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「それでは、代表者2名と対戦ですね。」
「第1隊長と第2隊長がこちらから出る。そちらはその2匹か?」
じろりと睨みながら第1隊長が憎々しげに言ってきた。
「そうですね。この状態では戦いにくいですか?」
「こちらは対人戦を望んでいたのだが、まさか獣と戦わされるとはな!」
嘲笑い兵士全員が笑った。
「言わせておけばですね。」
「やっちゃうよ~!」
アルシュとジェイドは自分たちが馬鹿にされるのはいいが、リュシオルが馬鹿にされたと思い激しく怒りを露わにした。
「喋る獣とは珍しいが、我が隊長の召喚獣も喋れるから問題ないな。」
「そうだ!喋るぐらいの獣を護衛につけようとしているシャドーブラックは馬鹿じゃないのか?」
その言葉を聞いたアルシュとジェイドはブチキレてしまった。
「半殺しでも構いませんか?」
「9割殺しでいいよね?生きていたら何とかなるし。」
「2人共・・・・。」
ブチキレた2匹を見ても、兵士たちはさらに声高々に笑い出した。
「9割殺し?馬鹿じゃないのか?第1隊長に勝てるとでも思ってるんだ~。」
「頭の中お花畑ですね~。」
「もうやめないか。事実を突きつけるのはこれ以上は可哀想だ。手加減してやるから問題ないぞ。」
「さすが隊長優し~!」
ぎゃははと笑いながら、無防備に立った。
王は、眉間に指を当て、やれやれと首を振っていた。
「双方。最初に手合わせをする者前に出よ。」
「まずは俺ですかね?」
相手は第2隊長が出てきた。
「そっちはどっちが出るんだ?何なら弱い奴でもいいぜ?」
第2隊長がジェイドに指を向けてクイクイと挑発した。
「なら僕が相手だ。」
「鳥相手か~。飛んでくるからやりにくいな~。構わないけど。」
「鳥はいや?じゃあこれで戦うよ。」
怒っていたジェイドは出てきた時と同じように緑色の風を纏い、風が消えると人型になっていた。
それを見た兵士たちは口をポカンと開けていた。
「これなら問題でしょ?」
「あぁ・・・。問題ない!姿を変えようとも、実力はこちらが上だ!」
「では、始め!!」
一瞬びっくりしていたが、武器を構え直し、開始の合図が王より出された。
しかし・・・。
「はっ?」
「もう僕の勝ちだけど、どうする?」
開始の合図が聞こえた後、ものすごいスピードで第2隊長の後ろに回り、首に手刀を突き付けた。
「何をした!」
「何って・・・。ただ走って君の後ろに回っただけだけど?逆に何なの?弱すぎるよ~。」
「ばかにするな!もう一度だ!」
「え~。もう決まったじゃん。興が削がれたんだけど~。」
ジェイドは手を放し、リュシオルのとこにトコトコ戻っていっていた。
「シャドーブラックよ。申し訳ないが、もう一度戦わせてやってくれないか?」
「そう言われましても・・・。」
ちらりとジェイドの方を見ると、ぶぅ~垂れていた。
「ジェイド殿。もう一度戦ってやってくれないか?」
「王様が言うんだったら仕方ないね~。もっとスピードを落とすよ・・・。」
「すまぬな。」
「陛下!そんなものに頭を下げないでください!」
「馬鹿者!お主が負けた時点で、こちらは敗者だ!なのに、駄々をこねたのを我が通してやったのだぞ!」
「申し訳ありません・・・。」
少し、シュンっとして礼をしていた。
「これ以上恥をかくわけにいかない!今度は、最初から全力で行く!」
「どうぞ~。僕から攻撃しないことにするよ。」
「舐めやがって!」
開始の合図無しに、第2隊長は突っ込んでジェイドに向かって剣を振りおろした。
しかし、次の瞬間には剣はジェイドの指の間に挟まっていた。
「これで全力?」
「くっ!離せ!」
「ほいっと。」
ジェイドは後ろに向かって、剣を離すと第2隊長はそのまま後ろに転がっていってしまった。
「離してって言ったから離したのに~転がることないでしょ?」
「今度こそ!」
すぐに立ち上がった第2隊長は、またジェイドに斬りかかった。
次は、受け止めず薄皮一枚ぐらいの距離で全て避けていっていた。
あくび付きで。
「はぁはぁ・・・。当たらない・・・。」
「分かった?君では僕を傷一つ、つけることはできないんだよ。」
「そんな・・・・。」
剣を落とし、膝を着いた。
「勝者、ジェイド殿。」
ジェイドは華麗な騎士礼をしてリュシオルの所に下がった。




