~58~
学院内に入り、試験会場と書かれた紙が張ってある講堂に入ると、まだ早いというのに、そこそこ人がいた。
講堂は大きく、段々になっている為見やすい構造だ。
前のステージにはマイクが設置されている。
ステージの横にはドアが付いていてそこからでも出れるようだった。
「結構来ていますね。」
「そうだな。やはり、遅れないように早く来る人も多いんだな。」
講堂内を見渡すと、固まっているのではなく個人で来ている様で一人ぼっちが多い。
「これは地方から来た人たちかもしれないな。王都組はまだ来ていないってとこだな。」
「あ!なるほど。遠くから来ているから早いんですね?じゃあ王都に着いたのは朝早くってことですね?」
「そういうことだ。まぁ~まだ試験まで時間はあるし、本でも読んで時間を潰すか?まだルーチェも読めていないのがあるだろ?」
「はい。途中のがありますので、それを出して読みます。」
リュシオルも続きの本があるので、空いている席に座り、時間を潰しに読み始めた。
読みふけっていると、そろそろ時間が近づいてきたのか講堂がガヤガヤしてきた。
「そろそろかな。本を仕舞って待つか・・・。」
「そうですね。ステージに人がうろうろし始めましたしそろそろでしょう。」
それからまもなく、試験説明が行われた。
司会の男の人によると、この試験は学生カードに魔力登録するためでもあるとのこと。
この学生カードが魔力を食うようで、魔力が足りなければ学生登録できないらしい。
特に王都のはエリート用らしく、地方でいけるだろうと言われてきてもその年によって少し変わるらしく、去年なら出来たが今年は足りないという事態が起こるんだとか。
毎年少し揉めるそうだが、出来ないものは学生として認められないので帰ってもらうとのこと。
来年にチャレンジも一応出来るらしいが、ほとんどいないらしく地方の学校に入るそうだ。
「学生カードが多分魔石で出来ているんだと思う。ただ特殊加工で出来ているから俺には作れないかな?」
「なるほど。魔石に魔力を貯める原理を使っているということですね。」
「じゃあ、カードは黒から金?まであるんじゃないかな?」
色々な予想をしていると、ステージにいる人が入れ替わった。
「皆さん!王都学院へようこそ!我が学院で学び、ぜひとも世界に羽ばたいていって欲しい。そして今回の学生に王族の方が2名兄弟でご入学される。だが、身分は関係なく皆が同じ立場で学ぶところであるため、貴族・王族の権力を使わないように。他に学院トーナメントなどが開催されるので優秀な成績の者に褒美を与えることとなっている。奮って参加して欲しい。では最後に、皆学院生活を楽しんでくれ。」
挨拶したのは学院長でエルフだった。
綺麗な緑の長い髪をして目も緑。
言葉は厳格に喋っていたが、綺麗な透き通った声で講堂を満たしていた。
「綺麗な女の人でしたね。」
「エルフの学院長だな。魔法に関して多く学べそうだ。これからが余計に楽しみになってきた。」
ここでエルフを見れるとは思わなかった。
ファンタジーだからいそうだと思っていたが、隠れ里とかに引き篭っていて見れないだろうなと。
『あの学院長・・・。俺を見ていた?でもなんで?』
前半喋っている間は周りを見渡していたが、後半はリュシオルのほうに視線を向けて喋っていた。
「試験が始まるみたいですね。順番は・・・。私達の番号は150と151です。」
「後ろの方だったな。時間が長そうだ・・・。」
放送で番号を呼ばれるみたいなので、周りから少し喋り声が聞こえ始めたためルーチェと他愛もない話をしていると・・・
「隣いいかい?俺一人寂しくて話しかける相手が見つからなかったから声かけたんだけど。」
「ん?ひとり?周りに一人ばっかりだと思っていたけど・・・。」
「あぁ~朝早く着たんだな?ここに来るのは地方から推薦してもらってくるから、2~5人かづつになるんだけど、俺のとこは俺一人だけだったからさ。」
「そうなんだ。あ・・・だから俺達も2人なんだ。」
「そうみたいですねリュシオル様。」
推薦されてくる人が王都に来れるみたいだった。
王族・貴族は王都学院の試験資格が無条件であるみたいだが。
「え・・・その子もしかして奴隷?ってことは冒険者でやってきたってこと?なら・・・Bランク?」
「まぁそうなるな。俺もその口だ。」
「ふぇ~じゃあお前ら凄いんだな。おっと忘れてた。俺の名前はリンブルって言うんだ。
「俺はリュシオルでこっちがルーチェだ。」
「リューにルーチェちゃんね?覚えたよ。おっと・・・。俺の順番が回ってきたみたいだ。お互い無事合格できるといいな。」
「そうだな。健闘を祈るよ。」
「ありがとう!行ってくる!」
リンブルは走って、ステージ横のドアから出て行った。
「いい奴そうだったな。」
「合格できるといいですね。」
一人また一人と講堂から人がいなくなり、人がいなくなってきた。
そろそろ順番が回ってくるというときに、後ろのドアが開いた。
「試験順番は最後の方でしたわね?お兄様。」
「そうだよ。あれ?まだ人が残っている・・・。」
リュシオル達を見つけ、兄妹はびっくりしていた。
「私どもが説明を受けたものの最後でございます。」
社長出勤のこの兄妹は王族だろうと、立ち上がり、丁寧なお辞儀と言葉で返した。
「そうか。私たちのことは気にしないでくれ。」
兄の方から言われた後、ルーチェとリュシオルの順番が回ってきた。
徐々に登場ですね^^




