~28~
黒い笑顔での話し合いが終わり、ゴブリンジェネラルをそのまま持ってきたことを伝えると、クロワは喜んだ。
「ジェネラルは相当の魔力を蓄えていると思うので魔石が発生していると思います。その魔石は高値で市場に売り出されます。」
「魔石は普通の魔物には発生しないんですか?」
「そうなんです。長く生きたり、高位の魔物しか出ないんですよ。」
「では、今回のジェネラルに発生している場合があると?」
「その通りです。素材解体して確認してみましょう。」
ジェネラルに思った以上の価値があったみたいで、持って帰ってきて良かったとほっとため息をついた。
いつものように解体場に来てジェネラルを指定の場所に出し、解体するまで時間が掛かるとのことだったので、先に事務処理を済ますことにした。
「今回は、クエストとして出ていなかったのですが、未然に問題を解決できたとの功績とジェネラルを討伐したことにより、ギルドランク昇格の試験が受けれるようになりました。試験は受けますか?」
「はい。受けたいと思います。」
「分かりました。試験内容は商団の輸送護衛となります。ですが、試験には準備の時間が掛かりますので、約1週間後となります。」
「分かりました。詳細はまた今度ということですね?」
「そうなりますね。多分3日後には詳細がお話できると思うのですがちょっと今はまだ出来ないです。今から護衛してもらう商団の審査を行いますので。」
Bに上がるための試験は護衛だった。
試験を行うにも準備が必要なぐらいであることから、ランクアップとB以上は特別なことなんだろうとリュシオルは考えた。
そうなると、旅支度を整えないといけなくなるため、この準備期間がとても助かっていた。
「そうだ、ルーチェも連れて行くことは出来ますか?」
もしかすると連れて行けない場合があると思って慌ててクロワに質問した。
「大丈夫ですよ。ルーチェさんはリュシオル様の奴隷という扱いになりますので、連れて行くことが可能になります。一般での冒険者の場合は同じランクアップ試験を同じ時期に受けると可能です。」
「よかった~。ルーチェを置いていくのはできないからどうしようかと思ってたよ。」
「優しいのですね。まだ時間があるので、旅支度などを徐々にですがお願いします。」
「大体何日ぐらいになりますか?」
「そうですね。片道1週間ぐらいを予定していますが、まだ確定はしていませんので・・・でも最長2週間以内だと思います。」
片道2週間と考えて何かあったときのことをことを考えて準備する方が間違いないであろう。
余分になってしまうが2週間分の準備をすることに決めた。
「さて、今日はこれで帰るとします。魔石は・・・明日・・いえ明後日でも大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。今日は疲れましたか?」
「はい・・・少し疲れました。仕方がないとはいえあの状況は精神的にもキツイですね。そうは言ってられないんですが・・・」
「まぁ慣れるしかないですね。これが冒険者業であることを・・・。でもあなたのおかげで助かった命もあると覚えていてください。」
「そうですね。ありがとうクロワさん。では、今日はこれで。」
「はい。明後日お待ちしています。」
にこりと営業スマイルで見送ってもらった。
今日はもう何もする気が起きなかったので、宿に帰ることにした。
宿に着き、食事をさっと終わらしてお湯を頼んだ後、すぐに部屋で休むことにした。
「なんか色々あって疲れた。ルーチェは大丈夫かい?」
「はい。こんなことは辛いうちに入らないです。今までもっと酷い生活をしてきましたから。そう考えると、リュシオル様と一緒に冒険が出来てウキウキしているぐらいです。」
「そっか~。ルーチェが大丈夫ならいいや。まだ時間も早いし自由にしていいよ~。」
「はい。わかりました。」
自由時間にして、リュシオルはマージから貰った本を読むことにした。
一方ルーチェはエトワールの手入れをすることにしたようだ。
『マージから貰った本は魔法の本だな。この世界の基礎的な話が書いてあるのか。』
マージから読むように渡された一冊の本は魔法について書かれていた。
ただし、これは基礎的な話ではなくより深い話や普通は教えてもらえないであろう魔法まで書いてあるのだが、リュシオルはこの世界のことを知らないためそう思ってしまったのだ。
元々本を読むのが好きなため、どんどん読み進めていくとお湯が届いたため一旦目を離した。
『そういえば・・・ルーチェがいる前で拭いたことが無かった・・・どうしよう・・・。』
リュシオルが悩んでいると、ルーチェはお湯を持ってきてタオルを取り出し、準備し始めた。
「ん?なぜ俺の傍で準備を始めているの?」
「え?お背中をお拭きしようとしているのですが?じゃあ上の服を脱いでください。」
「いやいや・・・いいよ自分でするから。」
「いいえ。これは私の役目でございます!譲ることは出来ません!」
頑なにタオルを離そうとはせず、譲る気も無いため諦めて任せることにした。
「わかった。じゃあお願いするよ。」
リュシオルは上を脱ぎルーチェに背を向けた。
「では、始めますね。何かあったら言ってくださいね。」
そう言うとルーチェはリュシオルの背中を拭き始めた。
人に拭いてもらうのは思った以上に気持ちが良く、任せていると前も拭き始めた。
「前はいいよ。自分で吹くから・・・」
「いいえ。全部拭きます!」
「え・・・全部はやめて~~!」
「それはダメです。ひん剥いちゃえ~。」
その後、その部屋からは少し悲鳴が聞こえたとか・・・・。
梅雨は嫌ですね・・・
ジメジメするから嫌い・・・




