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fireworks ―花火―

 まずはもっとパーティー全体の戦力を底上げしなくてはならないだろう。

 そしてオーガの戦力の確認。

 後は、あの集落をどうやって攻めるかの戦略。


 私でもそれくらいは考える事ができた。

 どうすればいいのかは置いといて。


 まず、この村では、夜間は村民を村長の屋敷で匿っていると言うが、オーガが襲撃して来た時にどうやってみんなを守っているのか。


 村を囲っている塀は、ただ尖った木を埋めて縛っているだけの質素なもの。

 それに対し、村長宅の塀は分厚い石造り。

 これだけでまず、敷地内に入り込むオーガの数をある程度絞り込む事ができる。

 そして、村長宅も石造りで、扉や窓は鉄。夜は解放厳禁。

 ガードマン十数名はシロさんと同じくらいの手練れ。

 この人達も貸してくれるように頼んでみたが、屋敷の守りとして最低限の人数なので、貸し出す事はできないと言う。


 村の近くでレベリングした後、村長宅で泊まっていると、その夜、オーガの襲撃があった。

 松明に照らされたソレは、赤銅色の肌、四角いアゴ、額から角を生やした、2足歩行の身長2m程のマッチョだった。


 家の外に出て、ガードマンの手伝いをしてみた。


 村を襲いに来るオーガはいつも20匹程だと言う。


 村長宅の門にも鉄の扉が設置されているが、あえて1ヶ所、扉の中央に、更にオーガ1匹が屈んで通れるくらいの扉を開けていた。

 こうしなければ石塀のほうを壊されてしまうという。

 知性があると言っても、オーガキングの指令が無ければ結構バカのようで、まんまと1匹ずつ入ってきた所をガードマンにタコ殴りにされている。

 試しに私もやらせてもらうと、3発ほど殴ると始末する事ができた。


 問題は、キングの配下にある時の統率力と数なのだ。


 村を襲ったオーガ全て始末した後で、オーガ対策用の扉を閉めると、突然空が明るくなり、大きな音が鳴り響いた。


「・・・・・・え? 花火?」


 夜空に、色とりどりの大輪の花が咲いていた。

 キラキラと輝く光と、お腹の底まで響く爆発音。

 ―――そう、爆発音。


「ああ、キャサリン殿が来ているらしい」


 呟いたヨルマの胸倉を掴む。

 ヨルマが目を瞑って唇を尖らせて顔を寄せてきたので殴ったら、ヨルマのHPが残り1割程度になった。


「この国、火薬があるの?」


 だとすると、戦略は変わる。

 銃、大砲、戦車。この国には今どの程度の戦力があるのだろう。


「く、クレリック様、その、花火の材料は、現在王都のドワーフ組合が占有しておりまして、キャサリン殿の許可が無ければ使えなく、また、花火以外の事に使った者には災いが及ぶ、むしろ及ばせてやる、と、あのキャサリン殿が言っている品物でございます」


 ならば、王都のドワーフ組合とやらに行かねばならないだろう。

 多分、火薬があればもっとすんごい武器とか作れるはずだ。

 でも残念ながら、私にはその知識は無い。

 何も考えずに文明の利器の恩恵にあずかる一方だったのだ。


 でも、バカにしたもんじゃない。

 少女漫画しか読んだことが無い私だけど、少女漫画にもハードボイルド路線はあるのだ。

 その大抵が男同士で愛し合う感じだけれども。



 早速王都に向かい、ドワーフ組合へと案内してもらった。

 既にキャサリンは元の世界へと帰った後だ。


 キャサリンは確かに恐れられていたが、所詮男。私の敵では無い。しかも私は『女』の『クレリック』なのだ。あ、後なんか、『勇者』でもあるらしい。

 馬車を仕立てさせ、1日で王都に着き、ドワーフ協会に行って宣言した。


「私は神によってこの地に召喚された勇者。そしてクレリックである! キャサリンは男であり、決してこの国の神の加護を得る事は出来ない、キャサリンの言っていた『災い』は全て私の力で食い止めて見せよう!」と。


 それだけの価値はある。

 いや、どうせ『災い』とか、ブラフだろうしね。



 メリット:ドワーフ組合を味方にできたら、火薬を自由に使えるようになる。これさえあればオーガの集落は落とせる。また、今後、火薬を使った武器なども色々と開発される事になるだろう。


 デメリット:同郷の、しかも知識も経験も豊富そうな人を敵に回す(だが、最初からあの人は味方かどうか怪しい)。でも、敵の手にも渡っちゃったらちょっと困る。



 そもそも、この世界に向こうの兵器を持ち込みたくないのであれば、それを徹底するべきだ。

 花火が見たいの~! とか言ったそうだが、どんだけ脳内お花畑なんだって話だ。

 私の目的は、とりあえずオーガを滅ぼし、シロさんを我が物・・・・・・じゃなくて、魔王を倒して元の世界に戻る事だ。


 案の定、キャサリンは向こうから材料を持ち込むのではなく、こちらで材料から作らせていた。

 私は、ある指示をドワーフに出し、王都に泊まり、レベリングしながらそれが完成するのを待った。

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