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「そんな無償なわけあるか!!」
大きな声が奥から響いてきた。
声のするほうに行くと、親方らしき人にトーンが追い詰められていた。
「信じてください親方!ホントにやり方を教えてくれて、僕に道を示してくれたんです!それに今日来てくれるって!」
「この世界にいい人なんて滅多にいるか!ペテンでも教えられてんじゃないか?!」
凄い剣幕で言い争いをしていて入りづらかったが、意を決して入っていくことにする。
「あの~今の話に出ていたものなんですけど・・・。」
恐る恐る近づいて行くと、親方に凄く睨まれた。
「なんだ!!お前は誰だ?!」
「今の話に出ていた者です。トーンに昨日教えて、詳しく話をしようと思って・・・。」
「よく見れば英雄様じゃないか・・・。どうしてうちの者に何か教えたんだ?」
親方はリュシオルを昨日見たのか気づき、そして、トーンに何を教えたのか問いかけた。
「昨日たまたま露天を開いているトーンに出会ったんです。そして、あまりに精巧で繊細な物を作ってるので話を聞いてみたところ、こっちの才能があるようなので、前に考えていた物をトーンに作ってもらえればいいなと感じて教えたんです。俺ではそんないいものなんて作れませんから。」
「確かにコイツの防具作りはまるで成長しないからどうしようかと考えていたんだが、彫金なんかはここいらでも一番の綺麗さだ。だが、こいつは防具を習いにきたのに違うことをすると言ってきた。つまりはどうなるか分かるよな?」
「たぶんですが、工房での破門ですかね?」
「兄ちゃんは察しがいいな。でもよ、こいつは命を守っているには違いないし、防具の勉強も続けたいといってきた。どうしたらいいもんか考えながら怒ってるから話が俺の中でも纏まらなくって困ってたところだったんだ。」
「親方・・・。」
リュシオルが会話に入ることによって親方の怒りも収まったようで冷静に話が出来た。
そして、トーンのこともよく考えていることが分かり、トーンは感動していたのだった。
「確かに向き不向きはあると思います。トーンは防具を作るのが下手で彫金・細工は上手・・・。なら発想の転換ですね。」
「どうゆうことだ?」
「型にはまったがっちりとした防具ではなく、防御も考えたデザインの防具を作ればいいんですよ。それか、仕事を分けてみるのもいいですね。」
地球で見たテレビとかの知識があったため提案してみた。
伝統工芸とかは何人かの手を介して作られているのを見たことがあった意見出来た。
「はぁ?!どういうことか分からんのだが?!」
あまりに簡潔に話したので解ってもらえなかったのでさらに説明する。
「ここに来るまでさっと見ただけと、話を聞くにここはフルプレートアーマーを作ることが多いですよね?ガッチガチに固めた感じの。」
「そうだな。騎士団にはフルで冒険者に売るのも胴体だけとかあったりするな。」
「細かい仕事は作り終わってからで、作っているときは大きい物を扱う。多分ですが、トーンは大きなものの形成が苦手なんですよ。体全体で作ることが苦手ってことですね。トーンは手元のしか集中できないんですよ。」
「な・・・そんなことも分かるのか・・・。その通りだと思う。確かに体全体を使ってするのが不得意だな。」
「そういうことです。なので作らすのであれば、部分的なものを作らすとちょうど視線も手元に集まるでしょ?」
トーンが何故出来ないかのことも見極めていたため話もスムーズに通せた。
親方も心当たりがあるのか、リュシオルの話に納得する。
「これは申し訳なかった。こんなことは親方である俺がしっかり見て導かないといけないことだったのに他人に指摘されてしまうなんて情けない。」
「そんなこと無いですよ。第三者の視点で見ないと分からないこととかもありますし。」
「そういってくれると助かる。ありがとう。」
「いいえどういたしまして。そして、話が決着して早速ですけど商談をしてもいいですか?」
「いきなりだな・・・。でもかまわねぇ。なんだ?」
話の決着がつき、もう明日に帰るので、さっさと話を進めてしまおうとすぐに本題に入ることにした。
「魔道具アクセサリーについて話し合いたいと思っています。」
「英雄様が作ったっていうやつかい?見たこと無いものは信じないって信念でな。見せてもらわないと話は進まないぜ。」
「まずは見てもらいましょうか。」
昨日トーンに見せた件をもう一回することとなった。
見せていくと親方の顔は驚きから、険しい顔に変わっていった。
「これは凄い技術だ。だれもこんな屑魔石にこんなことが出来るとも考えていなかった。大きいのは純度がいいから加工し、使うことが出来るけど、屑魔石にはまったくに近いほどの魔力しか入っていない。逆にそこに目をつけるとは・・・。」
「一回きりとかになってしまうんですけど、うまく活用すれば・・・。」
「言いたいことは分かる。これなら助かる命が増えるな。」
「はい。そこで目に留まったのがトーンなんです。」
話はどんどん進み、契約が交わされた。
やっぱり終わりませんでした^^;
そしてリュシオル契約してるし・・!
恐ろしい子っ!w




