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「あははは!!!」
邪神は大きな笑い声を上げながら、リュシオルに向かって攻撃を繰り出す。
まるで組手のように素手で殴りかかってくるのだが、その一撃一撃が重く、武器で斬りかかってもうまく躱されてしまう。
「やめてくれよ?この体はまだ強化できていないんだから。普通の生身だよ?」
少し切り傷を作りながら、邪神は諌めてきた。
しかし、邪神の拳を見ると、ボキボキに折れていた。
「あぁ~。そう言ってる自分が力加減間違えちゃった。」
そう言い、あらぬ方向に曲がった手を元の位置に嫌な音をさせながら戻した。
すると、戻した手に黒い霧を纏わせたかと思うと元に戻った。
「これで手は大丈夫!さぁ!続き続き!」
手を治した後、すぐにまた死合いが始まった。
殺せないリュシオル、殺しに来ている邪神。
今は力が均衡しているが・・・。
徐々にリュシオルが押され始めていた。
「あれあれ?どうしたの?疲れたの?」
「そんなことない!」
「それでも・・・それ!」
闇の魔力を纏わせた刃をリュシオルに向けると、避け切れず食らってしまう。
「ぐはっ・・・!」
「もう・・・。ちゃんと避けなきゃ~。」
左の肩に攻撃を受けてしまい、血を流すリュシオル。
「ガルディ・・・。」
「(申し訳ありません。防いだのですが、相手の方の攻撃が強く・・・。防ぎきれず・・・。)」
「そうか・・・。このままでは・・・。」
そう。
この時、すでに3日経っていた。
体は丈夫であるが、人間で生きている肉体である。
徐々に疲れが出てきてしまっていた。
「(主様・・・。)」
「もうこれしかないんだ・・・。」
「(でも、それを飲み込んだら・・・。)」
リュシオルの手に小指の程のクリスタルが握られていたのだった。




