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一方、リュシオルは邪神との最後の決着となりそうだった。
両方とも満身創痍で向き合っていた。
「せっかくKが用意した魔獣たちも数を減らされてしまったみたいだね。それに僕たちの決着も。」
「そうだな。もう何日戦ったか分からないぐらいだ。だが、これで決着がつくのは分かる。たとえ察し違えてもお前は倒す!」
血まみれになりながら刀を構え、聖魔法を刀に込めていくとバルトから声がかかった。
「(主様。僕は壊れてもいいから最大の魔力を込めて欲しい。これで確実に仕留めないと。)」
「バルト・・・。分かった。お前の覚悟受け取った。」
さらに聖魔法を注ぎ込み、刀が光る程になった。
刀身は少し悲鳴を上げているようだった。
「大丈夫か?!」
「(う・・・食べすぎた感じになってるだけで大丈夫。それより早く・・・。)」
すぐに意識を邪神に戻すと、目を瞑って集中しながら手に禍々しい剣を形成していた。
「こっちも最大で相手するよ。これで最後だよ。」
にらみ合った2人は微動だにせず、合図を待っていた。
すると、風が吹くと葉が一枚、にらみ合っている中央に落ちてきた。
落ち切った瞬間が合図となり、両者駆け出した。
「おぉぉぉぉぉ!!!」
「くらえぇぇぇぇぇ!!!」
勝負は一瞬だった。
「はっ!これで僕の時代が・・・がはっ!な・・・んで?」
「ごふっ・・・相打ち・・・いや俺の勝ちだな。」
邪神の心臓部にはバルトが刺さっていた。
そして、リュシオルのお腹にも邪神の作った黒い剣が刺さっている。
「強がりを言うね。君は死ぬのになぜ勝ちなのさ?」
「これは戦争だ。俺は兵士だが、お前はどうだ?総大将だろ?トップだろ?ならそいつを倒した俺たちの勝ち。」
立って居れず、崩れるようにリュシオルは膝をついたが、邪神は後ろにゆっくり倒れていった。
「はは・・・この体から出れないや・・・。」
「そうだな。お前をその体から出られないようにし、生命として殺した。だからもう復活もかなわない。」
「はぁ・・・それはやられた・・・。」
Kの体から出て逃れようとしたようだが、リュシオルがそうするだろうと予想し、未然に防いでいた。
そして、倒れた邪神・・・Kの体は指先と足先から光の粒子になっていっていた。
「僕・・・消滅するのか・・・。なんだろう・・・心が暖かい?」
消えかかっている邪神だがその顔はなぜか安堵を浮かべていた。
「まぁ・・・なんだ・・・俺もすぐ追いかけることになるだろうから、先に行って待ってろ。一緒に行ってやる。」
「そうだね。その傷は治らないようにしたから君も死ぬんだ・・・。じゃあ寂しくないね・・・。先に行って君を待ってるよ。」
もう、邪神は頭を残すのみとなっていた。
そして最後の言葉を言った後、口から徐々に消えていき、最後は何も残らなかった。
「俺はもう一仕事してからだな。」
リュシオルは回復魔法を患部に掛け続け、重い体を起こした。




