~262~
王子と王女を助けた日から翌日。
空間の家から出て、王城に向かっていた。
「このままでは騒ぎになるのでは?」
「なので、今回はこれに乗っていただきます。」
リュシオルが取り出したのは匠が作ったであろう細工を施されている馬車であった。
「こちらで王城に向かいます。」
「かたじけない。」
馬車に乗ると、中もすごかった。
「この生地は一級品では?これも細工が凄すぎる・・・。」
「とりあえずお座りください。動きますよ?」
一応手綱を握るが、曳くのはヴァイスである。
『出発しますよ?』
『頼んだ。』
ゆっくりと進み始めた馬車はやがて、スピードを出し、王城まであっという間に着いた。
「そこの馬車止まれ!」
『ヴァイス止まって?』
『かしこまりました。』
1人の門番に止められたので緩やかに停止し、門番の方に向いた。
門番は新人の様だったが、リュシオルの方を見たもう1人が慌てて中に駆けだしていった。
「あいつ・・・なんで走って行ったんだ?とりあえず・・・王城へは何用だ?」
「お届け物ですね。」
「少し待ってろ。」
一旦門番は紙を確認していたが、書かれていないのを確認し、さらに声を掛けた。
「予定は何も書かれていない。入ることは許可できない。」
「そうですか・・・。騎士団長にお取次ぎできないですか?」
「騎士団長様は忙しいのだ。そなたに時間を割くことはできな・・・・騎士団長様・・・。」
「用も名前も聞かずに、追い払おうとは上の上司はどういう教育をしているのだ?」
いつの間にか騎士団長が門の方に歩いて来ていた。
「お前の同僚が一目散に私に知らせなかったらどうなっていたか分からないぞ?」
横を見ると、息を切らせたもう1人の門番が立っていた。
「数日振りですね。」
「そうですね。それで、本日はどのようなご用件でし・・・!!」
馬車から顔を出した人物を見て、騎士団長は驚いた顔をした後、すぐに頭を垂れた。
「ご帰還お待ちしておりました。」
「今はそうかしこまらずともよい。このまま中まで案内を。」
「はっ!かしこまりました。」
さすがに王子の顔は覚えていた新人は、顔を青くしながら頭を下げていた。
「あっ!そこの者は業務を行っただけだ。そう責めてやるでないぞ。」
「はっ!お前・・・助かったな。」
そう言い残し、奥へと進んで行った。
「おまえ助かったな・・・。」
「まさか王子が乗ってるとは思わなかったぜ。」
「違う!お前は気づいていないかもしれないが、あの対応した男いるだろ?」
「あぁ。あの男がどうした?」
「おかしいと思わなかったのか?」
首をひねりながら考えていたが思いつかないようだった。
「だめだ。全く思い浮かばないぞ?誰だ?」
「だめだなお前・・・。世間に疎すぎる・・・。あの人は有名なシャドーブラック様だぞ?」
「えっ?!あの人が?!」
「そうだ。だから俺が走って行ったんだよ。お前絶対気づいていないと思ったからな。あの人は優しいで有名だから大丈夫だと思っていたが、ホントにお前は・・・。」
「迷惑をかけた・・・。」
しょんぼりしながら相棒に謝っていた。




