~294~
リュシオルたちは、学院が始まるまで何事もなく生活が送られていた。
そして、登校日となった。
「なんか久々で勉強できるか心配だぜ。」
「リンブル・・・前にやった所は覚えているの?」
「聞かないでくれ・・・。」
教室では、久々に会うクラスメイトと様々な言葉を交わしていると、教室の扉が開いた。
「皆さん久しぶりですね。」
中に入ってきたのはレイヨンだった。
「先生もお久しぶりです。」
「元気にしていましたか?本日から通常通りの授業が始まりますので、しっかりと学習してくださいね。」
朝のホームルームをサッと終えて、授業に入ったのだが・・・。
「ぐわ~!無理だ~!」
「記憶力がね・・・。」
「言ってくれないでくれ・・・。」
案の定リンブルは、前にやった所を綺麗すっかりと忘れていた。
「なんで習ったことを覚えていないんだ?」
「だってさ、必要と思えなかったもんとかは覚えれないぜ。それでなくても俺、賢くないんだから。」
リンブルは項垂れ《うなだ》ながら、言った。
戦闘や冒険に関することなら、必ず覚えているのに学習面はなぜかダメダメなのである。
「確かに、必要な薬草とか、豆知識は凄いよね。」
「そうだな。あれとあれを混ぜたら何々の薬になるとかのサバイバル用の知識とかすごいもんね。」
「サバイバル?」
ベリエに言われた後、リュシオルが言ったサバイバルに食いついた。
「冒険用知識って言った方がわかりやすかったかな?」
「なるほどね~。血抜きの仕方とか、剥ぎ取りとかもうまいもんね。」
実践のことはできるのだが、座って学ぶことがダメだということに落ち着いた。
「また覚え直せばいいよ。じゃないと活動できなくなるからな?」
プワソンに黒い笑顔で言われてしまった。
リンブルは笑顔の裏の黒いものに触れて、ひゅっ!と喉から音が鳴った後、青ざめた顔で首をガクガク縦に振った。
「それにしても、久しぶりの座学は肩が凝りましたわ。」
「グローリアも?私もよ~。最近は動いてばっかりだったから長時間の椅子が堪えるわ。」
皆で話していると、クラルとグローリアが寄ってきた。
グローリアの腕の中にはアンブルが抱えられていた。
「もしかしてずっとアンブルを抱えてた?」
「はい。座っているときは膝の上でしたが。」
「この子撫でるの上手いわ・・・。私蕩けて何回も落ちてしまいましたわ。」
アンブルはしてやられたと、リュシオルに報告した。
「ま・・・まぁ警戒したままなら教室で少しぐらい寝てもいいよ・・・。」
「申し訳ないですわ・・・。」
アンブルは表情はぐったりした表情だったが、毛並みはサラッサラであった。
「ブラッシングもしてしまいましたが、よろしかったですか?」
「いつの間に・・・。」
「授業を聞きながらですわ。」
にっこりとグローリアは微笑んでいたが、とんでもない能力者である。




