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鍛錬場から出てきたリュシオルは厨房に顔を出すことにした。
この厨房というのは、元々家庭で使うぐらいの大きさで作っていたのだが、桜とガルディの要望により、大きく改造することとなったのだ。
「お父様。お待たせして申し訳ありません。」
「あともう少しでできますので、少々ソファでおくつろぎください。」
「わかったが・・・。どれだけ作ってるんだ・・・。」
厨房に広がっていたのは、大量の料理だった。
それをお弁当の容器(リュシオルがいっぱい作っておいた)にしこたま作って詰めていた。
「あ!お父様!ソファーに行く前に、もう少しこのお弁当箱を作ってもらえますか?」
桜より、さらなる追加を言われてしまった。
「わかった。ちょっと待っててくれ。(どれだけ作るつもりだ?ガルディも入れる手が残像になってるよ・・・。)」
最強の二人が組むことにより、膨大なお弁当が出来そうだった。
「ありがとうございます。では、もう少々お待ちください。」
リュシオルは言われるがままソファーに座り、ぼぉーっとしていた。
「(ぼぉ~っとしているのもなんだから、本を読んで待っていよう・・・。何かヒントになるようなことが乗っているかもしれない。)」
時間を無駄にするのはもったいないと思い、本をアイテムボックスから取り出して読みだした。
それからしばらくたった後、桜から声を掛けられた。
「お父様。用意が出来ました。」
「ありがとう・・・。読みふけってしまったようだね。」
「いえ。大して時間が経っていないです。こちらに用意しましたので、お持ちください。」
振り返った先には山となったお弁当箱があった。
「説明いたします。右から和風・洋風・中華・アジア風・辛い物など多数の物を用意いたしました。」
「またたくさん作ったな・・・。」
「主は無尽蔵に入るアイテムボックスをお持ちなので、出来る限りさせていただきました。」
確かに一理あるが、それにしても作りすぎだと思ってしまった。
「さあ!お父様!わたくしのお弁当を持っていってください。」
「そうだな。娘が作った物はすべて持っていかないとね。」
娘のように作った桜がお弁当を一生懸命作ってくれたのだ。
無下にすることはできない。
大量のお弁当をアイテムボックスに次々と入れていった。
機械のように放り込んでいき、全てのお弁当をアイテムボックスに詰めた。
「それじゃあ、もう1つ空間を作ってそこで没頭するよ。」
「はい。お気をつけて・・・。ですが、扉だけはつけてもらえますか?」
「・・・それもそうだな。では、外で何か急なことが起きたら困るしな。ありがとう桜。気づいてくれて。」
「とんでもないです!お父様が心配で・・・。」
桜の頭を撫でてから壁のほうに歩き、扉を作ってその奥に空間を作った。
「じゃあ行ってくるよ。」
「行ってらっしゃいませ。」
手を振り、リュシオルを送り出した。
「行ってしまわれました・・・。でも、褒めて貰えました!あ!そうだ!掃除がまだな場所があるのでした!」
手をポンッと叩き、パタパタと桜は走っていった。
一方異空間に入って行ったリュシオルはさっそく王子と王女のいる異空間を探すために魔法陣を組みだした。
「これをああして、ここは・・・こう!それでこう書いて・・・。」
ブツブツと言いながら、巨大な魔法陣を書いていった。
「これで良し!これで特定するのに時間がかからないはず。では、集中してつなげる努力をしないと・・・。」
リュシオルは魔法陣の中心に座り、集中し始めた。




