~207~
その日の夜、リュシオルはシャドーブラックの姿で夜の空を飛んでいた。
ふっと飛行を止め、屋根に降りた。
「・・・・。いるんだろ?」
「バレましたか。」
声を掛けられて現れたのは黒いフード付きのいかにも黒魔術とかしていますの雰囲気コートを着て、下を向いたまま出てきた。
声は変えている様子はなく、地声の様である。
そして、聞いた感じ幼い声であった。
「やはり分かる人には見つかってしまいますね。隠しきれない僕のオーラが困ったものですね。」
「いやいや。それだけ巨大な魔力を隠さずにいたら誰でもわかると思うが?」
「あれ?うっかりしていましたね~。隠したつもりだったのですがね・・・。」
「隠す気ないだろ?それで目的はなんだ?」
これだけ怪しい奴がいることに警戒し、戦闘態勢を取って喋っているが一向に相手は動じずに、無防備に話を進めていく。
「いや~空に大きな鳥が飛んでいるのが見えましてね?是非とも近くで見てみようかと思いまして。」
「俺が目的か・・・。」
「そうですね。最近名の挙がっているあなたが気になりまして。」
楽しそうに会話をしようとして来る黒ずくめにどう対応していいか分からなくなってくる。
「一目見ようと来ただけなので今日は何もしないですよ。今日はね?」
「お前は誰だ?」
せめての手がかりを探そうと声をかける。
「そうですね~。〖A〗とでも名乗っておきましょうか?それが僕の通り名ですね。」
「あの組織か・・・。」
「そういえばあったことあるんでしたっけ?あ~末端のやつらだったね。ちょこちょこと勝手に動いたり、言うことを聞かなかったり、どんくさかったり・・・。組織って難しいね~。そういえば名乗っていなかったね。君だから特別に教えてあげる。僕たちは〖ダーククライム〗ここまでだね教えれるのは。」
「それさえもわからなかったのだからお前の組織はうまくやっているよ・・・。」
皮肉を込めて言うと・・・。
「それはそれは光栄だね!でも探したら組織の名前ぐらいバレると思うよ?いくつか流れているし。」
今まで知らなかったのが不思議だねとでも言うような仕草をする。
「知らなくて悪かったな。だが、せっかくの情報源の人間。しかも幹部クラスだ。捕まえさせてもらう。」
「お~!怖い怖い!なにもまだしていないのにお縄にしちゃうのね?僕怖い~。っと冗談はこれぐらいにして僕はこれでお暇させてもらおうかな?じゃ~ね~。」
「待て!」
慌てて黒ずくめに手を伸ばし、無詠唱で魔法を発動したが消え去った後だった。
「くそ・・・。やはり幹部だけあるか・・・。」
かんたんには捕まえることが出来ないようだ。
「幹部クラスが王都の街に来ているってことは近いうちに何かあるのか?」
腹立たしさと煮え切らない思いを抱きながら寮へ飛んで帰って行った。
その頃姿を消した〖A〗は・・・。
「怖いですね~。シャドーブラックがあそこまで鋭いとは思わなかったですね。」
少し離れた木の陰から飛んでいく様子を眺めていた。
「〖A〗何しているのかしら?」
「これはこれは〖Q〗ではありませんか。」
「これはこれはじゃないでしょ?!〖K〗が〖A〗はどこへ行ったのだと探しておいでだったわよ?」
「これはお手数を掛けました。早く帰ってしまいましょうか。」
「単独行動は控えてほしいところだわ。これからの計画があるのに。」
「そうでしたね。でも相手さんも警戒しているとこだと思うよ?」
〖Q〗はため息をついて、先に帰って行った。
「置いていかないでくださいよ~。」
慌てて〖A〗も消えていった。
リュシオルはというと寮の屋根に着地し、転移で部屋に帰って行った。
「(俺に会う理由が分からない・・・。敵情視察か?)」
コートと仮面を脱ぎ捨て、ベットに飛び込んだ。
もやもやとしたまま、無理やり目をつぶり意識を落とした。




