~146~
ようやく構想がまとまり、試す段階に来ていた。
「まずは小さな窓を作って、そこから覗きながらしよう。」
魔法を展開し、制作し始める。
「なんか、おもちゃの家を作っているみたいだ・・・。」
それでも作り続けて、まとまってからテントで寝たリュシオルは、久しぶりに夢を見ていた。
~・~・~・~・~
「悠璃~!なんで死んでしまったのよ・・・。ずっと一緒に年を取って行こうって言ってたじゃない!」
夢に出てきたのはリュシオル・・・悠璃だった時代のその後の様だった。
親友だった千佳が棺の前で泣き崩れていた。
『千佳!私はここにいるよ!大丈夫だから・・・。』
悠璃がいくら声をかけても千佳に声は届かない・・・。
棺の横の方には家族が涙を流していた。
「子供を助けて死んでしまうなんて・・・。あの子らしいけどこんなに早く死ぬなんて・・・。」
「姉さんは馬鹿よ!姉さんなら両方助かる道だってあったはずよ・・・。何でもできたじゃない・・・。なんでこんな時だけ自己犠牲よ・・・。」
家族の言葉を聞いて悠璃は心が苦しくなってしまった。
すると場面が変わり、千佳が上の空で歩いている場面になった。
雨の降りしきる中、横断歩道をぼーっと歩いていたところ、遠くから大きなトラックが向かってきている。
『千佳!危ない!』
しかし、悠璃の言葉は届かなかった。
そして、悠璃の目の前で千佳はひかれてしまった。
『千佳!』
「あ・・・ゆう・・・り・・・。そこにいたのね。」
『そうだよ!声をかけたのに止まらないし・・・。』
「そう・・・悠璃は幽霊の・・・まま・・・?」
『転生して違う世界で生きているよ?千佳も来る?』
「そう・・・ね・・・行けるなら・・・悠璃の傍がいいわ・・・。」
『神様に頼んでみるから!』
「ありが・・・・。」
千佳は息絶えてしまった。
『神様!聞こえるでしょ?!』
声を張り上げると、視界が変わった。
「あれ?なんでここにいるの?」
「ちょうどよかった。私の親友が死んでしまったから、私のいる世界に生まれ変わらせて欲しいの。」
「別にいいけど・・・。」
「約束よ?」
「それより何でここへ?もしかして・・・あ・・・。」
話をしているときに、光の球でこちらに来た。
「この子の念で君が精神だけ呼び出されて、さらに運命で死んだ後に光の球になってから来たってことは記憶の処理は終わってるけど、意識の奥深くに君のことが残っているからだろうね。」
「これが千佳・・・。」
悠璃が優しく手で包むと、光が増した。
「ふむ。この子の魂と君の魔力が馴染んでしまったみたいだから、君のいる世界に送ってあげるよ。ただし、生まれ変わるから君のことがわからないかもしれないけどいいのかい?」
「構わないわ。ただし、人間に・・・そして幸せな家庭に生まれさせてあげて?」
「出来るだけ努力はしてあげるけど、君みたいにオプションはないし、普通に向こうで適正に生まれるからね?」
「わかった。それでも必ず見つけるけどね。」
「そろそろ時間だよ・・・。」
~・~・~・~・~
「りゅ・・・・様・・・・し・・・お・・・リュシオル様?」
「はっ!・・・ルーチェか・・・。あれは夢だったのか?」
「何か悪い夢でも見られたのですか?」
「悪夢かもね・・・。親友の死ぬところを見せられたからね・・・。あ・・・。」
リュシオルの手に握られていたのは、千佳とお揃いに着けていたミサンガであった。
「夢じゃない・・・。」
「え?」
「何でもないよ。」
夢だと思っていたことが現実・・・いや実際に起こっていたのだ。
『千佳・・・。必ず見つけるね?あなたが覚えていなくても会いに行くよ。』
リュシオルは拳を固く握りしめて誓った。




