~216~
いよいよプワソンの試合が始まった。
「さすがに魔法無しはつらいんじゃないかな?」
「身体強化はするはずですよ。だってほら。」
レオーネに言われて見ると、魔力を巡らせているプワソンがいた。
「そうだよな。相手選手もしているのだからするべきだよな。」
「互角の戦いが望めなくなるしね。この勝負はプワソンが貰ったね。」
「はい。魔力操作込なら確実にプワソン君の勝ちです。」
レオーネは自信満々に答えた。
試合を見ていると、ものすごい速さで斬り合っていた。
「うわ~。全然見えないです・・・。」
「それじゃあ、疲れるかもしれないけど、目に魔力を少し多めに巡らせてごらん?」
見えないというレオーネに助言した。
「お!見える見える!」
「ほんとです!見えます!」
「こういう使い方もあったことも忘れていましたわ。」
エクラは知っていたようだが、忘れていたようだ。
「これも欠点があるんだよね。見えはするけど、自分の体はその速さについてこれないという欠点が・・・。それもクリアするとああなるんだけど、あれはプワソンの努力だな。」
これを実践できるまで何度血を吐いたことかと思われる訓練をしていたのではないかと思うが、天才のプワソンはそんなことはなく少しの努力で身に着けたのではないだろうかと思案するのだった。
そして、長いようで短い斬り合いが終わりをむかえようとしていた。
「相手の魔力が底を尽きようとしているな。」
「では・・・。」
「次で決まるぞ?」
予知したかの如く、プワソンが駆け出した瞬間に相手は倒れてしまった。
「ありゃりゃ。ぶつかる前に倒れちゃったか。」
「プワソン君の勝ちですね!では、走ります!」
「わたくしたちも後で行きますわ。」
「グルナはどうする?」
ずっとおとなしく見ていて、喋らなかったグルナに声を掛けた。
「我はぬし様と共に。」
「わかった。なら、抱き上げた方がいいな。」
スッとグルナの脇の下に腕を持っていき抱きかかえた。
すると、ぶらーんと足を伸ばし、揺れている可愛いグルナが出来上がった。
「(なにあれ・・・。鼻血が出そうですわ・・・。)」
「(破壊力が凄すぎる・・・。)」
小ライオンを抱える美男子は女性にはご褒美だったようだ。
「可愛い・・・ハッ!急がないとです!」
「じゃあ、後は頼んだ。」
レオーネとリュシオル(プラス1匹)は教室に走っていった。
「さて、後はベリエだけですわ。」
「ベリエも勝ち進むんじゃないかな?」
「そうですわね。ベリエは強いですもの。」
リンブルとエクラはこの後の試合展開を予想するのだった。
一方控室に戻ろうとしていたプワソンの前に人影が現れた。
「父上・・・。」
「頑張っているようだな。だが、まだまだなところがある。」
「はい・・・。」
「だが、見ていて飽きない試合だった。明日も楽しみにしているぞ。」
「・・・はい!必ずや父上を満足させてみます。」
ゆっくりと出口に向かって行く父を目で追いかけるのだった。
見えなくなった後、プワソンは控室に寄った後に観客席に向かった。
「あれ?リュシオルとレオーネは?」
「あ~教室の方に戻って行ったぞ?」
「そう言えば催し物もしているのだったな。」
「朝も大変だったもんな。それに、リュシオル達は、服装そのままでの観戦をさせられていたから、この後も大変じゃないかな?」
目を肉食獣のような獰猛な目つきで食い入るようにリュシオルを見ていた女生徒が、リュシオルが走った瞬間に席を立ちあがり、後を追いかけて行った。
それも膨大な数が出ていった。
「あら。ではベリエの試合は観客が少ないってこと?」
「いや?男が多くなっただけだぜ?」
そう言われ、エクラが見渡すと男ばかりになっていた。
「・・・これはこれで壮観ですわね。」
「あまり見たいものではないな。むさくるしい・・・。」
「激しく同意しますわ。」
3人ともげんなりしていた。




