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女王に案内された厨房は意外と綺麗だった。
「ここが厨房だ。我ともう一人だけしか使わないが、意外と揃っておるだろ?」
「これならできそうです。あれならすぐにできるかな・・・。」
膨らすベーキングパウダーがわからないので、一番好きなクレープを作ることにした。
「牛乳と生クリームと・・・。卵と果物はありますか?」
「最初に挙げたのはあるが、果物がないが・・・。取りに行かせよう。」
「いいんですか?」
「あぁ。おいしいものに妥協はダメだからな。」
やはり同志は同じ考えだった。
近くにいた衛兵に果物を取ってくるように伝え、再びリュシオルの手元を見ることにした。
「では、生地から作っていきますね。その間にルーチェ、生クリームを混ぜといて」
ルーチェに生クリームを頼み自分は作業に取り掛かる。
手際よく材料を混ぜて、軽く温めたフライパンに薄く生地を焼いていく。
「ほぅ。そんなに薄くて大丈夫なのか?」
「これがクレープですよ。」
「なぜ薄くするのだ?食べごたえがないぞ?」
「まぁ見ててください。」
女王を諌めて、続きに取り掛かる。
どんどん生地を焼いていき山のように積み上げていく。
「ルーチェ。出来た?」
「こんな感じでいいんですか。」
生クリームをしてもらっていたのを見ると固く仕上がっていい感じだった。
砂糖を加えて甘く仕上げていく。
「ありがとう。そろそろ果物が届きますか?」
「もうそろそろだと思う。」
「では、もう一つのほうを作りますね。」
作り始めたのはミルクレープ。
スポンジを作っていないので、クレープだけで作っていく。
何枚のもクレープ生地を重ねていきケーキに仕上げた。
「そんな応用もあるのだな。そちはすごいな。」
「いえ。私の母がすごいのですよ。もう会えませんが・・・。」
「すまぬ。いらぬことを聞いたな。」
「いえ。お気になさらず。」
黙々と作っていき、3つ目が出来上がった時に果物が届いた。
〖女王様これでいいでしょうか?女王様の好きな果物も取ってきました。〗
〖ご苦労だった。〗これでよいか?」
「はい。女王様の好きな果物はどれですか?」
「我の好きなのはこれだ。」
女王が指差したのは桃に似ている果物だった。
「これですね。これの名前は?」
「ピチっと言っての?とてもみずみずしくて美味しいのだ。」
リュシオルはピチを手に取り、手際よく皮を剥きカットしていく。
生地に生クリームをのせクルクルと巻き、先に出してあった紙に包んで女王に差し出す。
「これがクレープです。どうぞご賞味あれ。」
「ふむ、これがクレープ・・・。手で持って食べることができるのだな?」
「それが基本ですね。では、食べている間にもう一つ。」
まず、オレンジに似た果物を剥き、果実を絞る、皮も表面だけ少し削り細かく切っておく。
次に絞った汁と皮、砂糖を一緒にフライパンに入れ、加熱する。
そのあとクレープの生地を入れて煮詰め、リキュールがあったのでフランベする。
皿に綺麗に折りたたんでのせて、トッピング。
「そちらは食べ終わりましたか?」
「あぁ。美味しかった。これはいいな。」
「ご満足いただけたようで、続いてこちらもどうぞ。」
さっき作った高級仕様のクレープを出す。
「これはナイフとフォークでお食べください。」
「これもうまそうだ・・・。はむ・・・。うまい!」
はぐはぐと美味しそうに食べる女王。
「ご満足いただけたようで。」
一瞬で食べきった女王は満足そうに振り返った。
「これは申し分ない取引だな。よかろう!蜂蜜を分けてやる。」
「ありがとうございます。こちらにまたおやつでも食べれるように冷やしておいてください。食べる時に果物を添えたりして食べていただければ。」
「うむ。礼を言うぞ。」
「また新しい甘味を用意しますね。」
「!!!!!それはぜひお願いしたい!あぁ・・・我の名は、ラフィネ。ラフィネ・ビーだ。」
「先ほど名乗りましたが、リュシオルです。今後とも付き合いよろしくお願いします。」
「私はリュシオル様の奴隷のルーチェです。」
握手を交わし、これからの付き合いを約束した。
帰り際には蜂蜜を大量に貰い、巣を後にした。
「いい人?いい蜂でしたね。」
「そうだな。でも人族の言葉をしゃべれるまでしたあの人はすごいと思う。」
「私もびっくりしましたよ。話なんて通じないって思っていたのに、普通に人族の言葉を話されていたので。」
「最初に会ったときは蜂の姿だったんだよ?」
「やっぱり元は蜂だったんですね。変化が出来るようになったというわけですね。でも、あの蜂は魔族なのでは?」
ルーチェは知らなかったみたいなので、女王に聞いた話をそのまま伝える。
「へぇ~アピス族っていう種族だったんですね。」
「だから、間違われて討伐されることが多いらしい。俺たちも気を付けないとな?」
「今度、アピス族の方に見分け方を教えてもらったほうがいいですね。」
「新しい甘味が出来るようになったら教えてもらいに行くか・・・。」
森からゆっくり王都に向かい、宿に帰って行った。
蜂蜜ゲットです!




