~197~
皆さんは彼を覚えているだろうか?
リュシオルに勝負を挑み、簡単に負けてしまったラーク・シュバリエ。
彼は今・・・。
「はぁはぁ・・・どうやればあのような強さが手に入るのだ?」
寮の裏で木の刀を振っていた。
「何の努力をすればいいのだ?これだけしても能力が上がらない・・・。もしかして実戦経験が足りないのか?」
自問自答しながら、途切れることなく素振りをする。
「ラーク君もうそろそろ時間だよ~。」
「あぁ。すまない。行くよ。」
ルームメイトに呼ばれてように帰って行った。
部屋で食事をした後も魔力操作の訓練をしていた。
「くはっ!はぁはぁ・・・。これはきついな・・・。」
全身に魔力の膜を張り、その上からさらに膜を張る作業をして、3枚目でダウンした。
「これでは、あいつに届かない・・・。」
倒れるようにそのまま寝るのだった。
そして・・・。
夢の中で黒いモヤが語り掛けてきた。
『力が欲しいか・・・。』
「誰だ?!」
『お前は力が欲しいのか・・・?』
「あぁ欲しい。絶対的な力が欲しい!」
『ならば、森に行くがいい・・・。』
「森だと?待て!どこに行く!」
語り掛けてきた黒いモヤはスーッと消えていった。
消えたところで目を覚ます。
「何だったんだ?あれは・・・。」
その次の日も同じような受け答えをする夢をラークが見た。
「一体森に何があるんだ?毎晩毎晩同じ夢を見る・・・。」
「どうしたの?」
同室のルームメイトから質問を投げ掛かられた。
「いや・・・。ここ最近同じ夢を見るんだ。」
「へぇ~。どんな夢なんだい?」
「森へ来いという夢なんだ。」
「それは変わっている夢なんだね~。でも、気になるんだったら一回森に行ってみたら?」
「そうだな。自分で調合している傷薬も切れてきそうだから薬草を採取するついでに行ってくることにするよ。」
「そうした方がすっきりするもんね。じゃあ僕は寝るよ~。」
ルームメイトにおやすみの挨拶をし、就寝した。
そして次の日、不審に思いながらも森に行くことにした。
まず、王子に傍を離れる許可を貰い、森に行くことに。
「森と言えばここになるのだが・・・。」
すると遠くで声が聞こえてきた。
『・・・・。』
「あっちの方で声が聞こえる・・・。」
聞こえてきた方向に進んで行くと、なぜか草木が生えていない広場に着いた。
「なんだここは・・・。なぜここに草木が1本も生えていないんだ?」
『よく参った。そなたに力を授けてやろう・・・。』
「この声は夢の中の・・・どこだ?!ぐあっ!!」
すると背中からすごい衝撃を受けて、ラークは倒れてしまった。
「くっ!何があったんだ?!背中に衝撃があったが・・・。」
腰辺りを触っているが、血の出た形跡がなかった。
「あの衝撃は何だったのだ?」
まだ少し背中に痛みがあるが、それだけだった。
周りを見渡しても何かいる気配も全く感じられなかった。
「いったいなんだったのだろう?あれ?ここに何しに来たのだったかな?」
ラークはなぜここに来たのか分からなくなってしまった。
「他に目的があったような気がしたが忘れてしまったな・・・そういえば、薬草を摘みに来たんだったな・・・摘んで帰るとしよう。」
本来の目的を忘れたラークはついでの目的を果たして寮に戻るのだった。
そして、背中に走った衝撃の正体は後ほど明かされることとなる・・・。
久しぶりの登場ですね。




