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「これは・・・。」
ヴァイスに言われた後、ルーチェが戦っていた場所の近くまでたどり着いたようだった。
近づく前に行進してきている魔獣の群れに出会ってしまった。
涙を流す暇もなく、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
「これは街に一気に押し寄せたら人は蹂躙されるだけですね。」
「そうだな。人では無理な数だ。」
そう、群れは群れでも、大陸を全部覆いつくしているのではないかと思うぐらい埋め尽くされている。
「リュシオル様はこの先の方に用があるのですね?」
ヴァイスは目を細め、リュシオルを見透かすように告げた。
リュシオルは黙ってうなずいた。
「私と誰が残ってくださいますか?」
ヴァイスは召喚獣達の顔を見ながら問いかけた。
「この数ならほぼみんな残らないと無理ですわね。」
「アルシュお前だけ主様について行ってくれ。」
「僕たちはここで暴れちゃうよ~!」
ヴァイスが声をかける前に他の皆はやる気満々だった。
「みんな・・・。」
「早く行くのだ。」
ノワールに急かされて魔獣が押し寄せる波の奥に視線をやり、ため息を一つついた。
「ここは任せた。」
「「「「「任されました。」」」」」
そう言うと、ノワール・グルナ・アンブル・ジェイド・ヴァイスは魔物の波に突っ込んでいった。
それを見つつ、さらに奥に向かって飛びだした。
「ぐわ!」
「かはっ!」
しばらく進んだ所で、何かの力によって地面にたたき下ろされてしまった。
「ここから先は行かせないぞ?」
「そうね~。ここから先は私たちが邪魔させてもらうわ~。」
現れたのは学園襲撃を仕掛け来た、改造された鬼とサキュバスであった。
「ここは私が残ります。先へお進みください。」
「アルシュ?さすがに2対1は・・・。」
「これぐらいなら私が本気を出せば問題ないかと。なので、お行きください。」
人型になり、リュシオルを先に進ませようとする。
「舐めた真似しやがる。1人で2人相手するなんてよ。」
「そうですわ~。でもいい男だし、捕まえたら私に頂戴?」
「はっ!だとよ!」
「なおさら捕まるわけにはいかないですし、ここで私一人で相手が決定ですね。さぁ!早く!」
リュシオルを急かし、先を急がせた。




