~176~
初級ダンジョン制覇から、数日過ぎていた。
あれから、学院や寮で夜会う以外みんなとの時間が無くなってしまっている。
これも、学院祭が近いゆえだと思うが、リュシオルはなぜか胸騒ぎをして仕方がなかった。
「リュー君に会うのが久しぶりな気がするわ。」
「ベリエか・・・学院祭の準備で忙しいからね。仕方がないよ。」
「そうね。授業では会ってるけど、それぞれに時間がないからね~。」
休み時間になると出店の話し合いや書類やらで生徒は慌ただしかった。
実際、女の子たち(ルーチェ以外)にはあまり会っていないのだ。
「それでどうするの?武闘大会は。」
「それは交渉して出ないように持っていくよ。もしくはあっちで特別出演するぐらいかな?」
「そうね。リュー君が出たら誰もかなわないもの。」
ちなみに、リュシオルはあまり騒ぎにならないようにしたいために、ギルド用で特別出演でどうだろうかと学院長に言いに行くところだった。
「うまくいくといいわね。それじゃあ私はこの後もちょっと打つ合わせがあるからごめんね~。」
手を振りながらベリエは駆け足で去っていった。
ベリエと別れて、学院長室のドアをノックし、学院長を訪ねた。
「開いていますよ。」
「失礼します。」
中に入ると、書類に埋もれている学院長がいた。
「忙しいんですね。」
「そうですね。この時期になると忙しくて家にも帰れないのですよ。それで何の用ですか?」
「武闘大会の件についてですね。」
「あ~噂で聞いたんですね。でも、よく考えたら出てもらうとえらいことになりそうなので撤回したいなと思っていたんですが・・・。」
「ならそうしてもらえますか?」
「ただし、条件があります。」
「え?」
「ブラックとして特別出演をしていただけないですか?」
「あ・・・それは・・・。」
「いいじゃないですか。顔は出ないのですからいいじゃありませんか。」
「そう言われてしまうとそうですし・・・。」
「なのでお願いしますね。」
学院長は、寝不足なのか眼光が鋭く、これ以上に追及を許さない雰囲気だった。
お願いするように言った後、学院長はまた書類に集中し始めていた。
静かに出た後、教室に戻った。
最近、リュシオルはダンジョンに潜ることを主にしている。
ルーチェは、女子の学院祭の準備にかり出される毎日の様だったからだ。
みんなもギルドに顔を出したりして、たまに依頼を受けるような状態らしい。
「今日で王都のダンジョンは終わりそうですね。」
「もう終わってしまうのですね。次はどちらに行かれるのですか?」
「樹海のダンジョンでも行こうかと考えてます。」
「そうですね。そこが妥当だと思われます。では、受付を済ませておきますね。」
シフラにお願いし、受付を済ませる。
そのままダンジョンの入口に向かって、中に入って行った。
本日の付き添いはアルシュである。
「『アルシュ』」
「はい。お待たせです。」
「じゃあ行こうか。」
「はい!」
アルシュを連れて、ダンジョンの最奥を目指す。
「このダンジョンって何なんだろうね?」
「そうですね。この世界で考えられている一説は、神が作り出した試練と考える説と、魔族が生み出したシステムと様々な考えが上がっています。」
「理由があるんだろ?」
「はい。ちなみにダンジョンは2種類あるのですよ。」
「え?それは知らない情報だ・・・。」
アルシュからもたらされたのはとんでもない情報だった。
「はい。説明しますと、1つは瘴気が強くなったり弱くなったりと、不安定なダンジョンで、たまに上層でも強い魔物が現れます。もう1つが、安定しており、下層になるとだんだんと強くなるというものです。」
「でも・・・。」
「そうです。リュシオル様が打破されたのは安定している方。神が試練用に作り出したのではと考えられている方です。」
「じゃあ、魔族が作ったとされている方にはまだ入っていないんだね?」
「はい。次に向かわれようとしている樹海のダンジョンがそのタイプになります。」
新たな情報が手に入ってきた。
この世界にレベルというもの・属性・体力・魔力と数値化されるシステムにダンジョンは深いかかわりがあるのではないだろうか?
「じゃあ、このレベリングってダンジョンと関係あるんじゃ?」
「そうですね。神の作りしダンジョンがあると考えられると、ダンジョンでのレベリングは育成となるでしょう。」
「何かに備えてということになるのだろうか?」
「それは究明できていません。ただ、予言が降ると占い師は騒いだりしていた時期があります。」
「謎は深まるばかりだね。」
「はい。長く生きている私ですら分からない部分です。」
ダンジョンについては謎が少し解明されたが、まだまだ分からないことが多いと思った。




