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ベリエとグローリアが楽しんでいる時、男の方はというと・・・。
「グローリアがあれだけ楽しそうにしているのは久しぶりだな・・・。」
「城では笑ったりしなかったのか?」
「微笑みぐらい。それに愛想笑いだ。」
「社交界も大変なんだな。」
「小さい頃から大人に囲まれて、あんな環境に居たら誰でもああなってしまうはずだ。」
よほど大人に揉まれてきたのか、子供らしさを無くし、さらに1人の人間としても薄れていっていたようだった。
「この学院生活はグローリアにとっていい経験になるはずなんだ。ただ・・・。」
「ただ?」
「この学院生活が終われば、どこかに嫁がなくてはならない・・・。王族としての運命なのだが、選べないというのは本当に不憫だ。」
「貴族・王族のことはあまりわかりませんが、それでも今を楽しむことが出来るのは、彼女にとっていい思い出となるはずです。」
「そうだといいが・・・。」
はしゃいでいる2人を見てクラルは微笑んでいた。
「クラル様もそのように笑ってられたらとても素敵ですよ?」
「そんなに笑っていたか?」
「はいそれは幸せそうに。」
「そうか・・・。」
買い物を待っていると、買うものを終えたようでリュシオルたちの方に歩いてきた。
その手には抱えきれないぐらいの服や小物を抱えて。
「そ・・・それをどうするんだ?この状態だと一度帰らないといけない量だぞ?」
「そう思って少量にしようかと思ったのですが、ベリエが大丈夫だと・・・。」
「リュシオル・・・これはどうするんだ?」
あまりの多さにクラルはよろめいていた。
「ベリエ・・・。」
「もちろんリュシオルを当てにしたわよ?」
「なるほどね・・・。では、グローリア様・・・お荷物を。」
リュシオルは手を差し出し、荷物を受け取ろうとした。
「本当に大丈夫なの?」
「いいから。大丈夫よ。」
差し出された手に荷物を手渡すと。
「へぇ~。なるほどね。」
「まぁ!荷物が消えましたわ!」
リュシオルは手に触れたものを次々とアイテムボックスに収納していった。
「ね?大丈夫だったでしょ?」
「ベリエの言う通りでした!これならもっと買ってもよかったです!」
「馬鹿ね・・・。アイテムボックスに入っても、部屋に入るかどうかは分からないでしょ?」
「そうでした・・・。ベリエってお姉さんみたいです。」
「妹を持ったらこんな感じかもね。」
うふふっとしながら、荷物を入る様を見ていた。
「これでよしっと・・・。次はどこに行きますか?」
「お兄様?お兄様もどこか行きたいのではなくて?」
「それならば、ギルドに行ってみたい。」
「ギルド・・・でしょうか?」
まさかの所であった。
リュシオルも意外な場所が出てびっくりした。
「普通ならば行くことが出来ないところだろ?兵士を伴ってでは政治的にも世間的にも良くないからいけなかったのだ。」
「クラル様も男の子なのですね。」
「冒険者って憧れないか?」
「そうですね。勇者って言葉に胸が躍りますね。」
男の子として、話に聞かされていた、本で読んだギルド。
憧れを抱かないはずがない。
ましてや、王族で王になるとほぼ決まっている王子なんかは、さらに遠いことである。
「じゃあ、お兄様の行きたがっているギルドに案内してもらえますか?」
「では、この格好だとなので・・・。」
スッと死角に入り、仮面を付けた。
「これで大丈夫です。行きましょう。」
「シャドー・ブラックの姿だな。確かにギルドに行くならばその方がいいな。」
「色々とサービスして貰えそうでしょ?」
ちょっと意地悪に成功したような雰囲気だった。




