~229~
段々と黒い雲がかかっていき、空気も淀んできていた。
「そろそろ召喚できるのではないか?ふふふ・・・。これは楽しみだ。」
「何を召喚するというんだ!」
「それは見てからのお楽しみだ。せいぜい足掻いて殺されるがいい。それとも仲間が殺された後に絶望してから死ぬか?」
気持ち悪い笑みを浮かべながら青白い男は言ってきた。
「いや。どちらも遠慮させてもらうね。アルシュ。」
「はい。」
「ここは大丈夫そうだ。これぐらいの小物なら1人で片づけられる。」
「そうですか・・・しかし、たぶんもう外は片付いているので行っても無駄足になってしまいますのでここに居てもいいですか?」
アルシュがそう言った途端、青白い男がキレた。
「馬鹿なことを言うな!どれだけの魔獣を召喚したと思うんだ!数万に及ぶ魔獣を召喚したのだぞ!?」
「それぐらいなら足りないのでは?」
「そんなわ・・・なんだと?!」
気配を探ったところどんどんと消えていっていることに気づき青白い男がさらに白くなった。
「おのれ・・・貴様は八つ裂きにして実験に使ってやる。」
「八つ裂きにしたら使えないじゃないか。馬鹿じゃないのか?」
素直に答えてしまったことにより、さらに相手を逆撫でた。
ブルブルとしたと思った次の瞬間、青白い男は襲い掛かってきた。
訳の分からない奇声を上げながら爪を立てながら引っ掻きに来たのだ。
それをリュシオルは何事もなく躱していく。
「おのれ!なぜ当たらんのだ!」
「なぜって言われてもな~。避けてるし。」
「ええい!減らず口を!これでもくらえ!」
フラスコに似たガラスを叩きつけてきたのだ。
「ワッと!なんだ?!」
慌てて避けた後、少しかかったのか服がジュウジュウいいながら溶けていった。
「硫酸か・・・なんてものを・・・。」
「これは独自に開発したものだ!これで骨まで溶けるがいい!いひひひひ!」
危ないものを複数手に持ちながらまた気味悪い奇声を上げていた。
「それでは私の相手はあなたになりそうですね。」
リュシオルが戦い始めたころ、アルシュは鬼の男に向かって声を掛けた。
横を見ると、グロース・ファクトのメンバーもサキュバスの女と戦いが始まったようだ。
「あっちより、あんたの方が楽しそうだ。」
「それはどういった意味でしょうか?」
「獣のように殴り合えるってことだよ!」
鬼の男は素早く駆け出し、アルシュに殴りかかった。
しかし、その拳が届く前にアルシュに受け止められてしまっていた。
「ほら。やっぱりそうだ。」
「ではあなたの好きな殴り合いでたっぷりと格を分からせて差し上げます。」
「いいね~いいよ~語り合おうぜ!」
そこからはすさまじい戦いになっていた。
アルシュが右でパンチを繰り出すとそれを受けて止めて、さらに反撃をしてきた蹴りをアルシュが流しててと、まるで静と動の戦いだった。
「はぁ~。中々やるな!」
「あなたの方こそ打たれ強いですね。殴って蹴っても笑顔で向かってくる・・・気持ち悪いです。」
「ふははは!そんなことを言われたのは初めてだ。しかし、ここまで戦いが続くことがなかったからだろうか?楽しいな。」
鬼の男は生死をかけた戦いが楽しいようだった。
言葉の通りに取ると、今まですぐに倒せてしまっていたのだろう。
「さて、もっとやろうぜ?」
「埒があきませんね。少し本気を出しますか。」
アルシュがそう言い、体に力を込める仕草をすると、足の膝から下と腕の肘から下が龍の鱗で覆われ、目も爬虫類の目になった。
「やっぱり感が当たっていたな。では俺も!」
鬼の男も体に力を入れると、牙と角、そして筋肉が肥大した。
「あなたも隠していたのですか。」
「それはお互い様だろ?じゃあいくぜ?」
そこからの戦いのスピードが上がったのは言うまでもないであろう。
戦闘シーンって難しいですね^^;




