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「あ~。何回あっても緊張するわ・・・。」
リュシオルは背伸びをしながら、歩き始めた。
「あなたでも緊張するのですね。そんな風に一切見えませんでしたが・・・。」
「そりゃ緊張しますよ。一応この国を治めている人ですよ?何かあったら首が飛びそうですし。いや・・・飛ばないようにしますけどね。」
「父上はそんなことはしないがな。」
「そうかもしれないけど・・・。周りとかが言い始めたら困るだろ?だから、ああいうところは波風立てない・目立たない・騒がないだね。」
うんうんと頷きながら、3箇条的なことを言った。
「そう言いながら、案外目立ってると思うぞ?」
「出来るだけ目立ちたくなかったんですけどね。いつの間にかやらですね。」
「それだけの実力があるなら隠しきれないだろうな。」
しみじみとクラルに言われてしまった。
そんなことを言いながら、カモフラージュをかけて城から出て行った。
「これって、本当に姿が消えていますの?」
「改良を重ねて、同じ魔法がかかっている者同士・・・掛けた者が同じだと見えるようにしました。だからほら・・・。」
そう言いながら、会話している女性の目の前に手をかざしたり、あ~!と大きな声を出したが無反応だった。
「ね?」
「高性能だな。ますます他の国に出て言って欲しくない人間になってしまったな。」
「う~ん。国の戦争とか政治はあまり関わらないようにしますよ?友人の手伝いはするし、悪事を働いている奴をやっつけることはしますけど、その他はしませんからね?もちろん、そんなことが起こったら、貰った土地とか爵位も返上して、どこか行きますからね?」
軽い脅し文句を、次代の王になるクラルに釘を刺しておいた。
「あぁ。分かったよ。ただ、友人のささやかな頼み事は聞いてくれるんだよな?」
「叶えれる範囲ですけどね?」
「なら問題ないな。」
黒い笑顔を浮かべながら、確認をされてしまった。
「(なんかあんまり関わってはいけない人に出会ってしまったかも・・・。)」
心の中で深いため息をつきながら、「はい」と返事した。
そんなことを話しながら、寮に着くと、食事がもう用意されていた。
「おかえりなさいませ。」
「あれ?桜こっち来ていたのか?」
「はい。ホストとして役目を果たすためでございます。」
綺麗な礼をして、帰りを出迎えた。
「務めご苦労。」
「助かりますわ~。それにしてもいい匂い!」
桜が作ったのは、和食だった。
「優しい匂いだ。こんな匂いは嗅いだことがない。」
「そうですわ。見たこともないですわ。」
「オリジナルの胃に優しい料理でございます。」
「昨日も体に染み渡るいい味の料理だったな。」
「これもそれのしっかりしたものだと思っていただけたら・・・。それでは、手を洗いをしていただいている間に残りを用意させていただきます。」
外に出た汚れを落とし、食卓に戻ってくると綺麗に盛り付けされており、もう食べれる状態だった。
「では、ご賞味ください。」
「ありがとう。ではいただきましょうか?」
「そうだな。では・・・。」
「わたくしも・・・。」
箸を使えないクラルとグローリアはナイフとフォーク、スプーンを使って食事を始めた。
「これはうまい・・・。」
「薄い味ですが、しっかりと味が付いており、美味しいですわ。」
「舌に合ってよかったです。」
「リュシオルが羨ましいな。こんな料理を毎日食べれるのだろ?」
「そんなしょっちゅうじゃないですけどね?違った料理も食べますし。」
「それは食べてみたいですわ!」
中々な食通なのか、味わって何が使われているか当てていた。
「さすがですね。材料はほとんど当てられますね。」
「これでも、最高の料理人を抱えているからだ。」
「ですね。」
桜の料理に舌鼓をしながら、楽しく食事をしたのだった。




