~180~
今回もリュシオルはまだ出てきません・・・
少し歩き回り、休憩場に到着した。
「ここなら魔物は出ません。ゆっくりできますよ。」
「ここがそうなのか・・・。」
岩壁に穴を掘り、広い空間を作ったような感じであった。
その休憩場にはちらほらと人がいた。
「意外と人がいるんだな。」
「さすがに休憩するのに魔物の出てくる場所だと安心できないからじゃないかな?」
「そうですね。でもこんな風に休憩場があるのは中級までらしいですよ。」
「じゃあ、上級はこういうところがないってこと?」
レオーネが頷いて肯定した。
情報を集めてくれているので、間違いない情報だ。
「とりあえず飯にしようぜ?」
「賛成!お腹ぺこぺこよ・・・。」
朝に食べて、そのあとずっと緊張したまま来たため、思っている以上にお腹が減っていたようだった。
「さて、何を食べようか?」
「人がいるからにおいの少ないものにしない?」
「なんで?」
ベリエは周りをきょろきょろ見渡してから小さな声で話し始めた。
「普通だったらこんなものを持っているなんてありえないでしょ?」
リュシオル手製のアイテム袋を指差しながら話を続けた。
「それに、まだ有名になっていない私たちがこんな過分なものを持ってるって知られたら襲われる可能性だって出てくるわ。」
「確かに・・・。いくらここが魔物が出てこないって分かっていても、人間にも注意すべきだな・・・。」
「そういうこと。人がいないときは美味しいものを食べることにしよ?」
「それでなくても美味しいものを食べるけどな?」
「じゃあ、パンに色々挟んであるあれ食べましょ?」
「サンド?って名前だったよな?」
「あれは片手で食べれるから重宝している。書類をしながら食べることが出来るものな。」
「プワソンって仕事人間だね・・・。」
プワソンの仕事の最中に食べる宣言を少し呆れながらサンドを食べ始めた。
「それにしてもここは快適だな。」
「温度が一定のような気がしますね。リュシオル君から聞きましたが、火山の所とか海の所とかあるみたいですよ。」
「へぇ~。いつか行ってみたいな。」
「強くなればいくらでもいけるよ。」
「確かにそうだな!」
和気あいあいと食べていると、後ろから声がかかった。
「こんにちは。私はファンテという者だ。そこのメンバーのリーダーをしている。」
「丁寧にありがとうございます。私たちはグロース・ファクトのリーダーです。」
「名前は教えてくれないのかい?」
「名乗りたいところなのですが、このようにしていますので。」
仮面を指差しながらファンテに告げた。
「そうだね。申し訳ないことをした。」
「いえ。こちらこそ素顔を隠して挨拶をして申し訳がない。」
「身のこなしが貴族様のようだね。でもこれ以上は詮索しないでおくよ。」
「ありがとうございます。それで、私たちに何か?」
「あぁ。知り合いがちょうど君たちの年代だったからもしかしてと思って声をかけただけなんだ。いなかったみたいだし、休憩中に申し訳なかった。」
「そういう理由でしたか。突然だったものでびっくりしましたが大丈夫です。」
「では、お互いダンジョンを頑張ろうな。」
「はい。あなたのチームもお気をつけて。」
全部、プワソンが対応してその場を終えた。
「こんなことがあるんだな。」
「そうね。それにしても私達の年代の知り合いってまさか・・・。」
「リュシオルたちのことか?まさかな・・・。」
とっさにリュシオルのことを思ったが、ないと判断したようだ。
しかし、実際は知り合いである。
出会いとは分からないものである。
「さて、食べたことだし、先に進むか・・・。」
「そうだな。そろそろ動かないとな。」
「ある程度したら野営の準備をする。もちろん休憩所でだ。」
「分かってるよ。見張りの順番とか決めないとな。」
「あぁ。もちろんだ。」
重くなった腰を上げて、ダンジョンを進む。




