三匹の亡者
「じゃ、適当に探してきます」
そういって駆けて行ったキサラギは数分後、三匹の亡者を連れてきた。
「彷徨う亡者三銃士を連れてきました」
「……2匹でいいんだけど」
「まあまあ、ちょうどタイプの違う子がいたんで紹介させてくださいよ」
不服そうなロシュカを尻目にキサラギは引き連れた異形の説明を始める。
「この子はスピンちゃん」
残像しか見えない亡者は高速で反復横とびを披露する。
「シュビィイイイイイン!!」
スピンが高速で移動するたび一帯に暴風が巻き起こる。
「お姉さま!! どうですか!?」
「なんだって? もう、うっとおしい!! コイツに距離を取るように言ってくれ!! 」
振り乱れる髪を整えるロシュカの頼みが通じるとキサラギはスピンを遠くに移動するように命じる。
「サラ。どう見ても今の奴は屋内だと邪魔だよね」
「そうですね……。ま、まだ次の子がいるんで安心してください。この子はマシバルちゃん」
「グルガガァ!!」
マシバルと呼ばれる亡者ははち切れんばかりの筋肉をここぞとばかりに見せつけ、雄々しい咆哮とともにロシュカに密着する。
「頼りになりそうだが……なんでこんなに距離が近いんだ」
「うふふ、お姉さま気に入られてますね。まあ、その子は極度に甘えん坊さんみたいですが」
「うん……暑苦しい。単純に不快……」
最後にやる気のない死んだ目をした亡者を親指で指す。
「最後にバランサ」
バランサと呼ばれる異形は軽く頭を下げる。
「……こんちゃ」
ロシュカは目を丸くする。
「おい、今こいつ喋ったぞ」
しかしキサラギの耳は届いていない。
「どうですか!素晴らしい子達でしょう。キサラギちゃん選りすぐりのメンバーです」
「だから、今コイツ喋ったって」
「……? お姉さま、何言ってるんですか? 喋るレディちゃんなんてキサラギちゃんとキャラが被るじゃないですか。……ねぇ?」
キサラギはバランサと呼ばれる亡者へ視線を送る。その表情は口角は上がり微笑んでいるが目は笑ってない。
「ふあああ……。あ、グギ……グギギ……」
「ほら」とキサラギは亡者が話せないことを証明する。
「……欠伸してたよ。今」
「お姉さまは細かいことを気にしすぎです。ほら、キサラギちゃんという存在を目の前にしたら、世の中なんて、結構なんでもありなんだなって思いませんか?」
「あ、それ自分で言っちゃうのね」
「ふふん。さあ、この子たちを引き連れて行ってください。私はここで見張ってますからー」
「そうだな……」とロシュカは少し悩んでから
「まあ……マシバルとバランサだけつれてくよ」
と一言。
残像で詳しい様子は分からないが、キサラギ曰くスピンは落ち込んでいるらしい。
「じゃ、いってくるから。見張り頼んだぞ」
とロシュカはマシバルとバランサを率いて鉄格子の向こう階段の暗闇の奥へと消えていった。
「シュビィ……」
戦力外通告を受けたスピンの回転率が落ちるその様子を見てキサラギは
「まあまあ。落ち込むなや。つーかこれからっしょ」
サラはスピンの胴体に手を回すが、
バシバシっと骨を打つような鈍い音が響きわたる。
「あだだだだ!! 慰めてあげてるぐらい止まりなさーい!!」