~188~
案内された応接室には、アルシュとリンブルしかいなかった。
「あれ?女の子たちは?」
「湯あみに行っています。そろそろ帰ってくる頃だと思われます。」
そういうと、扉が開いた。
「待たせてしまったかしら?」
「いいや。俺たちも今来たとこだよ。やっぱりしてきたのか?」
「えぇ。血と汗と泥でドロドロだったからね。今から貴族の方に会ったりするのに失礼かと思って。」
「いいえ。女の子としての嗜みですわ。」
それぞれ喋りながら席に着いて行った。
「それで当主はいつごろ戻られる?」
「早馬をすぐに走らせたので、そろそろ到着されると思われます。」
「そうか。ではしばし待つとするよ。」
侍女が紅茶を用意し、ゆっくりと飲んでいるときに、馬の蹄の音が聞こえてきた。
「到着されたようだな。」
その後、誰かの走る音が聞こえ、ドアの前でその足音が止まった。
「お待たせして申し訳ない。仕事が長引いてしまった。」
「いえ。お気遣いなく。」
「そうですね。クレールス当主の仕事はたくさんあるかと思われますので。マスターの仕事より多いかと・・・。」
「いえ。あれぐらいすぐできないとね・・・。それで、緊急事態だって?」
「そうですわ。大変だったのですから緊急事態ですわ。」
「何があったか詳しく説明してくれるか?」
王都のダンジョンで起こった異常と、戦ったあの白い魔動生物の話をした。
「にわかに信じられないが・・・。王都のダンジョンでそんなことが起こったなんて・・・。」
「そうですの。彼が来てくれなかったら私たちはどうなっていましたことか。」
「それは、私からも礼を言おう。ありがとう。」
「いえ。緊急依頼で依頼を受けましたし、彼女たちとは友人ですので。気にしないでください。」
「それでは、私の気が済まないから、この後食事でも一緒にどうだろうか?」
「そうですわね。無事帰還した祝いに食事をしましょう!」
エクラが賛成し、セバスはそれを聞いてすぐに部屋を後にしていた。
「それで、話は戻るのだが、魔動生物とはどんなものだろうか?」
「確かに聞かされただけではよくわからないからギルド側としても見せていただきたい。」
「実際に見ていただく方がいいかもしれませんね。ただ、動かなくなっていますが、いつ何で起動するか分からないので、気を付けてください。では、ここで出すと床が汚れてもいけないので、中庭の方にでも案内していただけますか?」
「わかった。案内しよう。」
中庭の方に移動し、早速、魔動生物を出して見せた。
「これは・・・。なんと不気味な生物なのだ・・・。」
「人型ではあるが、こんな気持ち悪いのは、戦争で人が無残に死んだのを見るぐらい気持ちが悪い・・・。」
「こんなのがいるなんて・・・。恐ろしい・・・。」
3者共嫌悪感を出していた。
「そしてどうやってこれは倒したのだね?」
「こいつには、剣などの刃物・魔法が効きません。打撃ももちろんです。そして唯一効いたのが、針のような細い物での攻撃です。」
「針での攻撃か・・・。難しいな・・・。」
「魔法の方でもいけますが、精密なコントロールがいるでしょう。しかしそれでも倒せません。」
「なに?それで倒せないと?」
「はい。こいつは魔動生物。魔力で動いているので、内蔵されている魔力がなくならない限り、ずっと動き続けます。しかし、少し痛覚があるのか、針で刺された後、痛そうにしていましたがそれほどではありませんでした。」
「そうか・・・。」
「そして、この魔動生物は昔に使用されたことがあるみたいです。」
「もしや・・・歴史書に出てくる魔動生物と一緒ってことなのか?!」
「そのようです。」
クレールス当主はしていたようで、驚愕していた。
「では、なくなったとされていた設計図が誰かの手元にあるというわけか・・・。」
「そのようですね・・・。」
「それなら確かに緊急事態だ。これは王にも報告しなければなるまい。この件についてまた呼び出されるかもしれないが構わないだろうか。」
頷き肯定した。
「ありがとう。さて・・・。これについては研究したいので引き取りたいのだが・・・。」
「危険なので、お預かりしておきます。私の予想が正しければ、外に長時間置いておくと起動してしまうかもしれません。」
「!!それは危うい橋だな・・・。わかった。預かっていてくれ。」
危険が予想されたので、リュシオルは預かることにした。
「さて、辛気臭い話は今日はここまでにして、食事にしようか。」
「私たちはこれで・・・。」
「待ってくれ。」
マスターとシフラが帰ろうとしたが、引き留められた。
「せっかくだから、君たちも食事していってくれ。」
「いいのでしょうか?」
「一人や二人は変わらん。楽しんで行ってくれ。」
マスターとシフラを含め、大人数での食事となった。




