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寮に戻って来た後、軽く食事をしてリュシオルは異空間の家に来ていた。
「お父様。おかえりなさいませ。こちらにお泊りですか?」
桜がすぐに玄関で対応してくれた。
「今から研究所を作って解体をするから。」
「部屋の増築ですね。」
「そうだよ。どこに作るのがいいかな?」
「そうですね・・・。地下を作るのもいいですし、お父様ならさらに別空間を作ってそこに繋げる扉を付けて分ける方法も取れそうですが・・・。」
「その考えがあったか!ありがとう桜!」
「どういたしまして。」
桜はにっこりと笑い、リュシオルに褒めてもらって本当にうれしそうにしていた。
「おっと・・・。よく考えてくれたありがと。」
言いながら桜の頭を撫でた後、頬を染めながら撫でてもらった頭を手で触っていた。
「(お父様に褒めてもらえた・・・。すごくうれしい・・・。それに胸?魔石の所がいつもよりポカポカする・・・。)お父様!こちらに扉を作る方がよろしいかと!」
どこに作ろうか悩みながら歩いて行ったリュシオルを追いかけながら、場所の提案をするのだった。
扉を作る場所を決めて扉を作り、別の異空間を作ることにした。
「どれぐらいにしようかな?」
「まずは1部屋ぐらいがよろしいかと。その後は空間を広げるだけでいくらでも対応出来ると思います」
「そうだな。そこまで使うか分からないしね~。多用途に使えるようにした方がいいな。」
方針が決まったところで、ブツブツと呟き始めて陣を頭で作成していく。
「(お父様は本当にすごいです・・・。私はここの管理を任されて、外に出れるか分からないですが、いつかお父様と一緒に外の世界で歩きたいです。)では、私はこれで・・・。」
「桜も一緒に居てくれ。何が起こるか分からないから俺1人だと対応できないかもしれない。念のためにね。」
去ろうとしていた桜を呼び止めて、作った異空間の部屋に入った。
「うん。申し分ないかな?じゃあ早速するか。」
鉄を取り出して錬金術で机を作り、魔動生物を乗せた。
「これはいったい何ですか?」
「こいつは魔動生物と言って、桜と同じ魔石のコアで動いているんだけど、似ても似つかない物さ。」
「こいつが私と同じように魔石で動いているのですか?」
「だけど、こいつには破壊衝動と快楽しかない。だから粗悪品だと思う。」
桜は少し嫌悪感を出し、軽蔑する目を魔動生物に向けた。
「たぶんだが・・・人の作成に失敗して出来た生物かな?とりあえず、気持ち悪いけど解体してみよう。」
解体ナイフを取り出し、ナイフを突き立てるとすんなり切れていった。
「どういうことだ?まさか魔力で体を高質化させていたのか?」
「どうされたのですか?」
「あぁ。こいつに刀・・・バルトで斬りかかったんだが、全く斬れなかったんだ。バルトに切れないものはないんだけど。」
「僕に斬れない物はないんだけど、こいつは斬れなかったなぁ~」
刀が光り、バルトが人型になって魔動生物の切り口をのぞき込んでいた。
「強化しても斬れなかったもんな~。」
「もしかしてだけど、ドレインの効果を刃に付与したらいけるかもしれないね。」
「お!その方法もあったか!」
刃を滑らせていきながら答えた。
「中身は・・・魔石と・・・これなんだ?」
中に入っていたのは、魔石と何かわからない黒い箱だった。
「なんだこれ・・・。鼓動している・・・。」
「気持ち悪いね~何だろう?」
「とりあえず切り離しておくか・・・。魔石も取り上げて・・・。でも、こいつに内臓と骨がない。目の方と口の方は?・・・・中も入っていない・・・。」
解体していくと、本当に人の形に白い粘土で作って目と口・鼻の穴と耳の穴をあけただけの様だった。
「ということはこの取り出した黒い脈動する箱がカギになるのか・・・。」
「お父様・・・この箱・・・気持ち悪いです・・・。憎悪が凄い・・・。声が気持ち悪いです・・・。」
箱を見つめていた桜が耳をふさぎだし、後退って行った。
「これから声が聞こえるのか?」
「はい。『殺してやる!憎い!呪ってやる!』などの大勢の人の声が聞こえてきます。」
桜が聞こえると言っていたので、耳を澄ませてみるが、何も聞こえなかった。
「僕もきこえるよ~。たぶん物に宿った怨念じゃないかな?」
「人には聞こえず、物には聞こえるってことか・・・。この箱の作り方を知りたくないが、想像出来るな。」
「僕らのような存在は生まれにくいけど、これはどこにでも宿るしね。作ろうと思えば簡単に作れてしまうんじゃないかな?」
「簡単に作れて壊れにくい殺戮生物ってことか。」
「恐ろしいですね。」
「あぁ。これを作り出す人間が恐ろしいよ。」
解体の終わった魔動生物を別々に収納した。
「明日にこれの報告をしなければならないな・・・。」
「いったん戻られてはどうでしょうか?」
「そうだな。ジェイドに連絡をお願いしよう。」
研究空間から住空間に戻ることにした。




