~53~
ギルドマスターに呼び止められて、椅子に座りなおす。
「で、話とは?」
「お前達って、15歳だろ?」
「そうですね。そうなります。」
「なら行かないといけないな。」
急にどこかに行かないといけない宣言。
「へ?今依頼が終わったとこですけど、どこかに行かないといけないんですか?」
「違う違うそっちじゃなくて、学院だよ。王都学院。」
「が・・・学校ですか?」
「年齢が15歳になったらどこかに通うだよ。」
この国では15歳から18歳の3年間、平民以上は国の指定されている学院に通わなければならない。
ちょうど、15歳であるリュシオル達も通うこととなる。
「平民以上ってことはルーチェは?」
「それが、Bランク以上だと平民以下でも通えることになってるんだ。だから、頑張るの子も多いんだぜ?」
「まぁ、いい制度ですけど。子供の死亡率が高そうだな。」
「それは・・・な?でも、それがあるおかげで希望を持てる子が多いんだ。だから、それを止めることは出来ないのが現状さ。」
希望を持てないより持てるほうがいいということであろう。
「じゃあ、俺達が通うのは王都の学院ってこと?」
「お前達の実力なら王都じゃないと絶対無理だ。それに俺の知り合いが王都の学院で働いているから紹介状を書くから大丈夫さ。」
「試験とか無いのか?」
「試験は魔力審査だけだ。勉強はまだ習っていないわけだから何もしなくても大丈夫だ。ただ、魔力が高くないと入れないんだ。その点についてはクリアしているだろ?」
魔力についてはまったく2人とも問題ないため無事にいけそうだ。
「はぁ~わかりました。で、いつ行けばいいんですか?」
「それが1週間後に試験がある。」
「「はぁ?!」」
「言いそびれちまってさ~。今からでもお前らなら間に合うんじゃないの?」
「ここから王都までは?」
「ん~普通馬車なら10日ぐらい?歩いたら20日ぐらいかな?」
「「間に合うわけ無いじゃない(か)」」
言いそびれるもここまでくれば酷いものである。
「どうしましょうリュシオル様・・・。」
「なにか考えないとな・・・。」
急にドアがノックされた。
中に入ってくるのはお茶を用意してギルドカードを処理しに出て行ったクロワである。
「話は終わりましたか?学院はいつから試験だったんですか?」
ことは知っていたが、試験日は知らなかったようだ。
「マスターによると7日後だってさ。」
「はぁ?!マスターどういうことですか?!」
鬼の形相をしたクロワがマスターに迫っていった。
「い・・いや・・・わ・・・わす・・・忘れてたわけじゃないんだ。今度会ったら言おうと思ってたんだが時間が無くてな・・・。」
「言い訳はいいです。ちょっとそこに正座していなさい。」
クロワに指差されていたのはマットの敷いていない板の床だった。
「はぁ~。リュシオル君ごめんなさい。この馬鹿マスターのせいで試験が・・・。」
クロワは謝ろうとしたが、いいことを思いついたリュシオル。
「謝らなくていいですよ。何とかなりそうです。」
「え?普通じゃ間に合わないわよ?」
「普通ならね?だけど、空を飛べたらどうですか?」
どんな方法か分からないが、リュシオルは空を飛んで王都に向かおうというのだ。
「ドラゴンを捕まえてきてでもして行くの?」
「いえ、魔法で飛んでいこうかと。」
「そんな魔法なんて聞いたことないわ・・・。」
「だって今作りましたもん。」
「「「・・・・・。」」」
やはり規格外だった。
「じゃあどんな風に飛ぶのですか?」
沈黙を破ったのはルーチェ。
1番耐性があるため回復が早かった。
「あぁ。普通に飛んだのなら面白くないから、こうやって・・・ほら?これなら不自然じゃないだろ?」
やって見せたのは、創造魔法で本物そっくりの羽根(ほぼ本物で、落ちた羽根も残る仕様である。)を一対背中に生やして、ばっさばっさとはためかして飛んでいる。
ばっさばさしているが、風はなく、魔法で飛んでいるとそこで分かるぐらいである。
「綺麗です・・・。本物の天使みたいですね。」
「それなら間に合いそうだな・・・。魔力量は問題ないのか?」
「まったく問題ないですね。ルーチェの分を展開しても問題ないです。」
魔法を一旦切り、会話に戻った。
「じゃあ、すぐのでも出発した方がいいぞ?」
「分かってますって!だけど、場所を知らないので地図を出して方向を教えてください!」
「あ・・ああ。すまん。クロワ頼む。」
「分かりました。マスターはそのまま正座続行ですよ?」
クロワはマスターの罰の継続を言いつけ、走って地図を取りに行った。
「クロワを怒らすと怖いんだ・・・。」
「なら何故怒らしたんですか・・・。」
「・・・・。」
「気をつけたほうがいいですよ?情報はしっかり伝えなきゃ。」
「そうだな・・・。」
マスターと喋っていると、すぐに戻ってきた。
「お待たせしました。これが世界地図です。最新版なので今までより詳しいですが、まだ埋まっていないとこもあるんです。」
「そうなんですね。まだ未開の地が・・・。」
学校を卒業した後、目指してみるのも悪くないなと心の片隅に残しておくことにした。
「ここがマルテの町で、ここが王都です。」
中々離れたところに書いてあった。
とりあえず、地図をスキャンして記録した。
ご飯食べに行ってたら、ギリギリでした・・・。
ついにですね!!




