~201~
「(私の番が近づいてきた・・・。無様なことはできないな・・・。)」
廊下を歩きながら、これからの試合に向けて考えていた。
すると、曲がり角で人とぶつかってしまった。
「すまない!」
「こちらこそ・・・。君は・・・。」
「ラークです。こうやってお話しするのは久しぶりな気がします。」
「そうだな。小さい頃に喋った以来だな。」
「これから試合ですか?」
「あぁ。」
「頑張ってくださいね。」
「応援されるとは思わなかった。ありがとう。頑張ってくるよ。」
突然の応援にびっくりしたが、素直に気持ちを受け取った。
再び歩き出し、控室へと入って行った。
「プワソンはどんな戦いをするのかな?」
「そうだな~。剣が主体だから、綺麗な剣技でするんじゃないかな?」
「じゃあ、王子とか貴公子とかがつくかしら?」
「見た目もそうだしな。」
「王子はいるから、貴公子か騎士・・・そんなとこだと思うけど。」
2つ名の予想を立てながら、プワソンの試合を待っていた。
アナウンスが流れ、いよいよプワソンの番になった。
「始まりましたわ!」
「エクラと同じく中央から始めるみたいだな。」
プワソンは中央で構えて微動だにしなかった。
「待ちの構えですわ。あれを見るのは久しぶりですわ。」
「エクラは見たことあるのか?」
「えぇ。あれは家の訓練場で私兵と組手をしているときに見ましたわ。その時はすごかったですわ。」
「多数と戦う時の戦い方なんだな。」
「動き始めました!」
見ていると、襲ってきた生徒が死角から来ても対応して倒して行く。
「ホントに死角がないな・・・。」
「周りからの言葉は?」
会場からの言葉を拾っていくとこうだった。
「すごいですわ・・・。」
「あんな騎士に守られたい!」
「それより貴公子じゃありませんこと?」
「いえ、戦いは騎士ですわ。」
「騎士に決定だな・・・。」
プワソンの話題は騎士様と流れていた。
「いいな~。かっこいい名前ばっかり上がっていってるじゃないか。」
「リンブルもいつか付くよ。」
「赤い犬とか?」
「犬ネタはまだ続いていたんだ・・・。」
そんなやり取りしている間に試合は進んで行った。
「そろそろ決着がつきそうだ。」
「最後の一人の様ですわ。」
プワソンと相対している生徒は肩で息をしていた。
「これは勝負がありましたわ。」
「全くプワソンは疲れていないのね。」
「すごいです・・・。」
エクラは余裕で見ており、ベリエとレオーネは感心していた。
「これぐらいはクレールス家として当然ですわ。」
エクラは胸を張って自慢をしていた。
試合が終了し、プワソンはこちらをちらっと見た後、競技場を後にした。
「私もそろそろね。プワソンが帰ってきたら向かうとするわ。」
「次はベリエちゃんか・・・。」
「噂のプワソンが帰って来たぞ?」
階段から上がってきたプワソンに手を振ると、手を上げて返事を返してくれた。
「おかえり騎士様。」
「騎士様ですって。」
帰って来たすぐの言葉にこれだった。
「やめてくれ・・・。なんだか恥ずかしい。」
「プワソンが恥ずかしがったのって初めて見た・・・。」
初めて見る光景に少し固まってしまったのだった。
「なんか最近プワソンの表情とか雰囲気が変わってきていないか?」
「そうだね。最近感情の変化が表に出てきて付き合いやすくなった?」
「そうなのか?あまり自分では気づいていなかったのだが・・・。」
本人はあまり気づいていなかったみたいである。
「そうね。いい傾向だと思うわよ?」
「こっちの方が人間っぽいですわ。」
女の子側の評価もいいようだ。
「話もまとまったことだし、私も戦ってくるわ~。」
いつの間にか立ち上がって少し歩き始めながら手を振り控室に向かって行った。
「ベリエちゃん緊張しているね・・・。」
「そうなのか?」
「うん。あれは緊張しているところを見せないように離れてんだと思う。だって、まだ少し行くには早いんだもん。」
言われてみればその通りである。
「でも大丈夫だよ?やればできるベリエちゃんだもの。」
レオーネは自信満々に答えた。




