~268~クラル
私は、クラル・ロワ・ヘイナード。
名にロワが入っていると思うが、この国の王族で王子だ。
小さい頃から王になるため教育を受けてきて、今は大人になる前の時間。
これからの自分の信頼できる臣下を探すために学院に入っていると言っても過言ではないだろう。
婚約者は・・・まだいない。
候補には、エクラ・クレールスとエクレール・パストルが上がっている。
どっちも相応しい家柄であるが、まだ決めかねている状態だ。
どちらもいいところがあり、悪いところがある。
突出していないってところだな。
私の話はこれぐらいにして、なぜこう話しているかというと・・・。
現在、悪の組織に捕まっている状態だからだ。
「お兄様・・・。私達、どうなるのでしょうか?」
「分からない・・・。ただ、この状態なら助けに来てもらえないことが分かるだけだ。」
「そうですよね・・・。ここ・・・異空間のようですしね。」
辺りを見渡しても光一つない・・・。
まさに暗闇の牢獄と言ってもいいぐらいだ。
こんなところには、罪の重いものが閉じ込められるような所である。
まだ、私とグローリアの2人だから耐えれるようなものである。
「出口ってないのでしょうか?」
「異空間は使っている術者の思いのままに使えるのがそうだから、どうにもならないはずだ。」
「では、外に出た時しかチャンスはないのですね。」
「それもいつ外に出れるのやら・・・。」
ここに入ってからもう何日も過ぎているような感覚だった。
実際にはたいして経っていないのだろうな・・・。
すると、突然光が差し込み、引っ張られていく感覚があった。
「きゃっ!」
「うわっ!」
地面にドサッと落とされた。
痛みの後に、顔を上げるとそこには黒装束を纏った人が3人そこにいた。
「確かに王族だな。よくやった。」
「ありがとうございます。」
恭しく頭を下げた先にいる男のようにがっしりしているこいつがボスなのだろうか?
「それで、誰がこの後面倒見ますの?」
「空間魔法を使えるのはこの中だとお前しかいないではないか。」
「確かにそうですけど・・・。なんか癪ですし、食事の面倒もでしょ?こっちの男を食べていいなら喜んでするんだけど。」
「お前が食らうと、干からびるまで食らうではないか。」
「ちょっと食べすぎちゃうだけじゃない。私より、あの子の方が我慢しないわよ?」
「どっちもどっちだ。食事は下に用意をさせるから、お前が管理しろ。」
「Kが言うから仕方ないか・・・。わかりました~。」
女がそう言うと、また私たち2人は異空間に入れられてしまった。
それから、たぶん数日が立ったと思うが、食事はたまに思い出したように入ってくるが、食欲が起きなかった。
お腹が空くが、食べれる食事が用意されなかったと言ってもいいだろう。
用意されたのは、生の肉に虫、何かわからない食べ物だ。
こんなのが食えるわけないのに、送られてくる。
もちろん私もグローリアもお腹は極限まで減っていたが、手を付けなかった。
それからさらに時間が経った後、私たちに救いが舞い降りたのだ・・・。
「広げて・・・。こんにちは?」
何を広げたのかわからないが、光が差し込んだ後、人が空間に入って来たのだ。
普通ではありえないが、私たちにとっては神に見えてしまった。
「誰?」
グローリアが声を出して、聞くとすぐに返事が返ってきた。
「お迎えに上がりましたよ。王子様、王女様。」
「ほんとに・・・?ほんとに助けに?」
グローリアは何度も絞り出すように声を出して確認をした後、私たちは2人抱き合って泣いてしまった。
放置していることもわかっていたが、助かった喜びで涙が止まらなかった。
しかし、心情を察してか思いっきり泣かせてもらった。
落ち着いた後に助けに来てくれた者に礼を言わなければと思い、声を出したのだが私も皺がれた声しか出なかった。
「見つけていただき、ありがとうございます。」
「もう助からないかと・・・。ありがとうございます。」
2人して何回もお礼を言うと、にっこりと微笑んでくれたのだった。




