~217~
むさ苦しくなった観客席からはベリエを応援する声が多くなっていた。
「お嬢ちゃん!頑張れよ!」
「君は俺たちの女神だ!」
すごいことを言われていた。
「体格がいい方からの声援が凄いですわね・・・。」
「脳筋から好かれるのか・・・。」
マッチョたちの声援に笑顔でベリエは手を振り、それを見たマッチョもさらに声を上げるのだった。
野太い声で会場が埋め尽くされた後、試合が始まった。
「やっ!たぁ!」
「ふっ!はっ!
ベリエの相手は槍使いだった。
相手はリーチが長いことを武器に、ベリエを近づけさせない。
「はぁ~中々近寄れないわね。」
「近寄られたら、吹っ飛ばされちまうからな。それにしてもお前いい動きしているな。」
「鍛えているからね。そこらの男には負けないわよ?」
「それは頼もしい。是非とも俺の女にしたいところだが・・・。周り反応が凄いな・・・。」
相手が俺の女と言葉を発した瞬間に会場から殺気が放たれた。
誰がどこから殺気放っているか、分からないぐらいである。
「どういうこと?なに?変わらないわよ?」
「こっちの話だ。さて、試合の続きをしようぜ?」
「望むところね。」
再び構えて、戦いが始まった。
「ベリエもすごいな~。槍とあそこまで戦えるなんて。」
「そうですわね。無手と武器有りは大きく差がありますわ。確かにグローブには鉄が施されていますが、ダメージはあるはずですわ。」
「そうだな。手へのダメージが溜まってくるはずだ。」
生身で武器と戦っているベリエは不利なはずである。
「そろそろギブアップしてもらいたいな。」
「それはできないわ。あなたぐらいなら倒せないとおかしいわ。」
「すごい自信だな!」
ベリエと槍の選手は戦いながら会話していた。
~ベリエ選手はすごいですね。女は体力がない・根性がないと言われていた言葉を払拭するような動きです!~
~戦いが似合う女性ですね~。ここまで美しく戦われると、男がむさ苦しくて仕方がない!~
司会のナイスな冗談で会場が少し和やかになった。
~おっと!ベリエ選手勝負に出た!~
一旦距離を取ったと思った瞬間、そこからダッシュをかけた。
「それじゃあ格好の的だぜ!」
突き出された槍に向かってベリエは勢いを止めることなく突っ込んでいく。
~ベリエ選手は槍に突っ込んでいく!投げやりになったのだろうか!~
突き出された槍からベリエのニヒルな笑みが見えた後、一瞬で姿が消えた。
「どこだ!」
槍の選手はベリエの姿を見失ってしまった。
会場も見失ったが、すぐに居場所が分かった。
「ここよ?じゃあおやすみ!」
ベリエが現れたのは、槍選手の背後であった。
槍に向かって走った後、スライディングをして背後に回ったのだ。
その時の音も丁寧に風で消している。
~鮮やかな手際でした!後ろに一瞬で現れたように見えましたが、どのようなことをしたのでしょうか?~
~よく見ていたのですが、槍に刺さる直前にスライディングをして、背後に回ったようです。~
~ですが、それなら音が鳴るはずで、相手にも気づかれるのでは?~
~いいところに気が付きましたね~。たぶんですが、風魔法を使ったのではないでしょうか?~
~なるほど!では、風使いということですね!~
ベリエの戦闘スタイルについての話が司会から解説があった。
「見事でしたわ。さすがベリエですわ。」
やはり、同じ女の立場であるエクラはとても喜んでいた。
~それでは、本日の武闘会は終了します。明日は準決勝からのスタートとなります。なお、催し物は続きますので、この後も学院祭をお楽しみください。~
司会の挨拶により、武闘大会の準決勝までの試合が終了した。




