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「これであともう少し・・・。あともう少しで届く。」
リュシオルは魔法陣の中央で立って手を伸ばしていた。
伸ばした手の先は歪んで見えない。
「ここからこう引いて・・・よし!捕まえた!」
望んでいた空間を捕まえるのに3日かかっていた。
「ふぅ・・・。お腹空いた・・・。少し固定して昼食を取ろうかな?」
その場に腰を下ろして、アイテムボックスから食事を取り出した。
もぐもぐと食べていたが、1人前では足りず、3人前は食べてしまっていた。
「すごくお腹が減っていたみたいだな・・・。やばい・・・独り言が多すぎる!」
1人でいる時間が長くなっていくと独り言がどんどん増えていった。
「1人って寂しいんだな・・・。ルーチェがいて・・・ガルディとバルトがいて・・・アルシュがいて・・・。」
指を数えながら名前を上げていく。
この世界にきてからいろんな人に助けられていたことを思い浮かべていた。
1人じゃ何もできなかったけど、助けられてうまくいっている。
「さて!期待に応えるためにも頑張りますか!」
先ほど固定していた空間に手を伸ばし、作業にかかる。
見つけた空間から魔力の残留をたどり、また次の空間をつかむといった作業を繰り返す。
「これが最後の目的の空間のはず。」
単純作業を繰り返し数時間。
目的の空間を見つけることが出来た。
「広げて・・・。こんにちは?」
空間をリュシオルの作った空間に列車のようにつなげ、中に入って行くとそこには王子と王女が膝を抱え、ぴったりと寄り添ってうずくまっていた。
「誰?」
「お迎えに上がりましたよ。王子様、王女様。」
「ほんとに・・・?ほんとに助けに?」
絞り出すように声を出した後、2人は抱き合って泣きじゃくった。
ひとしきり泣いた後、目を真っ赤にしてリュシオルの方に向いた。
「見つけていただき、ありがとうございます。」
「もう助からないかと・・・。ありがとうございます。」
「お礼は王城に戻ってからで。・・・だれだ?そこにいるのは。」
リュシオルが王子と王女から視線を外し、横を向いて人がいるかのように声を掛けた。
すると、空間がぐにゃりと歪んだかと思ったら、よく似た2人の子供が出てきた。
「よくわかったね!」
「うんうん。私達を見つけるなんてすごいね!」
「自己紹介しなきゃね!」
「うんうん!私たちはツインズ!」
双子は手を合わせてクルクルと回っていた。
「それで、お前たちは阻止しに来たのか?」
リュシオルが問いかけると、ピタッと止まって振り返った。
「う?何もしないよ?」
「うん。何もしないよ?」
「ただ見に来ただけ~。」
「そうそう。見に来ただけ。」
うふふっと笑ってまたクルクル回ってそのまま消えていった。




