言う。ヒドイ悪党だ、まったくもう」


 レアはこの商人への親切のつもりでこんなことを言ってあげているのだが、誰がどう聞いてもただの脅しである。

 元より意に沿わぬ真似をするつもりのない商人は即座に撤退を決意した。

 後にこの出会いは、反乱軍での論功行賞において数多の勇士と並んで勲一等を与えられることとなるこの商人の、最も大きな勲功となるのである。



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