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で、訪れたのがギルド室である。
「話は分かったが、ここからどうしろと?それに俺はここのギルマスだぞ?」
「そこは、何とかなるでしょ?クロワさん?」
そう、訪れていたのは王都のギルドではなく、マルテの町のギルドであった。
当てにしていたのは、ギルドのマスターのニキティスである。
長い間登場していなかったが、ギルドでの信頼が高い人物だと判断した。
「あなたなら冒険者をまとめることが出来る。そうでしょ?」
「そうですね~。元S級冒険者で英雄のあなたなら引っ張ることが出来るわね。」
お茶と共にクロワが現れた。
「俺じゃなくても、ネレの方が強いじゃないか!」
「ネレって?」
「愛称だよ。王都のギルドマスターだ。」
なんと、愛称で呼ぶほどであった。
不思議に思っていると、クロワから補助が入った。
「昔ね?この人とネレさんはチームを組んだことがあって、名を轟かせていたのよ?それで、いつの間にか英雄って呼ばれたりするようになって・・・。」
「隠居したってわけだ。」
「身体が動かなくなって来たって言うのもあるがな。そうじゃなくて、後継者ってわけじゃないが、優秀な冒険者を育てようとしているわけだ。」
中々深い話だった。
自分だけではだめだと思ったのだろう・・・。
「でもここは重い腰を上げないといけないようですよ?」
「そうだよな・・・。」
頭を抱えながら項垂れた。
「男だったらシャキッとしなさい!救われるべき人の命を守らないで、何がギルドマスター?!」
「そうだが・・・。」
「ここのことは私が何とかします。気兼ねなく行きなさい。」
「いいのか?」
「家のことは女に任せて、男は外で頑張るのよ。」
背中を押したのは、クロワであった。
「そこまで言われて出来ないのは男じゃないな。分かった。すぐに用意する。」
ギルド室から走っていき、準備をしに行ったようだった。
「色々なことが肩に乗ってきているから中々動けないのよ。だからそこは誰かが背中を押してあげないといけないわけ。」
「クロワさんも大変ですね?」
「でも、これでもこのギルドをしている一員だから、これぐらいしないと。」
にっこりとしながら、お茶を飲んでいるともう帰ってきた。
「さあ、行こうか。」
「早いですね~。」
「なに。いつでも出れるように装備は常に傍に置いてある。」
その答えに頷き、転移で王都の城の門前に転移してきた。
するとすぐに兵士が走ってきた。
「シャドーブラック様!大変です!」
「どうした?」
「シャイン様が・・・。存在が薄くなっています。」
ルーチェの召喚獣であるシャインが消えかかっているという。
「ブラック・・・。大変だぞ・・・・。」
「どういうことですか・・・?召喚獣の存在が消えるって・・・。」
「召喚主の命が尽きようとしていることになる・・・。」
「え・・・。」
リュシオルは一瞬目の前が真っ暗になって崩れてしまった。
「大丈夫か?!それより、早く行った方がいい!」
「あ・・・・あぁ・・・・。」
「っち!場所はどこだ?!」
「こちらです!」
動かなくなってしまったリュシオルを肩に抱えて、兵士の案内で走り始めた。




