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先に話をしてしまおうと思ったが、くぅ~っとかわいらしい音が響いた。
お腹が空いていたのかいい匂いを嗅いで食欲が触発されたようだ。
「話をする前に・・・。まずはお食事に手を付けてからでいいでしょう。ここ何日も食べられていないでしょ?」
「はい・・・。」
「お恥ずかしい限りです・・・。」
「仕方がないです。では食べながらでお話を進めましょう。」
「感謝します。」
食事前に祈りを捧げてから手を付けたのだが・・・。
「お食事中ではしたない行為だと分かっていますが・・・なんですの?・・・すごくおいしいですわ・・・。」
「食べたことない味ばかりだがすごくおいしい。作られている料理長に是非ともお会いしたい。」
「それでしたらわたくしでございます。」
料理の絶賛を受け、調理を作った者で桜が名乗りを上げて王子と王女は驚いた。
「そなたが作ったのか?」
「そうでございます。こちらの屋敷の管理を任されております。その為、料理・洗濯・掃除等すべてこなしております。」
「もしや・・・1人で管理しておるのか?」
「実質そうでございます。」
その事実にもびっくりしていた。
問い詰められても困るのでそうそうに話をぶった切ることにした。
「色々とあるのですが、その話は改めてということで。まずは王子様と王女様にお伺いしたいのですが、連れ去られた後、あの空間で誰か接触等してきましたか?」
もしかすると、組織の情報が手に入るかもと思い、少し質問すると・・・。
「一度だけ・・・接触してきました。」
「どのようなことでもいいので教えてただけますか?」
「はい。連れ去られて直後のことでした。一度外に出されて、闇の魔法で拘束されたままでしたが・・・。」
「出されたところは、薄暗い執務室のような所で、人は3人いて顔はまったく見ることが出来ませんでしたわ。そして私たちを出した者が上司に何かを囁いた後、また空間に閉じ込められたのですわ。」
「特徴とか声とかは聞けましたか?」
「全く分からないです。」
「そうですか・・・。」
一瞬見れただけの様だった。
「でも体格的には男性と女性・・・。後私たちを攫ったであろう人は男性の様でした。」
「ありがとうございます。またこちらでもお調べいたしますので。」
「はい・・・。」
「心配しないでください。何か対策は考えますので。さぁ!食べ終わったようですし、甘いものでも食べましょう。」
食べた後の皿を下げさせて、ケーキと紅茶を用意した。
「何から何まで・・・。」
「どうされますか?本日はここに泊まられても構いませんが?ここなら襲われることもなく安全にお休みいただけますが・・・。」
「確かにここは異空間。普通の者が入ってくることなどできない。城ならば・・・まだ危険が残っているかもしれないな。」
「そういうことです。さらにここには最高戦力が揃っていますので、問題ないかと。本日はここでゆっくりとお休みください。」
心情を察して、出来るだけ安全な状況を提供した。
「では、お言葉に甘えさせてもらうことにする。」
「はい。甘いものを食べてリラックスしてからお休みください。」
「あの~城への連絡は?」
「明日でも構わないでしょう。元々今頃から捜索が始まっているところ。それより先に帰ってきているのですから。」
「ですが兵は・・・。」
「組織のアジト探しです。いずれしなければいけないこと。つまり、無駄ではないということです。」
「そうですか。では、全てシャドーブラック様にお任せします。」
「任されました。では、私はこれで。」
リュシオルがいてはゆっくりできないと思い、席を外すことにした。




