~195~
放課後、再びクレールス家を訪ねた。
「お話は伺っております。どうぞお通りください。」
「ありがとう。他の人はもう揃っていますか?」
「旦那様が少し遅れているだけで、後の方は到着されています。」
「分かりました。」
玄関に行くと、侍女が待っていた。
「シャドーブラック様。シャインゴールド様ご案内します。」
案内され、応接室に到着すると当主以外が揃っていた。
プワソン・ギルドマスター・シフラそして、リュシオルとルーチェだ。
「さっそくしてくれたみたいで・・・。」
「あぁ。早くしないと対策も練れないからね。」
「そろそろお父様が帰ってくる頃だと思うけど、もう少し待っててくれ。」
ソファーに座ると、侍女から黒い飲み物が差し出された。
その飲み物は知っている匂いを発していた。
「これは・・・コーヒーじゃないか・・・。」
「ん?これは南部で手に入れたコヒという飲み物なのだが・・・。飲み方がいまいちわからなくて・・・。苦い飲み物だな・・・。」
「これは好みの飲み方で飲むんだ。ミルクと砂糖を用意してくれないか?・・・蜂蜜は俺が提供するよ。」
そう言って、蜂蜜を取り出して侍女が他の材料を持ってくるのを待った。
「これは、苦い味が好みの人は入れたそのままで。苦みと甘み両方を味わいたい人は砂糖・蜂蜜を入れて。まろやかな味わいはミルクと砂糖または蜂蜜を入れて飲むんだ。」
「そんな飲み方があるのか・・・。私のもしてもらえないだろうか?」
「いいよ。じゃあ入れなおすね。ちなみにプワソンはどう飲みたい?」
「甘さ控えめで、まろやかにしてほしい。」
「了解。その前にプワソンの飲んでいるそのままの味を味見させてくれるか?」
プワソンに許可を貰い、プワソンの飲んでいた物を一口味見する。
「なるほどね・・・。あれぐらいの割合かな?」
味を把握し、コヒを入れ始める。
まずは道具がなく、布で手で持ってしていたので、紙でフィルターを錬成してガラスで専用器具を作る。
専用器具にフィルターをひいて、コヒを挽いたものを入れる。
そこにポットでお湯を入れるのだが、回しながら入れて少し蒸す。
その後ゆっくりと回し入れていき、コーヒーの完成である。
人数分のコーヒーをポットに作ったので、まずは1つのカップに注いでいく。
蜂蜜少量とミルクを入れてかき混ぜてプワソンに提供する。
もちろん侍女さんが運んでくれたが・・・。
「これはおいしいな。」
「でしょ?飲み方ひとつで美味しさが変わるのさ。」
「なら私はまろやか甘めでお願いします。」
「じゃあ俺はすっきりとして、美味しく飲みたい。」
「了解。」
手早く2人分を作り渡すと・・・
「これはいいですね・・・。ハマりそうです!」
「これいいな。眠気が取れそうだ。」
「このコヒは眠気を取る効果もあるのでいいかもしれませんね。」
「マスター!これはギルドでも入荷しましょう!」
「よ・・予算の問題が・・・。」
ギルドマスターは冷や汗を流しながら答えていたところに、助け船が来た。
「それなら、我が家から紹介しましょうか?」
「私からも商団に聞いてみますけど?」
プワソンとリュシオルからの助け船がやってきて、ギルドマスターは神が降り立ったような眼差しで見つめてきた。
「だそうだ。全てを考えたうえで入荷するか考えるから待ちなさい。」
「ちぇっ。すぐに入荷してもらえると思ったのに・・・。2人から紹介されたらどちらがいいか考える時間がかかるから遅くなるじゃない・・ブツブツブツ。」
最後の方は文句になっていたが、聞き取れなかった。
その話をしている間に、侍女に入れ方を教え、自分とルーチェの分を入れてソファーに座った。
すると、ドアが開いた。
「お待たせして申し訳ない。」
「いえ。ゆっくりさせていただいていたので大丈夫です。」
クレールス当主はすぐ様にソファーに座り、話をする体勢になった。
「それで、解体した結果はどうだったのか教えてほしい。」
「実物を見ますか?それとも口頭でのほうがいいですか?」
「実物を見た方が納得するから実物でお願いしたい。」
「では・・・侍女を下がらせてもらって、シフラさんも見たくなければ下がっていただいてもかまいません。」
「私は大丈夫です。」
シフラはしっかりと見るようだった。
当主は侍女をその間に下がらせて、机の上を片付けさせた。
「では出しますね・・・。」
机に出すと、皆が見て嫌悪感を出していた。
「これは気持ち悪いですね。」
「臓器が一つもない・・・。そして骨もないな。」
「これが動いていたのだな。」
三者三様の意見が出ていた。
「そしてこれがこいつの心臓部ですね。」
あの黒い脈動している物を取り出した。
「・・・これは・・・。」
「はい。人の命と憎悪を集めた物体ですね。見ているだけで吐き気がしそうです。」
じっくりと眺めていた当主が触ろうとしていたのをすぐさま止めた。
「触らないでください!何が作用するか分からないので。」
「そうだな。君も直接触っていなかったものな。それにしても気持ちが悪い。」
「合わせて、これの横に魔石が埋め込まれていました。たぶんですが、こいつの魔法・物理障壁の魔力の元となっている可能性があります。」
ここまで口を開かなかったプワソンがやっと口を開いた。
「昔はどうだったと?」
「昔は魔石はなかったそうだ。」
「なるほど・・・。」
それだけを聞き、また黙ってしまった。
「以上が解体した結果です。」
「よくやってくれた。感謝する。ではしまってくれ。」
「はい。」
魔動生物の解体した物を収納してこれからのことについて話し合いが始まった。
もう1話続くと思います^^;




