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「アオ~ン!」
キメラの声が開始の合図となった。
まずは、キメラからの攻撃?だった。
キメラはまるでじゃれるかのように飛びかかってきた。
「大きな猫が飛びかかってきているみたいですわ!」
エクラの方にまずは飛びかかって行ったが、ひらりと躱した。
キメラの大きさは、オスのライオンより少し大きいぐらいだ。
そんな大きさの生き物が飛びかかってきて、もし当たったら大怪我どころではないだろう。
「避けるだけではこのままじゃ埒が明かない!」
「でも、首元にある箱は手が出せない状態よ?」
「気絶させるか、寝かせる・・・。とりあえず意識を失わせないとだな。」
「でしたら、披露させた後に、睡眠薬・・・持ってませんよね?」
「それでしたら、貴族子女の嗜み《たしな》として持っていますわ。ですが、近くで嗅がせないと効果はありませんわ。」
なんと、エクラは睡眠薬を持っていた。
貴族子女の嗜みとは・・・恐ろしすぎる。
「じゃあ、疲れさせなければならないってわけね。そうじゃないと近くには寄れないわ。」
「相手の関心を適度に皆に集めて激しく動かすしかないな。」
「大きな猫を遊んであげるつもりがいいですわね。」
方針が決まったところで、行動に移す。
まずは、円になって関心を交互またはより運動量が多いようにする。
猫じゃらしを持って・・・。
「こっちですわ!」
「ほらほらこっち!」
「こっちにこいよ!」
「こっちだ。」
「こっちです。」
順に声をかけたりして、激しく動き回らした。
「アオ・・・・。」
疲れてきたのか、声に覇気がなくなってきた。
そろそろ頃合いの様だ。
「それでは、タイミングを計ってしますわ。」
「用意はいいか?」
「もちろん。」
「それでは・・・3・2・1!」
全員で一気に動き、詰め寄った。
「アオ?」
急に詰め寄ってきたため、びっくりしたキメラが戸惑いの声をあげた。
しかし、止まることなく詰め寄っていく。
「アオ?!」
「眠ってくださいまし。」
エクラは持っていた睡眠薬を鼻の所に直接かけた。
「アォ・・・・・。」
睡眠薬をかけられたキメラは力なく眠った。
「いい夢を見るのですわ。さて・・・。はいプワソン。」
エクラがそのまま近づき、箱をキメラの首から取り外してプワソンに渡した。
受け取ったプワソンが箱を開けると、線だけの紙が入っていた。
「チケットではない?」
「この線は?」
紙を取り出したところで、ツインズが拍手をしながら上から降りてきた。
「「おめでと~。」」
「よく持っていたね睡眠薬。」
「すごいねお姉さん。」
素直に睡眠薬を持っていたエクラを褒め称えた。
「乙女の嗜みですわ。」
今度は乙女の嗜みになった。
「ところでこれはもしかして・・・。」
「お兄さんは察しがいいみたいだね。」
「考えている通りだよ。」
「それ以上のヒントは私たちは権限を持っていないから出来ないの。」
「制約させられているの。」
「これは仕方ないけど、ここまでなら私たちはできる。」
「それぐらいの権限があるということを考えてもらいたいってことね。」
地図の道筋を示せるのはある程度の上の者ってことになる。
「じゃあ、下っ端はこれも書けないってこと?」
これが書けるのはどこから上かをベリエは問いかけた。
「アジトの場所も知らないのじゃないかな?」
「仮アジトはいっぱいあるからね~。」
「捨て駒?」
「使い捨て?」
「「実力さえあれば問題ないし。」」
中々シビアな世界の様である。




