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「さて、サイズはちょうどいいわね。」
2人のコートを着た姿を確認して、エーヌは頷く。
「いい仕上がりだ。感謝します。」
「いいのよ。後、余ったのでこんなのを作ってみたわ。」
取り出すと、ケルベロスの着ぐるみだった。
ちなみにデフォルメされているパターンである。
「こ・・・これは?」
「可愛いでしょ?寝る時に着たら暖かいかなって思って。野営で着たら最高よ?」
「確かに外の夜は寒いですからちょうどいいですね。」
きゃぴきゃぴとルーチェとエーヌは喜んでいた。
ちなみにリュシオルもこういうのが好きなので内心喜んでいたのだった。
「これはいいですね。夜は暖かいほうがいいからこれは助かります。寝袋みたいに使いますね?」
「その使い方が正解だね。寝袋より機能的でしょ?」
「はい。」
「では、報酬をいただこうかね?」
約束していたクッキーをアイテム袋で渡した。
「ん?これは?」
「自作のアイテム袋ですよ。時間も止まっているのでいつまでも保存が可能です。」
「!!!それはいいものを貰ってしまったな。また服でも作って渡さないといけないな。」
突然のカミングアウトにエーヌはびっくりしてしまっていた。
「エーヌさんから見ても魅力的ですか?」
「もちろんだとも。こんなの探してもないし、あったとしても王族が持っているぐらいじゃないかな?だから、新作の服が出来たらタダで渡すよ。たまに甘味をいただけるとありがたいかな?」
今回の依頼だけでは満たしていないと思ったのか、また服を作ってくれるそうだ。
ただ、甘味に飢えている女性の執念はすごいのだ。
「それぐらいならいくらでもいいですよ。」
そういうと、エーヌは目をキラキラして乙女の顔になっていた。
「約束したぞ?絶対だからね?」
念を押して約束をした。
すべてを受け取り、エーヌの家を後にした。
「いい買い物が出来たな。」
「そうですね。これはいいものですよ。布団がなくても暖かく着れそうです。」
さっきのコートを着て、ケルベロスの着ぐるみを抱きしめてルーチェは歩いていた。
「コートよりそっちの方が嬉しいのか?」
「あ・・・はい・・・。可愛いので。」
少し恥ずかしそうにしながらも答えた。
「そうだよな~。女の子は可愛いものが好きだよね。」
小さく呟きながら、屋台の方に歩いて行った。
「これからどうされるのですか?」
「なんとなく屋台のチープなのが食べたくなったから食べに行こうかと思って。ついでにレオーネが行った治療院も見てみたいからね。」
後半が本命なのだが、あえてごまかした。
「たまに屋台の物を食べると美味しいですよね。それにこちらを通ると治療院に行けますしね?」
「そうなんだよね。レオーネのことが気にならないか?」
「確かに・・・。少し心境の変化が見られましたし・・・。なんか色々あるようですし。」
最近のレオーネが変わったことが気になるようで、少し観察することにしたようだ。
「何もないんだったらいいけど、思い詰めてたりしてたら・・・ね?」
「そこまで心配はないと思うのですが、リュシオル様が望むなら。」
ルーチェは心配いらないと言っているが、それでも気になっているので見て何もなければ帰ることにした。
屋台で少しお腹を満たし、治療院に行った。
「どこから覗きますか?」
「平屋の様だし、庭から気配を消して覗いてみるか・・・・。」
裏庭の方に回り、気配を消した。
「これでもばれるかもしれないから、こんな時のための・・・『カモフラージュ』」
姿を完ぺきに隠して、覗いてみることに・・・。
「こっちにプチキュアを!」
「先生!こっちはリカバリーをお願いします。」
「レオーネさん!こっちに来てください。」
中では慌ただしく働いていた。
患者は多いが見る先生が足りないような状況の様だ。
「レオーネさん・・・。すいませんこんなに働かせてしまって。」
白衣を着た壮年の先生がレオーネに声をかけた。
「いえ。ここでは実戦で治療の練習・・・訓練が出来ますので身になっています。」
「そう言ってくれると助かるよ。だけど無理はしないでおくれよ?君は学生なのだから。」
「はい。お気遣いありがとうございます。」
忙しく働きながらも、働いている者に声をかける先生はここの医院長なのであろう。
よく周りを見て、指示を飛ばしていた。
「充実しているようだな・・・。」
「そうですね。」
「相談を受けたら乗ってあげて。」
「分かりました。」
そっとその場を離れて転移し、寮に帰っていった。




