~199~
控室に着いたエクラは、戦略を練っていた。
「(あの圏はギリギリまで隠すことにしましょう。レイピアで予選は十分ですわ。それと、魔力は常に体に回しとくと・・・)あら?リンブルですわ・・・。」
「お?エクラか!5番目だっけ?」
「そうですわ。リンブルの試合を見てここに来たのですわ。」
「俺の試合どうだった?!」
「面白味がありませんでしたわ・・・。」
「いやいや。面白さはいらないだろ・・・。」
本当に残念そうにしながら指摘し、それに少し落ち込んでリンブルは返事するのだった。
「そろそろ準備しますから、皆の元に戻って、わたくしの華麗な剣技でも見て勉強すればいいですわ。」
「お・・おぅ・・・。とりあえず頑張れよ?」
「もちろんですわ。」
とびっきりの笑顔でエクラは返事をした。
「お~帰って来たか!」
「もっと面白い展開を予想していたのだが・・・。」
「そうね。リンブルなら何かやってくれると思ってたんだけど・・・。」
「そうですね。リンブルさんに期待していたのですが。」
リュシオル・プワソン・ベリエ・ルーチェの順に声をかけた。
「え・・えっと・・・がっかりですぅ?」
レオーネが何か言わないといけないと思って言った言葉は、リンブルを叩きのめした。
「俺だってさ・・・。頑張って修行して・・・訓練してさ・・・ブツブツブツブツブツブツ。」
椅子ではなく、地面に体育座りをして地面に丸を書いていた。
「レオーネに1万ダメージを与えられたな。」
「ふぇ?ご・・ごめんなさい!何か言う約束になっていて!あれ以外が思いつかなくて・・・。」
「いいんだ・・・。俺なんて・・・。」
「うむ。放置しておいたらその内回復するだろう。」
「確かにエンターテイメント性がなかったな。そこも出来るようになったら上を目指せるようになるんだけどな。」
「え?そうなのか?」
いつの間にか回復してリュシオルの隣に座っていた。
「回復早っ!エンターテイメント。つまり見せる闘いというのは自分に余裕がなければできないことなんだ。そして、どう戦えばいいかなどを考えることも必要になる。つまり、本当の戦いにおいて状況判断が自分で出来るようになるってことだ。」
「そういう考えもあったのか。」
「そういうこと。それに今回の場合は戦い方を事前に考える時間もあった。自分の戦い方をしっかりと把握し、それを使いこなすということも大事な要素だね。」
「ふむふむ。勉強になるな・・・。」
深く頷き、納得していた。
「確かにさっきの戦いは猪突猛進・・・。1つの戦い方で暴れ回っただけ。そこに戦略も何もなかったから皆に責められたのさ。」
「私はリンブルの戦っている時に説明を聞いて、なるほどって思ったんだけどね。」
「ベリエもさっき知ったのに俺を責めるんじゃね~!」
「ふふふ。ついね?」
幼なじみの軽い喧嘩が始まったのだった。
「それにしても他のブロックも強い人がたくさん出てきているな。」
「あの人は2年生の人よ。」
「へぇ~。通りで見たことないわけだ。」
「でも、結構有名な先輩らしいよ?」
「ベリエは知っているのか?」
「え?噂になっているのを少し聞いただけで全然知らないわ。」
リュシオルの周りはあまり他に興味がないのか、先輩やかっこいい人とかミーハーなことに無関心の様だった。
「そろそろ4番目が終わりますよ。」
「次はエクラだな。」
「激励してから上がって来たけど、余裕そうだったぜ。それに華麗な剣技を見ておけって言ってたな。」
「なら、姉はレイピアの木剣を使うみたいだな。」
現れたエクラはプワソンの言ったとおりにレイピア型の木剣を持っていた。
エクラは中央に陣取り、開始の合図が流れた。
「え?中央に1人?」
「誰も飛びかからないです。」
「いや。様子をうかがっているのさ。」
すると、胸の前に剣を掲げ、目を閉じた。
「目を閉じたぞ?!」
「始まるから見ておけよ?」
すると、エクラは舞うように動き出した。
「きれ~。まるで踊りを見ているみたい。」
「確かに。来ている服も、少しヒラヒラしたものだから舞姫みたいだね。」
会場はエクラの戦いを見てそう評価していた。
「お~エクラすごいじゃん!」
「リンブル。これで分かっただろ?」
「え?何が?」
「エクラのを見て何か思わないか?」
リンブルは分かっていなさそうなので、諭すように問いかけた。
「周りが言うように、舞姫みたいに・・・。まさか!」
「そう。エクラは2つ名の方向性が見えたってこと。」
「なるほど!そういうことか!」
「つまり、普通の戦いをしたリンブルに2つ名は?」
「付かないってことだな。他人の評価って大事なんだな・・・。」
さっきの戦いがあまりよくなかったと自覚し、そこからリンブルは思考にふけるのだった。




