~289~
リュシオルの話を聞き、顔が険しくなった。
「まさかだったが、不正をしているとは思わなかった・・・。」
「どこにでもそういう奴がいるんだよ?人って分からないから・・・。」
歩きながらだが起こってきた出来事を話すと、官僚に対して憤怒していた。
「これは、いい情報をいただいた。これは父上にお話し、調べなければならないことだ。」
「そうしてください。ですが、ここからはいい笑顔で入ってくださいね?」
そう言われて顔を上げると、目的地の孤児院に着いていた。
「あら。もう着いていましたのね。」
「語りが上手いのだな。聞き入ってしまっていたようだ。」
「そんなことはありません。ではどうぞ・・・。」
中に入って行くと、笑い声などで溢れかえっていた。
「ここは変わったのだな・・・。」
中は、王子と王女が来ていた時より良くなっていたからだ。
「これは全部リュシオルたちが?」
「そうだな。俺たちで変えていった。貴族・商人のなど力を使わずにね?」
「リュシオルたちだからできることだな。」
少し笑顔を戻しながら奥に進んで行くと、子供たちが出迎えてくれた。
「あれ?なんか見たことある人だと思うんだけど・・・。」
「誰~?」
「もしかして、グローリアお姉さん?」
「横はクラルお兄さんじゃない?」
「そうだ。」
「久しぶりね。」
小さい子は分からなかったみたいだが、大きい子達は覚えていたみたいだ。
突然の訪問だったが、とても喜んでくれていた。
「今日は何しに来たんですか?」
「屋台で食べ物を買いすぎてしまったの。それでいっそうのこともっといっぱい買ってここで皆と食べようと思って。それに久しぶりにあなたたちに会いたかったの。」
「長い間顔を見せてくれなかったので忘れられたと思ってた。」
「そうそう。あれから全然来てくれないんだもん。」
子供たちは頬を膨らませていた。
「ほんとは来たかったんだけど、色々と家のお手伝いがあったから来れなかった。今日来れて本当に良かった。」
「みんな元気そうでよかったわ。」
「それもこれもリュシオル兄ちゃんのおかげなんだぜ?」
「そうだったの・・・。ありがとうね。」
グローリアからお礼を言われた。
「それで買いすぎたのはどこ?」
「お姉ちゃんたち持ってないじゃんか!」
そう言われた後、リュシオルがにっこりとしながら声を掛けた。
「俺が持ってるから、テーブルまで行くよ?」
「なんだ~リュシオルお兄ちゃんが持ってたのか。」
「みんな~早くテーブルに行くわよ~!」
年齢の上の子が声をかけて、テーブルの方に子供たちを集めた。
すると、奥からシスターが出てきた。
「これはこれは珍しいお客様だわ。」
「お久しぶりです。」
「お元気でしたか?」
シスターはにっこりとしながら歓迎してくれた。
「あらあら。何かお土産でも持ってきてくれたのかしら?子供たちがすごく喜んでいるわ。」
「ちょっとしたものです。それで、申し訳ないのですが奥でお話しできますか?」
「男前に頼まれたのであれば仕方ありませんね。奥で話しましょう。」
クラルは話が聞きたいようでシスターと奥に消えて行った。




