~240~
市民の協力により、次々と怪我をしている人が発見されて治療が出来た。
しかし、間に合わなかった人もいた。
「お母さん・・・・。」
「あんた~~~!」
「そんな・・・。」
瓦礫に埋まって即死したり、魔物に斬られ血を流しすぎて等の死因である。
「申し訳ない・・・。こんなことになる前に対処できれば・・・」
リュシオルがそう謝ると、救助した人やされた人が口を開いた。
「あなたが謝る必要はない!」
「悪いのはこんなことを起こした悪者のせいだ!」
「こんなことが誰も起こるとは思っていない!あなたのせいじゃない!」
「こんなにも助けてくれた!助かる人があなたのおかげでたくさんいた!」
「ここまでしてくれた命の恩人を責めることなんてしない!」
涙を流しながら、リュシオルが謝ったことに対して皆が怒ったのだ。
「あなたの功績は偉大なことだ。感謝します。」
「学院長・・・。」
いつの間にか現れたのは学院長だった。
そして、グロース・ファクトのみんなとルーチェも集まっていた。
「そうですわ。これは全てシャドーブラックさんが頑張ったこと。」
「ブラック様が頑張られた成果かと。」
皆もそう思っているのか頷いていた。
助けれなかった罪悪感などがひしめいていたが、遺体をこのままにしているのはいけないと思い口をひらいた。
「亡くなった方の皆さんを弔いましょう・・・。」
「そうですね・・・。このままは可哀想です。」
「でも弔う場所なんて・・・。」
「提案があるのですがいいですか?その前に、ここでの埋葬の仕方はどうするんですか?」
この世界の死者の扱い方がわからなかったので、聞いてみることにした。
「ネームタグを遺品として残し、後は火葬して共同の墓地に骨を埋めるくらいですね。」
「そうですか。なら、私がその火葬をやってもいいでしょうか?ただし、骨が残らなくなってしまいますが・・・。」
「え?なぜ骨が残らないのですか?」
リュシオルの申し出に、賛成のようだが骨が残らないことにびっくりしたようだ。
「聖なる炎で弔おうと思っているので。そうすると何もかも燃えてしまうはずです。」
「分かりました。遺品を持ちたい者は今持ってほしい。今からシャドーブラック様に火葬していただく。」
親しい人を無くした人は泣きながら遺品を手にして下がっていく。
下がったのを確認し、言葉を紡ぐ。
「安らかに眠り、来世では幸せを〖ホーリー・クリメイション〗。」
魔法を唱えると、遺体が青い炎に包まれていく。
すると、その炎に生きていた時の姿が映し出され、幸せそうに微笑みながら口をパクパクさせていた。
そして、目の前にいる自分の親しい人に声をかけているようだ。
話されている人はうんうんと頷きながら涙を流していた。
その様子はすべての遺体で起こっていた。
周りでは何をしているか分からない状況だったが、本人たちは話が出来ているようだ。
遺体が燃え尽きるその瞬間までお別れが出来たようだった。
そして、弔われた人はスーッと消えるように天に昇って行った。
弔う側は天に上がっていく様子を、両膝を着き胸の前で手を組んで祈りをささげていた。
「ありがとう・・・。本当にありがとう・・・。」
泣きながら最後の言葉を聞けた人たちはリュシオルにお礼を言っていた。
それを聞いて頷いた後、リュシオルは天高く手を上げて魔法を発動する。
「建物を元あるべき姿へ〖レスタレイション〗」
呪文を唱えると、瓦礫と化していた建物が時間を巻き戻されるように元に戻って行った。
その光景を見て、辺りはシーンとしてしまい誰もが目を見開いていた。
「私たちは奇跡を目にしているの?」
「これは夢なのか?」
修復が終わった後、ザワザワと声を出していたが、亡くなった人がいる人は奇跡を口にし、何も失わなかった人は夢を口にしていた。
「さっきまで起こっていたのは現実です。彼は出来ることをしただけ。そして彼の体は1つです。1人の人間です。なので、救える命も彼の両手に納まるものだけ。神でも天使でもないのです。ここにいる人は救えましたが、いつでも救えるとは思わないでください。」
リュシオルを神格化しないようにと学院長が起こったことをしっかりと皆に言い聞かせた。
「それはわかった。だけど、命の恩人に何もできないのは困る。」
「そうですね・・・。では、シャドーブラックさんはどうしますか?」
「私ですか?!それなら・・・・」
言葉を紡ぎ、リュシオルの考えを聞いた人々は笑顔になるのだった。




