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「帰って行ったか・・・。」
構えていた武器を下ろし、気を抜いた。
そして、ルーチェの方を振り返ると、バルトがルーチェをお姫様抱っこして抱えていた。
「危機は去ったみたいだよ。」
気配も何もかもなくなっていたため、バルトは人型になったようだった。
「しかし、あいつは落ち込むだけだったな。」
「そうですね。逆上して襲い掛かってくるかと思われたのですが、まさか落ち込んだまま帰るとは思いませんでした。」
アルシュも同じく驚いていたようだった。
しかし、何もせずに帰っていったのは幸いだった。
「とりあえず、ここから出よう。」
瓦礫だらけの教会からとりあえず出た。
周りを見渡すと、建物はほとんど崩壊しており、どこも安全な場所がなかった。
「見事に壊れているな。」
「そうですね。これではルーチェ様を寝かせる場所がありません。」
腕輪が光り、ガルディも人型をとったようだ。
「ガルディ・・・。」
「はい。わたくしはいつも主の傍に。」
ガルディは胸に手を添えて礼をした。
「他のみんなの場所を探して、合流するしかないな。」
「そうですね。たぶん街の方に居るかと思われます。魔法で探されるとよろしかと。」
「そっか。Aの干渉がないから使えるのか・・・。〖サーチ〗。」
先ほどまで追い込まれていたため、魔法のことをすっかり忘れていたのだった。
サーチを発動し、みんなの魔力を探った。
「見つけた。転移で移動するからみんな捕まって。」
探し出した場所に転移するのだった。
一方、リュシオルが巨人と戦っている頃グロース・ファクトのメンバーは・・・
「こっちはそろそろ終わりそうよ!」
「救出されていない建物がまだある!捜索を!」
「魔物は殲滅したぞ!人命救助を第一に!」
「こちらに埋まっている人を発見しましたわ!人手を!」
「怪我した人は私の方に!出来るだけ重傷者を優先してください!」
魔物の殲滅と、人命救助に追われているのだった。
魔物の殲滅を担当し、他の冒険者と一緒に捜索をするベリエ。
周りで率先して指揮を執っているプワソン。
ベリエと反対側にいた魔物を殲滅に当たっていたリンブル。
素早くどこに人が埋まっているか見つけ出し、救出するエクラ。
怪我した人をすべて見ていくレオーネ。
「こ・・・この人たちは?」
「この人たちはグロース・ファクトの人たちだよ。」
「こんなにここが安全なのは・・・あの人たちのおかげよ。」
「最近有名になり始めたチームらしいわ。さっきそこで若い女の子たちが騒いでいたわ。」
助けられた人が、あれは誰だ?等の話が飛び交っていた。
「ここは大丈夫の様ですね。」
「あなたは?」
「ここの学院長をしている者です。ケガは?」
「グロース・ファクトの人たちが治してくれました。」
治療された人がプワソン達に感謝をしているのを聞いて学院長は満足そうに頷いていた。
「ではここは大丈夫ですね。私は他をあたりたいと思います。グロースファクトの皆さん。後はお願いします。」
「わかりました。こちらはお任せください。」
学院長に挨拶をして、そのまま現場を引き継いだ。
それと入れ替わりに、リュシオルが転移してきた。
「あ・・・あれはシャドーブラックじゃないのか?」
「そうだ!あの方はシャドーブラック様だ!」
「あの人がシャドーブラック様・・・かっこいい・・・。」
「後ろにいる人たちも見麗しい顔をされていますわ。」
リュシオルが現れたことで、その場が色めき立った。
「ここは賑わっているな。手伝おうか?」
「助かります。ブラックさんはこちらの重症患者を・・・。」
「いや・・・。一か所に集めてくれ。」
「・・・分かりました。どれぐらいの範囲で?」
「出来るだけ寄せてくれたらいい。」
「皆さん!ここに集まってください!一気に治療します。」
レオーネの声を聴いて人が集まったのだった。




