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寮に帰り、今後の予定を考えることにした。
「明日から3日間。避暑地に向かうのだが、用意するものは自分の服だけでいい。その他はこちらで用意する。それとそこからの帰省についてはサポートするから気にしなくていい。」
「え?いいのか?」
「あぁ。来てもらう立場だし、声をかけたのはこちらだ。しっかりやらせてもらう。」
「ありがと~そこから家に帰るのどうしようかと思っていたところだったから。」
「それで、リュシオルはどうする?」
「ん~。適当に帰れるから大丈夫だよ?なんならアルシュの背中に乗って帰ってもいいし。」
「そうだな。リュシオルはその手があるのだな。下手に手配すると帰るのが遅れてしまうな。」
「そういうこと。だから気にしないでいいよ。」
避暑地の後の話を決めて、試験で疲れてのもあって、皆早く寝たが、リュシオルは中々寝付けずにいた。
「久しぶりに眠気が来ないな・・・。そうだ・・・クッキーも作らないといけないから練る工程から寝かすまでを作っておこうかな?それなら静かに作れるし。」
ベットから起き上がったリュシオルはタンスからエプロンを出し、付けて調理場に向かおうとした。
『主。眠れないのですか?』
『あぁ。目が覚めちゃってね?せっかくだから代金のクッキーを焼く手前まで作っちゃおうって考えてね?』
『でしたら私もお手伝いいたします。』
『いいよ?私が受けたやつだしさ。』
『わたくしは寝なくても大丈夫な存在なので。お付き合いします。それに一人で作るより、二人の方が早く済みますよ?』
『そうだよな・・・。じゃあお願いしちゃおうかな?』
リュシオルが答えると、バングルの宝石部分が光り、ガルディが人型をとった。
「じゃあがんばろうか。」
「はい。主。」
二人で調理場に行き、材料を取り出す。
「えっと~バターと小麦粉と砂糖と蜂蜜・・・紅茶の葉に・・・果物に・・・。これでいいか!」
「何種類作るのですか?」
「プレーンと紅茶とジャムの3種類にしようかなって。同じ味ばかりは飽きるしね?」
「わかりました。では、わたくしは何を作ればいいでしょうか?」
「じゃあ・・・果物を切って、砂糖で煮詰めてくれる?煮詰めだしたら時々かき混ぜながら、紅茶の葉を細かくしてほしい。」
「わかりました。」
ジャム類のことはガルディに任せて、生地を作り出す。
まずはバターを柔らかくしている間に、粉をふるっておく。
粉も大量にあるので、ずっと振っている状態だった。
バターがある程度柔らかくなったところで、砂糖と卵・蜂蜜を入れて混ぜ合わせる。
そこにさっきふるっておいた粉を入れて、しっかりとまとまるまで捏ねてビニール袋もどきに入れて、冷蔵庫に放り込んだ。
この作業を繰り返していく。
「主。紅茶の葉を粉にできました。」
「ありがとう。じゃあ、ドンドンジャムを作っていって?今アプのジャムを作ってもらったから次はこれイチで作ってね。出しておくよ。」
「はい。これは葉っぱの所を取るだけでいいですか?」
「少し上の果肉も切れてしまってもいいよ?手でやるより、ナイフの方が早いからナイフでね?」
大量のイチの実をテーブルに出してお願いした。
次は紅茶の葉を混ぜた生地をまた大量に作っていく。
「アプのジャムが出来ましたが・・・。」
「そこに置いて少し粗熱を取って冷蔵庫に入れて?次はこの鍋でお願いね?」
「かしこまりました。」
やはり、一人でやるより、二人でやっているのでどんどんと作業が進み、大量の生地を作ることが出来た。
「ふぅ・・・お疲れさま。これだけあれば、困らないな。でももっとストックしておきたいなぁ・・・。」
「もしよろしければですが、私がお作りしておきましょうか?今日で覚えれたのでここまでなら作ることが出来ます。それに離れていても、バングルが主の手元にある限り、わたくしは主の元に行けますので。」
「なら、学院に行っている間はお願いしようかな?」
「かしこまりました。」
学院に居る時に作ってもらう約束をし、洗い物をして作業を終えた。
「ん~!!さすがに少し疲れたから寝ようかな?」
「はい。明日からクレールス家の避暑地に行きますので、お休みになられる方がよろしいかと。」
「そうだね。じゃあ寝るとするよ。」
「それではお休みなさいませ。」
挨拶をし、ガルディはバングルに戻り、リュシオルは就寝した。
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「学院は休暇に入るそうです。」
「それでは、休暇明けに学院祭が開催されるな。」
「そのようです。では・・・実行はその時に?」
「一番人が多く、一般人が多く入ることのできる機会。さらに学生は浮かれているためやりやすいであろう。」
「おっしゃる通りでございます。では・・・。」
「その日に向けて準備を進めるように。」
「はっ!」
暗い部屋に小さく明かりが灯されて、黒い影が蠢いていた。
その一つが立ち上がり、地下の階段を下りていきある部屋に入って行った。
そこには水の球体が浮かんでおり、中に真っ黒な肌をした男が入っていた。
「いよいよだ・・・。あぁ!神よ!御身に捧げる供物がそろそろ手に入りそうです。」
両手を上げて高笑いをしながら球体に向かって声を出していた。




