~214~
リュシオルが自分の世界から帰ってきたのは、リンブルが戦っている時だった。
「あ・・・。もう始まっていたのか。」
「おかえりなさいませ。考えはまとまりましたでしょうか?」
「あぁ。満足するまで考えれたよ。」
「それはよかったです。」
ルーチェとの会話をしながら、視線を中央に戻した。
「中々な試合を繰り広げている。が、経験値があっちの方が高いと思われる。」
「そうですね・・・。リンブル君が押されているように見えます。」
「リンブルもここぐらいじゃないかしら?」
「ベリエちゃんおかえり!カッコよかったよ!!」
「ただいま。そしてありがと。」
にっこりと微笑みながらレオーネにお礼を言う。
「こう見ると女帝とかも似合いそうだな。」
「あら?そこまでかしら?でも戦い方は女帝じゃないわよ?」
「ただの雰囲気だよ。戦乙女とかの戦士系の名前になりそう。」
「カッコ悪い名前じゃなければ構わないわ。」
あんまり重要視していないみたいで、リンブルの試合に目を向けた。
「あら~。押されてきているじゃない。これは時間の問題じゃないかしら?」
「あ!」
ベリエが時間の問題だと言った直後に、リンブルが膝を着いた。
その後何とか立ち上がったが、本当にギリギリだった。
「結構ダメージ蓄積されていたからね・・・。素早さが売りのリンブルにはきつかったかな?」
「確かに・・・。相手は持久力のある戦い方。盾役の選手だ。リンブルには苦手な相手だったな。」
リュシオルとプワソンが喋っている間に相手選手からの突撃を食らい、吹っ飛んで場外に飛ばされてしまった。
「!!どうしましょう!リンブル君が!」
「大丈夫。疲労が溜まって気絶しているだけっぽいから休んだら目を覚ますよ。」
その言葉を聞き、レオーネは胸を撫で下ろした。
「リンブルは残念だった。リンブルの代わりに私が。相手は違うが敵を取ってこよう。」
「気合が入っているわね。だけど気を付けて。」
「怪我しないように気を付けてくださいね。」
「ありがとう。」
プワソンはふわりと笑顔を浮かべて控室に向かった。
残されたメンバーは口を開けて固まっていた。
「プワソンのあんな笑顔初めて見たわ・・・。」
「俺も・・・。」
「私もです・・・。」
「確かに見たことないですね。」
ベリエ・リュシオル・レオーネ・ルーチェの順番に口を開いたのだった。
その後、レオーネは頬を両手で挟み、いやんいやんと体をくねらせていた。
「その・・・レオーネはどうしたんだ?」
いち早くリュシオルがそれに気づき、そっとベリエに耳打ちするとそれを見たベリエがため息を一つもらし、小さな声で理由を教えてくれた。
「あれは病気よ。その内終わるから、気にしないで。」
「病気ってまさか・・・。」
「恋の病よ。普通なら叶わないけど、本人には頑張れば叶えることが出来るかもしれないとだけ言ってある。もし、婚約者がいて間に入る隙が無ければ諦めてもらうつもりだったけど、エクラの話によると、そういう話はないそうだから応援しているの。」
「そっか・・・。叶わない恋かと思ったけど、叶えることはできるんだね。」
「えぇ。裏道って言うか抜け道とでもいえばいいのか・・・。偉業や功績を残したものには爵位が与えられることがあるの。名誉爵位で一代限りになったりするけど、これが魅力的でうまくいけば貴族の人と結婚できてしまうのよ。ただ、名誉貴族は土地を持たないから名前だけってなるけど、それは偉業や功績を1回だけ残した者の話。2回目になると、しっかりとしたと言ったらおかしいけど、本物の貴族の仲間入りをして、1代限りではなくなるわ。」
ベリエはすごく詳しかった。
それも資料に載っていることを説明したみたいである。
「そんな制度が・・・。」
「そう。これも調べたことよ。」
「もしかしてレオーネのために?」
驚きだった。
ベリエは時間の合間を縫って、ベリエのために調べていたらしい。
「そうよ・・・。友達が望んでいることを叶えてあげたいじゃない。」
「そっか。じゃあレオーネは1回で十分ってことか。」
「そのとおり。だけどその1回が難しいのよ。」
たぶんベリエの表情はレオーネのために色々と考えているのだろう。
思うようにいかないといった表情を浮かべながら試合に目を向ける。
「エクラの試合を見たら私も控室に行かないといけないわね。」
「はっ!エクラちゃんの試合って始まっちゃってる?!」
「まだよ。レオーネも中々妄想の世界から帰ってこなかったわね?」
「はぅ・・・。だって・・・。」
「はいはい。そろそろ友達の応援をしなきゃね。」
「そうだね。」
まるでベリエはお母さんみたいである。
レオーネをいとも容易く操っているように見える。
「エクラちゃんがきたよ。」
「ホントだ。頑張れ~!」
レオーネが大きな声で叫んでみるが、会場も大きな声で声援を送っているので聞こえている分からない状態である。
しかし、エクラは聞こえたのかこちらを向き、手を少し振っていた。
「エクラちゃん聞こえたみたいだよ!」
「そんなことはないと思うけどな。」
「たぶん、レオーネの大きい声を出す姿を見て、気づいて手を振ったのかもしれないわね。」
そう言われるレオーネの格好は、立ち上がって両手を口の横に持ってきて大きな声を出す仕草をしていたのである。
誰が見ても、そう答えるであろう格好だ。
「なるほど・・・。さすがエクラちゃんだね。」
「そうね。」
和む2人の会話が終わった後、ちょうどエクラが試合前の礼をしているところだった。




