~218~
一方先に教室に戻ったリュシオルとレオーネは戦場にいた。
「5番テーブルにリュシオル君指名!」
「1番テーブルにレオーネ指名!」
「オーダー!」
喫茶は戦場化していた。
「ここまで忙しくなるとは思っていませんでした。」
「これもリュシオル君たち効果だね。」
喫茶の主体となった女の子たちは、片隅でハイタッチしていた。
それも数分前のことである。
「あのかっこいい人を指名するって出来ませんか?」
ある貴婦人の一言から始まった・・・。
「大丈夫ですよ!予定には入れていたのですが、ご要望があれば開催する予定でした。」
こうなることは予想されていたのか、商人の娘である子が対応し、微笑みかけた。
「まぁ!でしたらお願いしますわ。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
注文を受けた子は聞こえるように大きな声を出した。
「お楽しみ中の皆さま。少々お時間をいただきたいと思います。今から指名制をさせていただきたいと思います。ご要望がなければ行わない予定でしたが、希望する声が出てきましたので行います。」
「指名制とは何ですの?」
別の女性から質問が飛んできた。
「はい。これから説明させていただきます。指名制とは気に入った生徒とおしゃべりする時間を設けたいと思います。さしあたって、時間につきましてはこの2種類の砂時計で対応したいと思います。」
掲げたのは大きさの違う砂時計である。
片方は小さく、片方はそれより少し大きいようだ。
時間的に見ると、5分と10分ぐらいであろう。
「この小さい砂時計は、メニューに下から3つだけございますスペシャルドリンクを頼まれた方にこの指名の特典が付きます。そして大きいほうは、食事メニューの下から3つに指名権を付けさせていただきます。もちろん頼まなくても、注文等お伺いすることはできますが、拘束は出来かねますのでご了承くださいませ。」
綺麗な礼をして、この計画を知っているであろう生徒に目配せをした。
すると、まるで軍隊のような統率された動きにより、今の説明の紙や看板が設置されていく。
「さて、リュシオル君、ルーチェちゃん、レオーネちゃん。キリキリ働いてもらうわよ?」
その笑顔をみたリュシオルたちは逆らえなかった。
そして冒頭の状態になったのである。
「ただいま~。」
教室に帰って来たのは、プワソン・エクラ・リンブルである。
「いいところに帰って来たわ!準決勝おめでとう!だが、早速着替えてもらう!」
少し血走った眼をしながら、衣装を抱え差し出した商人の生徒は怖かった。
「お・・おぅ・・・。着替えてくる。」
「わたくしもなのですね。」
「私にもあるのか・・・。」
勢いに負けて、3人は着替えに控室に向かった。
そして数分後3人は着替えを完了し、帰ってきた。
「よし・・・。準備万端!では3人にもキリキリ働いてもらうわよ?」
そう告げた後、再び女生徒は大きな声を出して、教室に声を響かせる。
「大変長らくお待たせしました。武闘会に出ていた3名も帰還しましたので、これよりこの3名も指名制のとなります。奮って指名をお待ちしています。」
それを聞いて瞬時に理解したプワソンは少し顔が青くなっていた。
「どういうことですの?」
「俺たちはどうしたらいいんだ?」
「簡単に説明すると、指名されたら、砂時計の砂が落ちるまで指名してきたお客様を楽しませること。簡単でしょ?」
その言葉を聞いたエクラも少し表情を引きつらせた。
「要は、客と喋って楽しくさせたらいいんだな?」
「よくわかってるじゃない。そういうことだからがんばってね?」
「簡単じゃないか。俺に任せとけ!」
リンブルは自信満々に答えた。
「リンブルはこういうことが得意ですの?」
「よく街のおばちゃんとかとしゃべることが多かったし、喋ることは好きなんだぜ?」
「それは初めて知りましたわ・・・。」
リンブルの意外な特技にびっくりしたのだった。




