~228~
一方リュシオルは、一度外に出てしまっていたので、スペースの空いているところでそのまま召喚獣たち全員を召喚していた。
「どうされたの・・・これは!」
「禍々しいですね・・・。」
「胸糞悪いな。」
「つまり殲滅ですわね。」
呼び出された召喚獣たちは、瞬時に魔獣がいることを感づいて状況をなんとなく悟ったようだ。
「察しが良くて助かる。人命優先で殲滅だ。」
「「「「「はい。」」」」」
返事したとたん、まるで打ち合わせしていたかのように四方に散って行った。
しかし、アルシュだけ残っていた。
「競技場・・・中央に強い気配を感じますので私も同行します。」
「助かる。強い気配を3つ感じるからおそらくこいつらが今回のトップかな?もしかするとまたあいつが来ていたら厄介だな・・・。」
後半はブツブツと呟いていたので、アルシュには聞こえなかった。
「とりあえず急ごうか。まだ動いていな・・・くそ!1つが動いた!」
「転移で行けますか?!」
「少しズレて向かう!捕まれ!」
「はい!」
アルシュは素早くリュシオルの肩を持ち、それを確認したリュシオルはすぐに転移した。
「真ん中にいる奴らか。エクラとベリエが対峙しているな。そして移動した奴は・・・あいつか!」
瞬時に判断し、反対側の観客席の方に飛んで行った。
「おいしいわ~。人間の精気ってほんとにおいしいわ~。でも、殺したら駄目だからこれで終わって・・・次はあなたね?」
呼ばれた者は目が虚ろで抵抗なく呼び出したサキュバスの女に近づいていく。
サキュバスの女は特に男を狙い、人間の精気を吸っていた。
吸われた男は見る見るうちにガリガリになり、かろうじて生きている状態だった。
「ではいただき・・・え?痛い!」
急に吸おうとしていたら、頭に痛みと浮遊感に襲われたサキュバスの女は驚きの声を上げた。
「それ以上はやめろ。」
リュシオルはサキュバスの女の頭を鷲掴みして浮かせた。
その間もギリギリと指に力を入れていく。
「離しなさい!」
サキュバスの女は爪でリュシオルが頭を持っている手を引っ掻いた。
リュシオルは痛みで力が緩んだ所、頭を離してしまったがすぐ様に今度はサキュバスの女の翼を持ち、競技場内に投げた。
「きゃ!」
サキュバスの女は勢いよく飛んでいき、ギリギリで羽ばたき地面に激突するのを防いだ。
「何があった?」
「急に男に頭を鷲掴みされて、逃げだしたら今度は羽を持たれてここに投げ込まれたのよ。」
「ほう・・・。それはあいつですかね?」
3人の敵はリュシオルの方に視線を移した。
見られていることが分かったが、精気を吸われていた人たちを治療し、術に掛かっていた人たちを開放してから、競技場内に飛んで降り立った。
「ブラック・・・。」
「大丈夫か?」
「えぇ。大丈夫よ。今から始めようかなって思っていたんだけど、その女が飛んで行っていしまって、どうしようもなくなっていたところだったの。助かったわ。」
「どういたしまして。それで敵はあいつらだけか?」
「幹部クラスはあいつらだけの様だ。」
プワソンもギルドスタイルになって場内に走ってきた。
「その他は召喚された雑魚の様ですわ。」
「雑魚だけじゃないんだよな~。召喚したのは先に数の多い雑魚を出しただけで。」
雑魚ばかり出てきていたので、そうリュシオルに伝えると、敵から否定の言葉が聞こえた。
「つまり、この後に強力なのを出すということか。」
「せいか~い!よくできました!だけど、お前たちに全部処理できるかな?ひっひっひっ!」
青白い男が人を馬鹿にするかのように言ってきたのだった。




